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第一話

「はぁ……。」


ため息をつきながら、通路を歩く僕『樋口真』は憂鬱な気分になっていた。

それは――


「「「「「「きゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!!! 当麻君!!!!!!」」」」


「やぁ、みんな、おはよう。」


僕の弟『樋口当麻』が黄色い声援を浴びていているからだ。

弟は人気者で、誰にでも愛されるのだ。

それに比べて僕は――


「ねぇ、あの陰キャ誰?」

「あー、あの人ね、当麻君のお兄さんらしいよ?」

「えー、全然似てなーいwww」


と、こんなふうに比べられ、馬鹿にされるのだ。


「はぁ……。」


嫌な気持ちになりながらも、僕は学校に行くのだった。




「ん?」

「若、どうしましたか?」

「いや……。」


黒塗りの車に乗っている俺、『龍堂寺和真』は一人の男を見ていた。

その男は、困っていた婆さんに手を差し伸べた。

その時見た笑顔が、とても美しく見えた。


「おい。」

「何でしょうか?」

「あの男のことを調べろ。」

「……は?」


俺の言葉に、部下の男は変な声を上げた。

それもそうだろう、女ではなく男なのだから。


「若、もしかしてですが、惚れたんですか?」

「あぁ、惚れちまったよ……。」

「はぁ、解りましたよ。」


部下がそういうと、アクセルを踏み、事務所へと向かって車を走らせた。





「ありがとうね、お兄さん。」

「いえいえ、気にしないでください。」


お婆さんを助けた僕は、お礼を言われると、そのまま学校へと向かった。




学校に着き、教室に入ると数々の目線が刺さる。

僕は、この目線が嫌いだ。


「よぉ、樋口。」


一人の男が僕に声をかけてくる。

『井谷田皇都』だ、こいつは、僕を陰キャと言って虐めてくる奴だ。


「あのさぁ、今金欠でさぁ、金寄越せよ。」

「そ、そんなこと言われてもないよ……。」

「あぁ!? 知るかよそんなこと!!」


そういうと、皇都は僕の腹を蹴り上げた。

それを受けた僕は、その場に蹲ってしまう。


「無いんだったら、取って来いよ!!」


蹲っている僕の背中を、皇都はさらに蹴り始める。

クラスメイトは、それを見て笑っている。


「お前ら、席につけ。」


チャイムと同時に、先生が入ってくる。

それを見た皇都は、舌打ちをしながら席へと戻る。


「樋口、蹲ってないで席に座れ。」


その言葉に、何とか反応しながら席へと戻る。

この先生に虐めを訴えたことがある。

しかし――


「虐められるお前が悪い。」


その一言で片づけられてしまったのだ。




学校が終わると、僕は家へと変える。

弟も一緒だ。


「はぁ、何でこんなのが僕の兄なのだろう。」


いきなり悪口かよ。


「全く、父さんも母さんも、早く追い出せばいいのに。」


その言葉は、僕の心に鋭く突き刺さる。

僕だって、家を出たかった。

しかし、父さんがそれを許さなかった。



「ただいまー!!」


弟が声を上げて、家に入る。


「あら、当麻、お帰りなさい!!」


母さんが嬉しそうに、弟へと近づいていく。

僕には無関心だ。


「今日はどうだった? 楽しかったかしら?」

「そりゃ楽しいよ、友達だっていっぱいいるし。」


二人は楽しそうに会話をしている。

その横を通り、僕は部屋へと戻って行った。



「ただいま……。」


静かな部屋に、僕の声だけが響いた。


「おじいちゃん、おばあちゃん……。」


写真に写っている、おじいちゃんとおばあちゃんを撫でる

二人は、僕を可愛がってくれた。

父さんと母さんが、弟だけを愛していると、二人はカンカンに怒ってくれた。

しかし、響かなかったらしい。

そのかわり、僕のことをとても、可愛がってくれた。

しかし、それをよく思ってなかった父さんが、二人がこれないところに引っ越したのだ。


「……バイト行かなきゃ。」


僕は、家を出てバイト先へと向かっていった。




「おはようございます。」

「おぉ、樋口!! お疲れ!!」


バイト先に着くと、店長の『後藤裕信』さんが出迎えてくれた。


「今日も頼むぞ!!」

「はい!!」


バイト先は、僕の唯一の居場所だ。

後藤さんも、バイト仲間も僕を邪険にしないから、安心できる。


「いらっしゃいませー!!」



「お疲れ様でした。」

「おぉ、樋口、お疲れ。」


バイトが終わり、僕は後藤さんに挨拶をする。


「ほれ、今月の給料な。」

「ありがとうございます。」


後藤さんが、給料袋を僕に渡す。

しかし、いつもよりも袋が大きいのだ。


「あの後藤さん、多くないですか?」

「何言ってんだよ、ボーナスだよ、ボーナス。」


僕が驚いていると、後藤さんは僕の頭に手を置く。


「お前さんは頑張ってるんだ、それに対応したボーナスだよ。」

「後藤さん、ありがとうございます……!!」


僕が涙を流すと、後藤さんは泣き止むまで頭を撫でてくれた。


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