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第81話 テスト返し

 テストが終わり皆で打ち上げをした金曜日から2日空いた月曜日。


 今日はテスト返却日である。


 我が校の先生方はテスト終わった後の土日で採点を終えて週明け月曜日の朝礼の時間で担任から全テスト返却と成績表を渡されるらしい。


 だからなのか今日の教室は普段と違いシーンと静まり返っている。


 時間になり二宮先生が教室に入ってくると全員が息を飲んで先生の一挙一動を見守る。


 先生は生徒の気持ちを知ってか知らずか意地悪いようにニヤリと笑みを浮かべてから言葉を発する。


「それじゃあ早速だがお楽しみのテスト返却の時間だ。さっさと出席番号順に並べ」


 先生がそう言うと生徒達は皆一様に「え〜」と不満を表す声を出す。


 一部の勉強できる生徒たちは素直に先生の言葉に従い、勉強が苦手な生徒達は先生にブーブー言いながらも言われた通りに行動する。


 そして出席番号が早い順で徐々にテスト返却が行われていく。


「まずはお前からだ、荒井。ギリギリ全教科赤点回避だな。次はもっと高得点目指せよ」


「うぃっす!」


「風間、お前は全教科点数高くて言う事ないんだが、次は学年10位以内期待してるぞ」


「はい、先生」


「天童、お前は流石だな。特に言う事はないしこのまま精進してくれ」


「ありがとうございます、先生」


「七瀬は結構頑張ったな。ギリギリ平均点には届かなかったから期末テストでは平均点取れるようになってるといいな」


「うん!メイちゃん!」


 映研のメンバーの二宮先生の一言を聞いてる限りはそれぞれにとっていい点数を取れた事は間違い無いだろう。


 俺もテスト自体には手応えを感じていたので他のメンバーに恥じないような点数である事を願うばかりだ。


 そして彩葉から時間があまり経たずに俺のテスト返却の番がやってくる。


「星宮、よく頑張ったな。全教科平均点を裕に超えている」


 そう言ってテストと成績表を渡され、成績表で各教科の点数を確認すると自分で思ってた以上に高い点数を取れていた。


 現代文と古文を合わせた国語が合計81点、数Ⅰと数Aを合わせた数学が合計89点、英語が76点と他に比べて少し低いが、化学と物理を合わせた理科が86点で、地理が83点で合計したら416点という中学時代には取ったことが無いような点数を取れていた。


 俺たちの学年人数が240人いる中で、俺は21位という比較的上位にランクインする事ができた。


 何もかもつきっきりで勉強を教えてくれた聖先輩のおかげである。


 俺は後で先輩にお礼しなきゃな、と思いながらテストを手に持ったまま自分の席へ戻ろうとすると突然先生に肩を掴まれ耳に口元を寄せられる。


「……私は基本的にお前があまり目立ちたく無い事を理解しているつもりだ。しかしお前と深い関係である天童や七瀬を見てみろ」


 そう言われて俺がはっと顔を上げると海斗と彩葉と目が合った。


 だがそれも一瞬ですぐに目を逸らされてしまう。


「……あの2人はさっきからずっとソワソワしながらお前の方を見ていたぞ。多分お前ともっと普通の学生らしい、それこそ自分たちのテストの結果を報告し合ったりして盛り上がりたいんじゃないのか?」


 俺は二宮先生にそう言われて目を伏せるしか無い。


「……確かに先生の言う通りかもしれません。でもあの2人は俺と住んでる世界が違う。たまたま聖先輩に出会わせてもらっただけで俺はあのキラキラした空間には入りづらいんですよ」


「でも風間とは普通に喋っているじゃないか?風間とあの2人は何が違うんだ?」


「……風間は俺にとって幼馴染みたいなものでゲーム友達ですよ。それに風間も目立つって言えば目立ちますが、海斗や彩葉ほどの影響力は持ってないんですよ」


「……そういうものか」


「では話はこの辺で。まだ少しだけ後ろ残ってるので俺は席戻りますね」


「……ああ」


 それにしてもあそこまで先生に心配されているとは思わなかったな。


 でもやっぱり俺が海斗や彩葉と親しくするところはあまり見せるべきでは無い。


 この前打ち上げ会に参加した三浦さん、早乙女、神楽の3人にはバレたようなものだがこの3人はそれぞれ俺と彩葉の友人なためバレたところでそこまで被害はない。


 しかし実際この前は佐藤に危うくバレそうになって少し焦った。


 彩葉の前では次何かあれば言い返すとは言ったが、正直俺にその気はなく、次佐藤に2人で会ってるところがバレそうになっても言い返すのではなくそもそも佐藤の前で2人でいるところを見られなければいいだけの話だと俺は結論づけた。


 俺は自分の席に着きテストを引き出しにしまったところで隣人に声をかけられた。


「えっと星宮くん、大丈夫?ちょっと怖い顔になってるけど……点数思ったより取れなかった?」


 三浦さんには今な俺が少し怖く見えたようでちょっとだけ怯えたような表情をされる。


 俺はあまり人前でこの顔を見せるべきじゃなかったな、と改めて一瞬でいつも通りの表情へと戻しすっとぼけたように隣を向いた。


「……そんな怖い顔してたか?俺」


「あ、私の気のせいだったかも?」


 三浦さんは首をコテッと傾けて少しだけ不思議がる。


 俺はそんな三浦さんの様子を見てほっと一息吐いてからその後三浦さんとお互いの結果報告をし合ったのだった。

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