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天才ハッカーによる日本独立物語  作者: ロキ
第1章

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24/31

第24話 永遠の祈りと新たな夜明け

「日米密約」の暴露と、超大国による侵攻の危機を乗り越えてから一年が経過した。

季節は春。

長く厳しい冬を越えた日本列島は、見事な桜前線に包まれていた。

千代田区・皇居前広場。

お堀の水面には薄紅色の花びらが浮かび、暖かな日差しのもとで多くの家族連れや若者たちが笑顔で行き交っている。

群衆から少し離れた桜の木の下で、タブレット端末を操作している青年の姿があった。

ラフなパーカー姿で風景に溶け込んでいるが、その指先の動きは常人離れした速度で画面を滑っている。天才ハッカー「ロキ」だ。

「……遅いぞ、ミコ」

画面から目を離さずにロキが呟くと、背後の桜の木の陰から、ふわりと春風に乗るようにミコが姿を現した。

かつての血に塗れたライダースジャケットではなく、柔らかなスプリングコートに身を包んでいる。しかし、その研ぎ澄まされた足運びは、いまだ健在の「影」のものだった。

「ごめんなさい。新しい総理の警護網の脆弱性テストに、少し手間取ってしまって」

「で、結果は?」

「合格点ね。私が本気で『斬り』に行っても、五秒は持ち堪えられるくらいにはSPたちの練度も上がっていたわ」

ミコは悪戯っぽく微笑み、ロキの隣に並んでお堀の向こうの深い森――皇居を見つめた。

この一年で、日本は劇的な変化を遂げた。

不平等な日米地位協定は破棄され、全国の米軍基地は段階的に縮小・撤退が進んでいる。首都圏の上空を塞いでいた「横田空域」は完全に日本の手に返還され、今では日本の民間機が帝都の空を自由に飛び交っていた。

国防は自衛隊を昇格させた「国防軍」が担い、ロキの『ヤタガラス』を組み込んだ独自の防空AIシステムが、鉄壁の守りを固めている。中国もアメリカも、日本の「デッドマンズ・スイッチ」を恐れ、手出しできない状態が続いていた。

「平和ね」

ミコが、風に舞う桜の花びらを手のひらで受け止めながら言った。

「表向きはな」

ロキはタブレットを閉じ、ポケットに突っ込んだ。

「今日もペンタゴンのサイバー軍と、中国人民解放軍のハッカー部隊から、それぞれ三万回ずつの不正アクセスを弾き返したところだ。奴ら、あの手この手で俺のファイアウォールの隙間を探り続けている」

「ご苦労様。電子の神様は休みなしね」

「お前も同じだろ。国内に残存している外国の手先どもを、裏でシメて回っているくせに」

二人は顔を見合わせ、小さく笑い合った。

政治家が入れ替わり、制度が変わっても、世界から悪意が消えるわけではない。

豊かな水源地、高度な技術力、そして地政学的な要衝。日本という国が魅力的な「宝」である限り、見えない侵略の手は常に伸びてくる。

だからこそ、彼らのような「抑止力」が必要なのだ。

ロキは静かに姿勢を正し、皇居の方向へ向き直った。

ミコもそれに倣い、静かに目を閉じる。

二千年の長きにわたり、決して途絶えることなく続いてきた万世一系の祈り。

天皇陛下が国民の安寧を祈り、国民がその御心を敬う。その美しくも尊い絆こそが、ロキとミコが命を賭して守り抜いた「神の国」の正体だった。

「……さあ、行くか」

祈りを終えたロキが、振り返って歩き出す。

「次はどこへ?」

「少し、西の方からきな臭いデータ・トラフィックを検知した。火種が小さいうちに踏み潰しておく」

「了解。私の刀の出番があるかもしれないわね」

ミコはロキの隣に並び、足並みを揃えて歩き始めた。

見上げれば、雲一つない真っ青な空がどこまでも広がっている。

他国の軍用機の爆音に遮られることのない、真の独立を果たした美しい日本の空だ。

サイバー空間の神と、現実世界の影。

二人の戦いはこれからも続く。この神聖なる大地と、そこに住む誇り高き人々を、永遠に守り抜くために。

桜吹雪の中、二人の姿は平和な日本の日常へと、音もなく静かに溶け込んでいった。

第2章に続きます。

頑張ります。

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