表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界で嫁に行き遅れました  作者: 白川れもん
番外編
20/21

俺の夢①

続きました!

イサック視点です。

城に来る前を少しと、来てから、予定では現在まで書けたら良いなと思っています。


どれくらい続くかわかりませんが、また宜しくお願いします。


※イサックの印象が本編と変わる可能性があります。黒いイサックがいます。ダークです。

裏の顔がたくさん出ていますので、注意。

 俺は、拾われた。この国の、王に。

 身分の低い女の、子として産まれた俺は、早くに里子に出され、女の顔も覚えていない。


 見返してやる。

 忘れた母や、見ぬ父を、見返してやる。身分を持ち、俺を捨てたことを、後悔させてやる。根深い復讐が、俺の生きる意味だった。


 そう思い、勉強を、ひたすらしてきた。

 体力を増やし、身体を鍛えてきた。

 騎士に、国の騎士になるために。


 国の騎士は、誰でもなれる。

 勉学、体力、両方を兼ね備えていれば、優秀なら、スカウトだってくるくらいだった。

 師団になれば、それなりに地位も給料も貰える。まずは、そこからだ、と。



 そう、思っていた矢先に、予定よりだいぶ早く、スカウトが来た。

 というより、俺の知らないところで、里親と国とが取り引きをし、俺は再び、捨てられたのだ。

 醜い人間ばかりだな。みな、金のために俺みたいなのは奴隷のように売られる。


「初めまして」



 どうやら、従者として、迎え入れられたようだった。



 王族への言葉遣い、礼儀、その他など、あらゆることを、叩き込まれた。飲み込みの早い俺は、容姿などからも、優遇された。

 国王殿下は、いかにも、といった、ふてぶてしい態度の男だった。従う。すべては、復讐のため。



「イサックよ、娘達だ。仲良くしてくれ」


「……はい、畏まりました」



 人の裏の顔を、俺はよく知っている。

 国王殿下は俺を利用するつもりだろう。そういう目や態度ばかりが、目につく。


 娘たちも、同じだ。

 俺を見るなり、目を輝かせた。

 自分がどういう容姿をしているか、俺は、とっくに知っている。第一印象が良いのは、昔から。

 そのうち、こいつらも、裏の顔を出すに決まっている。俺を、利用するに決まっている。



 城での生活もしばらくした頃。


 俺の外見に飽きたのか、はたまた仲良くしようとしないことに嫌気がさしたのか、業務以外、近寄る者は、いなくなっていった。 



 その日は、城の一部を開放し、希望があった民達に、見学を許す催しだった。



「イサック、俺は用ができた。シャンリを頼む」


 そう言い残し、国王殿下は、別室へ。

 広すぎるロビーに、長女で、民を迎える役をするシャンリ様の、付き添いを命じられた。正直、面倒だ。


 もじもじと、大人しくしていた、シャンリ様。

 緊張しているのだろう。民への顔出しも兼ねているのだから。だが、それがどうしたと言うのだ。


 俺には、何の関係もない。

 どうでもいいことだ。声をかけてやる義理もないし、優しさもない。気持ちを和らげよう、といった気遣いも、しなくて良い相手だと思う。



 俺はそしらぬまま、ただ、黙ってロビー入口に目をやり続けた。



 ある、一人の男が、入ってくるまでは。



「……ルパン、だわ」


 それまで黙っていたシャンリ様は、突然、思い出したように、呟いた。

 その男は、どう見ても、ただの一般市民だ。城の見学に来たようにしか、俺には見えなかった。



 にも関わらず、シャンリ様は、ついに騒ぎ始めた。

 ルパン、ルパン、と、俺にまで言い、さらには、盗人扱いまで。



 ──からかっているのか、俺を。

 俺があまりにも、気の利かない従者だから。同い年にも関わらず、姫一人、楽しませることが出来なかったから?

 だが、いくら今の時間が退屈でも、俺のせいでは無い。

 俺だって、同い年の子守りをさせられている。早く騎士団という地位が欲しいのに。


 わがままな奴だ。


「……私を、からかっているのですか、シャンリ様は」


 押し殺すように、絞った声。

 いい加減にしろよ、と。俺だって嫌なんだ、と。


 だが、反応は悪く、シャンリ様は止まらない。鈍いのか? と、真剣に様子を伺えば、その目は、必死だった。



 …………本気なのか。


 シャンリ様は、俺への当て付けではなく、本気で訴えていた。

 誰も、ルパンなど知らないし、そんな戯れ言、耳を傾けてはくれていないのに。


 この人も、俺と同じなのかもしれない。

 身分や境遇は違えど、一人で、戦おうとしているのかもしれない。


 ……俺だけは、この人の助けになりたい。なれるだろうか。



 だが、初めて見た、人の必死な様子は、可笑しくて、不敬にも、吹き出してしまいそうだった。

 吹き出す寸前の俺を前に、気にする素振りのないシャンリ様は、俺よりも、強く見えた。



 俺は産まれて初めて、人に興味を持った。



「シャンリ様、退屈してませんか?」


 その日から、俺は暇さえあればシャンリ様の元へと足を運んだ。

 シャンリ様も、俺に慣れてきて、買い物を頼まれるようになってきた。

 俺も、喜んでそれに従う。知れば知るほど、シャンリ様は面白いし、興味深い。俺の知らないことをたくさんご存じで、俺よりも凄いと思った。初めて人を、尊敬した。人として。同じ、人間として。


 汚いことはしないし、裏の顔もない。こんな人、いるんだと。こんな純粋な人は、もういないかもしれない。




 そんなある日。


「シャンリ様ってさ、本音言うと、可愛くねえよな」


「あ、俺も思ってた。リン様の方が可愛い。というか、俺リン様好きになるかも──てか好き」


「年下過ぎるだろ。身分も考えろよ」


 と笑い、小声で話す、休憩中の従者を見かけた。


 …………可愛くない? シャンリ様が?

 俺は首を傾げて、その従者達の、横を通り抜けた。


 はて、可愛いとは?

 会話にも出てきたリン様を、目にして見る……あれが、可愛い? 汚い顔があるのに?


 ……わからない。

 それよりも、俺にはシャンリ様の方が、よほど魅力的だ。笑顔も、表裏のない表情、性格、その全てが。

 これを可愛い、というのなら、俺はシャンリ様が好きだということになるのだろうか。




 答えは、意外と早く出た。




「ねえ、イサック」


「はい、シャンリ様」


「私って、結婚適齢期でしょ?」


「……結婚?」


 考えもしなかった。

 そうだ、この人も俺も十六。結婚できるし、そういう年頃だった。


「私、いくら結婚するっていっても、でもデートって必要だと思うの」


 シャンリ様だって、当然、ご結婚される。


「あ、そういえば、デートって知ってる? イサック」


 なんてことだ。失念していた。

 シャンリ様が結婚? 結婚してしまえば、俺はもう世話をすることも無くなるのか? 話をすることも?

 こんなに楽しかった日々も、終わるのか?


「イサック? 聞いている?」


 俺は、また、捨てられるのか? こんなに素晴らしい人にも、俺は捨てられ、また汚い奴等と毎日を?

 それよりも、この人が、結婚。シャンリ様の隣に立つ……男?


「…………い、嫌だ」


「ん?」


 シャンリ様は、訳もわからず、俺を覗き見る。

 無邪気なその顔に、俺は気づいた。



 そうか。これが恋か。

 これが独占欲か。これが、愛しいという感情か。


 自覚した途端、近すぎる距離に、鼓動が早まる。見上げるシャンリ様を、誰にも取られたくないと思う。


「……シャンリ様は、どなたとご結婚したいのですか?」


「それは……」


 目が泳ぐ。

 ……いないのか。

 それも、そうだ。よく来るサランだとかいう男に、魅力など感じていないに違いない。

 あいつは駄目だ。たとえ結婚しても、シャンリ様を幸せに出来るとは思えない。それに、シャンリ様を一番理解し、近くで見ているのは俺だ。



 何か、取られない秘策を考えなければ。

 俺の頭は、その瞬間から、高速で動き出していた。復讐よりも、シャンリ様を取られまいとする独占欲が、勝っていた。

 



 シャンリ様は悪くない。悪いのは、結婚させようとしている、この国だ。

 シャンリ様は、いつか、そう、いずれ、俺を選んでくれるはずだ! 是が非でも、俺でなければならない。

 何故なら、シャンリ様を想い、理解しているのは俺だけだからだ。

 微かな、だけど、確かな希望が灯る。





 俺は、この人と会うために、幸せにするために、産まれたに違いない。

 そう考えると、母も、父も、里親さえも許せる。ここに従者として来たことも、頷ける。

 これが、運命というやつだろうか。

 逸る心と、上がる口角を隠すために、俺は口にした。



「デートとは、何ですか?」



Twitterにて、更新予定日や今後の話数などを呟く予定です。


また、番外編ですが、お付き合いください!

よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ