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赤い瞳の冥府の王は白き乙女を手放せない  作者: なかな


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エンマ視点



「何だあれは……。マコモは随分と冬賀に世話を焼かれているな」


 マコモがそろそろ仕事を終えて帰宅する頃だと思い「映しの鏡」を見てみると、そこには楽しげに話すマコモの姿が映った。


 「社長」と呼びかけていたから、きっと電話の相手は冬賀に違いない。


 マコモは驚いたり「大正解っ」など言ったりしながら、可愛らしく表情をコロコロと変えて話をしている。


「はぁーっ……」


「閻魔様?そう鏡を見て度々溜め息を吐かれていては、お心に良くありませんよ?リアルで会うのが1番です。今すぐマコモ様の所に行って、思いを全て伝えてくださいませ」


「うるさい司命。私の思いなど既にマコモに全て伝えておるわっ。それでもなお、こうも不安になるのは一体何故だ?マコモも私を好きだと言っているのに……」


 マコモは確かに私と一緒だと、「好き」の気持ちがあるのだと言ってくれた。その言葉に疑いは無く、私たちは思いが通い合っているのだと感じたのだ、” あの時 ”は。


「閻魔様は少々、独占欲が強過ぎるのかもしれないですねぇ……。どんなに愛している人だって、自分以外の誰かに微笑んだりくらいしますって。仕事がらみなら尚更でしょう?あんまり嫉妬し過ぎると、マコモ様に嫌われてしまいますよ?」


「マコモに嫌われる?私が、か?」


「そうですよ。嫉妬深くて束縛し過ぎるパートナーは、嫌われますからね。閻魔様もお気を付け下さいね?」


「そうか……。好きだと言われても、その後に嫌われる事は往々にしてあるからな。人の世はそんな事ばかりではないか……」


 私がマコモを唯一の伴侶だと、私の全てをマコモにくれてやっても惜しくないくらいに愛していたとしても、マコモにとって私はただ「好き」の対象に留り、いつかそれすらも消え失せてしまう事があるというのか……

 これは由々しき事態だ。


 プロポーズをして己が気持ちを打ち明けたとしても、それが何だと言うのだ?人の心はうつろいやすいもの。愛し合っていたはずの2人が呆気なく別れる姿など、今まで人の世で星の数ほど見てきたではないか。



「現世に行く。マコモに会って思いを確かめねばならぬ」


「はいはい。お帰りは明日ですか?」


「司命。私は今、マコモという対岸を目指し、綱渡りをしているも同然なのだ。少しの間違いを犯すだけで、真っ逆さまに落ちる事もあるだろう……」


「何を今さら……大袈裟過ぎるんじゃ?」


「いや、ここは慎重にならざるを得ない。マコモの頭の中は今、新しく始めた仕事と珍しい妖魔との出会いで一杯だ。ましてやそこに常盤という男子の人命まで掛かってきている。という事は……」


「という事は?」


「全てが落ち着き、マコモの気持ちにゆとりが出来なければ、私はマコモに手が出せない。私はマコモに邪魔だと思われたくは、ない……」


「……考えすぎじゃないですか?」


「フッ……司命、お前はマコモを知らぬな?彼女は目の前にあることが全てというタイプだ。目の前に次々と新しく物事が現れてみろ?どれかしらは処理し切れずに邪魔になる」


「閻魔様は邪魔にされる側なんですね、自己評価低過ぎません??」


「いや、マコモはそれで良いんだ。彼女はそうやって目の前の事に向かって行く事で成長を遂げてきた。彼女はそうあるべきなのだ」


「そんな事を言って……マコモ様のお気持ちが落ち着く時なんて、いつになるか分かりませんよ?まぁそんな事を言いながら、閻魔様が待てるとも思いませんけど」


「今までも待ってきたからな、あと少しは待てるつもりだ。マコモが自ら私の手に落ちてくるのを……待っていたいのだ」


「はいはい。閻魔様のお気持ちは分かりましたから、とりあえずマコモ様ご本人に会ってきて下さいね…………閻魔様?どうしました?」


「マコモが帰宅ルートから外れている……。何処へ行くというんだ?」


 映しの鏡で眺めていたマコモの姿は、いつもの私鉄改札はくぐらずに街へと出て行ってしまった。


「これでは、直ぐにマコモに会えぬではないか……」


 マコモの自宅内なら私はこのまま冥府の姿で降りられるが、現世の街中に降りるなら、現世の人の姿に寄せていかねばならない。


「マコモの帰宅まで、待つ、か?」


 マコモは直ぐに帰るのだろうか?それとも??


「司命、また現世の街に降りる。姿の手配を」


「はいっ?先程は待つと仰っていたのに、今はマコモ様の帰宅も待てないとか……」


「細かい事はどうでも良い。今すぐ現世に降りる」


「はいはい……」

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