1 マリーベルのギフト
スーーーーーーッ
ひときわ輝く一つの流れ星がはるか彼方から流れてきた。
『マリーベル。
そなたには、「知りたいと思ったものの気持ちを読む」ことができる魔法を授けよう。
ただし、その魔法を一度使えば、その日一日は自分の素直な気持ちを言えなくなる呪いが代償となる。そして、呪いは他の人に明かすことはできない。
心して使うがよい。』
アステリア国では、神の気まぐれで一つの魔法がギフトとして与えられる人がまれにいる。
それは、十五歳の誕生日の夜。
夢の中で神から告げられる。
公爵令嬢マリーベル・フェルディナ。
今日は、マリーベルの十五歳の誕生日だった。
~~ ◇ ~~
神からのギフトをいただく少し前―――
マリーベルには婚約者ができた。
その人は、この国の第二王子、レオンハルト・アステリアだった。
今日は、初めてのお茶会。
王宮の庭園にご招待を受けた。
「エレノア来てくれて嬉しいわ。今日はよろしくね。――ほら、あなたもご挨拶なさい。」
王妃様はお母様と仲が良いらしく、私もお母様と二人でこの場にいる。
「レオンハルトだ。―――よろしく頼む。」
「王妃様、王子殿下にもごあいさ…」
お母様がまずご挨拶をと思ったら、王妃様に声をかけられた。
「堅苦しい挨拶は、いいのよ。私たちしかいないんだから。楽にして。」
「フェルディナ公爵家のマリーベルと申します。どうぞ、よろしくお願いいたします。」
王妃様には、いいと言われたが、私もマナーを学んでいる身。
最初ぐらいは、きちんとしなければとゆっくりとカーテシーをした。
その後は、席について、王妃様とお母様が中心に話をしていった。
私たちは、ほとんど相槌を打つ程度。お話なんてできなかった。
(だってなんて素敵な王子様なんでしょう。)
さっきから心臓が、ドキドキして、王子殿下をまっすぐに見ることすらできない。
王子殿下の髪はお日様の光を浴びて、金色に輝き、風が吹くたびにさらさらと揺れ動いている。その瞳は、深い湖の底のような青色だった。
「私たちだけ話してしまっているわね。ほら、レオンハルト。バラが見ごろよ。案内して差し上げて。」
王妃様の声がかかると、王子殿下は一瞬目を見張ったが、すぐに立って腕を差し出してくださった。私は、すごく恥ずかしかったが、せっかくのチャンス!なるべく落ち着いて立ち上がり、その腕にそっと手を添えた。
王子殿下は、無言ではあったが、私の歩調に合わせてゆっくりと庭園を歩いてくださった。
「王子殿下…」
私が意を決して、話しかけようとすると、すぐに王子殿下にさえぎられてしまった。
「レオンハルトでいい…」
驚いて、王子殿下を見ると、なぜか顔を背けてこちらを見てくれない。
(顔が赤い?もしかして怒ってる?そうか!第一王子殿下もいらっしゃるから、ただ『王子殿下』では誰だかわからないのね。私にそう教えてくれたってことかしら?でも、どうしてこちらを見てくれないのかな?)
「失礼いたしました。レオンハルト様。それでは、私のこともマリーベルとお呼びください。」
私が、そうお伝えすると、レオンハルト様はヒュッと息をつめた後、またしても黙ってしまわれた。
「バラが見事ですね。私のお屋敷にも赤や黄色、ピンクのバラはありますが、こちらのようにオレンジのバラは大変珍しく、とても美しいですね。」
「あ、ああ。」
「それにしてもいい香りです。私、お花の中では香りも含めてバラが一番好きです。」
「―――そうか。」
(なんか、話がつながらないな?お花のことだからかな。ちょっと話題を変えてみよう!)
「レオンハルト様はどんなお菓子がお好きですか?私は、フルーツののったタルトが好きなんです。今は桃のタルトがおいしい時期ですね。」
「そうだな。」
なんだか、レオンハルト様は汗をかき始めたのか、ハンカチを出してそっと拭いている。
(熱でもあるのかしら?外にいて、暑かったものね。そろそろ戻った方がいいのかな?)
「そろそろ戻りましょうか?のども乾いてまいりましたものね。」
「あ、ああ…」
なんだか急に元気がなくなったように、下を向いてしまわれたレオンハルト様。
(体調がよろしくないのかもしれないわね。戻りましょう。)
心なしか、帰りの歩調はゆっくりになったが、無事初めてのお茶会が終わった。
初めてお会いしたレオンハルト様。本当に素敵だった。まさに、私の理想の王子様!
レオンハルト様の素敵さに浮かれて、私ばかり話してしまった。淑女として大丈夫だったかしら?
それにしても、レオンハルト様はほとんどお話しなさらなかった。私が話しかけても、お返事は「ああ」とか「そうだな」とかだけ… 私に呆れていたのじゃないといいけど。
今日私は、レオンハルト様のこと、何も分からなかったな。これからはゆっくりお互いを知っていけたらいいな。
こういったお茶会は月に一回程度行われることになっている。
次のお茶会は、お母様たちも参加されず、私たち二人だけになる。
こんなに会話が少なくて大丈夫だろうか?
レオンハルト様の興味のありそうなことお兄様に聞いてみようかしら?
レオンハルト様と初めてお会いした瞬間から、胸がずっと落ち着かない。
こんな気持ちになったことは、今までなかった。
もしかして私―――
本日から投稿を始めました。
本日あと一話投稿いたします。
楽しんでいただけるように頑張ります。
どうぞよろしくお願いいたします。




