ダンジョンの外
オーウェン達がキマイラと死闘を繰り広げようという頃、ダンジョンの外は大騒ぎになっていた。10日で帰ってくると言っていた2人が11日目になっても戻ってこないからだ。
野営を貼っていた憲兵達は、ベルンハルトの仲間達と相談し捜索隊を編成し突入することを検討し始めたが、クロエがこれを止めた。
「どういう事ですかぃ、エルフの女王様!?ベルンハルトの旦那が護衛をして期日を守れない事なんて、これまで一度も無かったんです!きっと想定外の事が起こったに違いねぇんです!助けを出してください!」
「我々からもお願いします、王妃殿下ッ!子供が中に取り残されているのですッ!」
ベルンハルトの仲間達が必死にお願いすると、憲兵達もこれに賛同する。しかし…
「なりません!」
クロエが声を荒げて諫めると静けさが周りを包んだ。
皆が黙り込んで悔しそうにしていると「何かあったのか?」と、アウグストが割って入ってきた。
「あぁ、アウグスト。来てくれたのですね」
「お久しぶりです、王妃殿下。オーウェン達はまだですか?」
「えぇ。冒険者達には10日で出てくると言っていた様なのですが…」
「そうですか…」
憲兵隊長が会話に入ってきた。
「アウグスト騎士団長、お久しぶりです」
「おぅ、アランか。元気そうだな」
「えぇ。ところで騎士団長が何故ここに?」
「あぁ、中に居るのは俺の息子でな。クロエ王妃殿下が連絡をくれて、やっと今着いた所なんだ」
「そうだったのですか!騎士団長が居てくれれば心強い!今すぐ捜索隊を…」
と言いかけたアランの言葉をアウグストが牽制する。
「ダメだ」
「どうしてです?」
「ここに居る数じゃ足りない」
「入る前から何故そんな事がわかるんです?」
「中に入ったのがオーウェンだからだ」
「…意味がわかりかねますが?」
「…お前達、半年前に我が領地であった魔物の騒動を知らんのか?…一体どういうことです、クロエ王妃殿下?」
アウグストがクロエに詰め寄ると、クロエは静かに話し始めた。
「訳あって、その件は貴方の領地以外には緘口令を敷いています。そしてオーウェンも、その事に最近気付いたようで…」
「待ってください…クロエ王妃殿下がここに来た理由は何です?どうやってオーウェンがこの迷宮に入ったとこんなにも早く知り得たのです?」
「それは…」
「まさか、オーウェンを監視していたのですか?」
「…はい」
「何故!?」
「…まだ教える訳にはいかないのです」
「…これまで懸命に国に尽くしてきた、この私にもですかッ!?」
アウグストが声を荒げると、クロエは涙を滲ませながらも毅然とした態度で言った。
「だからこそ、尚更言えないのです!」
クロエの真剣な眼差しにアウグストが冷静さを取り戻す。
「申し訳ありませんでした…無礼をお許しください」
「いいのですよ、アウグスト」
アウグストがふぅっと溜息をついて、少しの間を置いて言った。
「…きっとオーウェンも何か仕組まれている事に気付いたんでしょう。頭が回る、勘の良い子ですからね。だが何故、私に相談もせず迷宮なんかに…?」
「…貴方が王家に疑念を抱いてしまう事まで見越したのかもしれません」
「…」
ギリッと歯軋りを鳴らし、暫く何かを考えた後、アウグストがアランを呼んだ。
「…アラン、今日の夕刻までに憲兵隊を何人用意できる?」
「領内を巡回している者達も含めて300人と言った所でしょうか」
「私が連れてきた兵達を合わせて350名か…夕刻までに、オーウェンが戻らなければ我々で突入するぞ」
「はッ!」
そう言うと、アランは隊の下へと帰っていった。
「アウグスト…」と言いかけたクロエに対し、アウグストは首を振る。
「私は騎士団長である前にオーウェンの父です。こうやって話している間にも息子が苦しい思いをしているかもしれない…今すぐ飛び込みたい気持ちを必死に抑えてここに立っている私の気持ちを王妃殿下ならわかってくださいますでしょう」
そう言うと、アウグストは踵を返して街の方へと戻っていった。
区切りが良いのでもう1つ載せておきますー^ ^




