極限の妖魔4
私がうなづいたのを見たエンマは軽く口角を上げると、その整った形の唇を私の唇にかぶせた。
えっ……これって……?
余りの事に思考は停止してるのに、エンマの唇の柔らかく濡れた感触だけを感覚が丁寧に拾ってしまう。
驚き見開いたままだった私の視線が、エンマの赤い瞳とぶつかった。
エンマの瞳は優しく揺らめき、言葉以上の愛が伝わってくる。
「エンマ、様……これ、キス……?」
唇が少し離れた瞬間、思わずエンマに言ってしまった。
だって、キスするなんて聞いてないよ?!
「そうだ。私の伴侶は、こうして力を受け取るのだから。もっと多くの力を渡す方法もあるが、それはまた今度だな」
何それ……。
エンマの力を受け取るのが伴侶の理由って、そう言うこと?!
「私、エンマ様の力と寿命をもらおうって、さっき決めたばっかりなんですけど……」
エンマを残し、私1人だけ先に寿命を終えてしまったら、どんな顔をしてその後、冥府にいるエンマに会ったら良いのか分からない。
私は自分の死後にある大問題に、さっき気がついたんだ。
「……ならばマコモと私は、生涯を共に生きられるな。もう離してはやらぬぞ、マコモ」
「望むところです」
「フッ……マコモとの口喧嘩も、生涯の楽しみだな」
◇
「おおーいっ、閻魔大王っ!こっちはもう、黒狼でも押さえ込むのが精一杯だ。何とか出来ないか?!」
冬賀さんから声がかかる。
頭も手足も複数持つような妖魔を押さえ込んでいたのは、前に見た「黒狼」だった。
「やっぱり黒狼、格好良いな……」
「体調は戻ったようだな、マコモ。いけるか?」
「はいっ!これなら光球作っても大丈夫、いけそうですっ」
私はいつものように、左手首の「紋」に手を伸ばした。
「待てっ!待つんだマコモっ、紋から力を抜くなっ。私がここにいるのだから、私がこのまま力を渡してやる」
力を渡すって……さっきのエンマとのキスが頭を過り、頭に血が上っていってしまう。
「何だマコモ、顔が真っ赤だぞ。さては私がまたキスをするとでも思ったな?」
図星だ……恥ずかし過ぎる。そう言う本当の事を言っちゃいけないんだからね?エンマ様っ!
「マコモ、手を貸せ。マコモの体が回復したなら、私の力をそのまま渡しても大丈夫だ。あの巨大な妖魔は、何回か光球を投げる必要があるだろう。私が側にいるから力はいつでも渡す。マコモが一度に大量の力を引き込んで、体に負担をかける必要は無い」
「……分かりましたっ」
私はエンマと手を繋ぎ、その力を体に流し入れた。




