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元天才子役だった俺は平穏な高校生活を謳歌したい  作者: 86
第2章

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第83話 星宮家

 あれから場所は変わって我が家の目の前。


 俺の隣には「はぁ……」という感じで何故かため息を吐いている状態の彩葉が突っ立っている。


「別に分かってたし。湊の事だから2人きりじゃないって事くらい。でもあの言い方的に少しくらい期待しちゃうじゃん……」


 何やら小声でぶつくさと文句を言っている様子の彩葉に後方からは友里と陽毬の同情するような視線が注がれる。


 内容はあまり聞こえなかったが、これはあんま突っ込まない方がいいかもな。


 そう思い俺は皆に少しだけ待つよう声をかけてから玄関を開ける。


「ただいま」


 そう声を出してリビングに足を踏み入れると母さんとルナが元気よく出迎えてくれた。


「おかえりなさい、湊くん」


「おかえり!お兄ちゃん!」


 そう声をかけてくれた2人に対して俺は皆を暑い中外で長時間待たせるのも悪いと思い早速本題に入る。


「母さん、部活仲間を結構連れて来たんだけど入れていい?」


 俺がそう言葉を発すると母さんは「あらまぁ」という形で頬に手を当てる。


 そしてにこやかな表情を作ってから声を発した。


「ふふふ、湊くんがお友達連れて来てくれてお母さん嬉しいわ。貴方は昔からあまり人と深く関わろうとしなかったから、高校で上手くやれてるか少し心配だったのよね」


 そう嬉しそうに話す母さんだが俺は少しだけ罪悪感に苛まれる。


 何故なら実際俺には学校生活という枠組みにおいて友人は1人もいないからだ。


 映研の皆は部活仲間だし、三浦さんはただの隣人さんだ。


 まぁここでわざわざ母さんを心配させる必要はないので今は言う必要がないだろう。


 母さんの許可も出たという事で俺は玄関へと戻り、扉を開ける。


「みんな、お待たせ。入ってくれていいぞ」


 俺がそう皆を招き入れると映研のメンバーは各々「お邪魔します」と声を発してから綺麗に靴をそろえて家の中へと入ってくる。


 意外にも荒井までが綺麗に靴を揃えていて少し驚いてしまった。


 そしてリビングへと続く扉を開けると「いらっしゃい」という感じで皆を招き入れる母さんとこちらを見て何やら口をパクパクしながら目を見開いている様子のルナが存在した。


「ちょっとお兄ちゃん!七瀬さんが来るなんて聞いてないんだけど!」


 そう言われて俺はあーそう言えば彩葉たちはモデルとしてそれなりに有名だったな、と思い彩葉の方へと視線を向けると今度は彩葉、友里、陽毬、あとついでに荒井が驚きで固まっていた。


「え、嘘……Lunaちゃん?湊のお母さんが星宮千秋さんって事は知ってたけど、まさかLunaちゃんが妹だったなんて……ヤバ、嬉しすぎるんだけど」


 何やら彩葉はルナに会えて感極まっている様子だ。


「マジで本物のLunaじゃん!あとでサイン貰っていい!?」


「ウチもウチも!Lunaちゃんのサイン欲しい!」


 そう言葉にするのは友里と陽毬だ。


 この2人の圧に押されてルナは「え、じゃああとでサイン交換し合いましょ!」と乗り気になっている。


 ……今は敢えて触れなかったがこの美少女3人娘の後ろで何やら荒井が手を組んで神に祈りを捧げている。


「ああ、神様……Lunaちゃんに会わせてくれてありがとうございます……」


 少し前だったか?確か荒井は教室で堂々とLunaのファンって事を公言してたんだったな。


 あの時は俺が荒井と仲良くなる前だったし心の中ではお前なんかに妹は渡さない、と思っていたが仲良くなった今となっては荒井の性格も把握できているし荒井になら任せてもいいとさえ少し思っている。


 まあ妹の方はあんまり荒井の事眼中になさそうだが。


 なんなら天に向けて祈りを捧げている荒井を見て少し引いている様子である。


 まぁとりあえずそんな感じで彩葉たち3人娘とルナが交流している最中に二宮先生と聖先輩は「こちらつまらないものですが……」と言いながら途中で買った少し高めのお菓子を母に手渡している。


 俺はそんな物必要ないと遠慮したのだが、2人はこれは大人としてのマナーだと言って首を横に振ったのだった。


 先生はともかくとして聖先輩までお菓子を用意してくれたのは流石見た目に反して我が部で1番の常識人である。


 母は「あら、ありがとうございます」と言いながらお菓子の入った袋を受け取り「せっかくなので皆さんで食べましょう」と言ってお菓子の箱を袋から取り出した。


 そして大人のマナー的なやり取りを終えた後二宮先生は珍しく顔を少し赤らめながら母に向かってサインを要求していた。


 母もそれに対して気分を害す事はなく快く近くから色紙を取り出して慣れた手つきでサインを書いてそれを先生に渡した。


「ありがとうございます!一生の宝物にします!」


 今までに見た事ないレベルで嬉しそうな顔をする先生に母は「これからも息子をよろしくお願いします」と頭を下げた。


 そこでさっきまで後ろの方で控えていた海斗と風間の姿がいつの間にか消えており、どこに行ったんだろって思い姿を探し始めたら案外早く見つかった。


 2人はリビングの真向かいにある父の仏壇に向かって頭を下げていた。


「……2人ともありがとな」


 まだ関わってから2ヶ月くらいしか経っていない2人が初めて俺の家に来て初めてした事が俺の父に向かって頭を下げるという事に対して驚きと同時に嬉しさが込み上げてきて思わず感謝の言葉を述べてしまった。


「僕はただ湊を産んでくれて、湊と出会わせてくれてありがとうと言う事を湊のお父さんに伝えただけだよ」


「俺も海斗と同じでこの人がいたからこそ今の湊がいるわけだろ?感謝してもし足りないくらいだよ」


 俺の感謝の言葉を耳にした2人は仏壇の方を向いていた体をこちらに向けてあたかも当然の事をしただけだ、という体で笑いかけてくる。


 その2人にとっては当たり前の優しさが俺にとっては嬉しく思い少しだけ涙腺を刺激されてしまった。


「それじゃみんなのところに戻ろっか、湊」


 そんな俺の様子を知ってか知らずか海斗はいつも以上に優しい表情をして俺の肩をポンッと叩いてから先にリビングへと戻っていった。


 こんな事で涙腺刺激されるなんて俺も案外脆いな、と思いながらも俺と風間は共にリビングへと戻るのだった。

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