第五話
学校の事件があり、今日は午前までの日だった。
それもそうだ、下手をすれば殺人事件になるのだったから。
秋名先生には助けられたな……。
そんなことを考えながら、家に帰ると黒塗りの車が家の前に止まっていた。
「え、な、何事?」
何やら大ごとな気がする……。
玄関に入り、すぐの部屋に入ると、あの時のお客さんと家族が座っている。
「よ、お帰り」
「あ、えっと、ただいま……?」
「悪いな、急にに来て」
お兄さんは、胡坐を掻き座っている。
両親は冷や汗を掻きながら、正座している。
「えっと、何があったの?」
「誠、お前を嫁に出すことになった……」
「……はい?」
僕を嫁に出すだって?
何かの聞き間違いだろうか?
「父さん、何言ってるの……?」
「だから、お前をこの龍堂時さんの嫁に出すことになった!!」
「そういうことだ、よろしくな」
そう言うと、龍堂時さんは僕の手を取り、甲の手にキスをした。
「あ、あの///」
「どうした、恥ずかしがって、可愛いな」
龍堂時さんは僕の頭をなでる。
それも愛しいそうに。
「ただいまー!!」
玄関から、当麻の声が聞こえた。
何やら嬉しそうな声音だ。
「父さん、母さん!! 今日の小テスト、僕が一位だったよ!!」
「お、おぉ、そうか、だが、今はお客さんが来ているから静かに……」
「お客さん?」
当麻は父さんの言葉に、怪訝そうな顔で龍堂時さんを見る。
「あんた、だれ?」
「龍堂時和真、お前の兄さんを嫁にもらいに来た」
「嫁ぇ? ブッ!! この人、頭おかしいんじゃないの!?」
おかしいと言わんばかりに、当麻は腹を抱えて笑う。
龍堂時さんの視線は冷たかった。
それに気づいた父さんが、当麻の頭を下げさせる。
「す、すみません!! せがれが失礼なことを!!」
「痛い!! 痛いよ父さん!! 何するのさ!?」
「黙れ!! このお方は『天明組』の龍堂時和真さんだ!!」
父さんの言葉に、僕と当麻は目を見開いて驚く。
「そ、そんな人が何で兄さんなんかを!?」
「俺が惚れた、それだけだ。」
そう言うと、龍堂時さんは今度は頬にキスをする。
僕は恥ずかしのあまりに、顔を真っ赤にする。
「もちろん、ただとは言わねぇ、おい!!」
龍堂時さんが拍手すると、あの時一緒にいたお兄さんがアタッシュケースを持ってくる。
そして、アタッシュケースが開かれると、そこには沢山の札束が入っていた。
およそで1000万ぐらいだろう。
「これで、こいつを貰う、いいだろ?」
「し、しかし……」
「あなた!! こんなチャンス無いわよ!!」
母さんが父さんを後押しする。
しかし、当麻が待ったをかけた。
「ま、待ってください!! そんな奴より、僕の方が合っています!!」
「はぁ?」
「だって、地味な兄より、可愛い僕の方が龍堂時さんには合って――」
「黙れ」
龍堂時さんの低い声が、部屋に響く。
「俺はこいつに、真に惚れたんだよ、真を悪く言うやつは俺が許さねぇ」
その言葉に、僕は嬉しさを覚えた。
いままで、家族に冷たく当たられていた僕に龍堂時さんは惚れたという。
嬉しそうな僕に、誠は睨みつけてくる。
「あぁ、そうだ、こいつにサインしな」
龍堂時さんが一つの紙を取り出す。
そこには、契約書と書かれていた。
樋口真を嫁にもらう。
真から、お金を取らない。
お金の無心をしない。
二度と真に会わない
これを破った場合、私を金を全額払う。
「こ、これは……」
「どうした? あんたらにとってはいい契約だろう?」
「しかし……」
「父さん!! こんな奴要らないよ!! 早くサインして!!」
母さんの後押しに、父さんは渋々サインする。
「契約成立だ、破ったら、どうなるかわかってるな?」
冷たい視線が、家族を睨みつける。
こうして僕は、龍堂時さんの嫁になった。
付き人のお兄さん、鬼童さんに支えられ、家を出た。
車に乗ると、龍堂時さんが抱きしめてくる。
「えっと、龍堂時さん「和真でいい」和真さん、まず、お友達からと言うことでは……?」
「待ちきれなかった、それでいいだろ?」
そう言うと、和真さんは僕にキスをする。
僕は驚いたが、嫌な気持ちはなく、それを受け入れる。
「やれやれ、春ですねぇ」
鬼童さんは、アハハと笑いながらペダルを踏んだ。




