表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
元天才子役だった俺は平穏な高校生活を謳歌したい  作者: 86
第1章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

53/133

第52話 演技力の違い

 今日は荒井がいないと言う事で先に魔王サイドの撮影をする事になった。


 主な登場人物は魔王と配下の四天王なので、二宮先生、俺、彩葉、聖先輩、風間の5人が撮影される側というわけだ。


 既に全員がそれぞれの衣装に着替えており、いつでも撮影可能なように準備万端な状態で待ち構えている。


 今日のカメラマンは海斗がやってくれるようで、カメラをこちらに向けてくれている。


「よし、じゃあ今日は私も役あるし基本的に何でも天童くんに任せるからそこのところよろしくね」


「了解です。それじゃあ皆さん準備いいですか?」


 海斗は聖先輩の言葉に頷いてから今日の役者全員を見渡す。


 役者全員がコクッと頷くのを見届けてから声を張り上げた。


「はい、それではアクション!」


 絶対に普段聞かないような声が海斗から発せられて演技がスタートする。


 今は魔王である二宮先生が窓の外から月を見上げ配下たちが魔王の少し後ろで立膝を立ているシーンだ。


 本当は夜の設定だが今はまだ明るいのでそこは編集でどうにかしてくれるそうだ。


「……勇者が旅に出たそうだな。いつ頃この城に辿り着くか分かる奴いるか?」


 そう言葉にする先生は先週よりも演技が上達しており、声の低さも相まって魔王らしさが表現できている。


 その様子を見ている外野勢が皆息を呑んで驚いているのが伝わってくる。


「……私の部隊が勇者の動向を監視していたところ、およそ1月(ひとつき)後には来ると予想されます」


 しかしそんな先生の上手な演技に惑わされる事なく彩葉の言葉が続いた。


 俺との練習の成果も少しずつ表れているようだ。先月と比べて格段に成長したように感じる。


「……そうか、あまり猶予は残されていないな」


 そう目を伏せる魔王。


 その様子に立膝を立てたまま顔を伏せていた俺が顔を上げる。


「……恐れながら申し上げます、陛下。勇者について私目にお任せいただけるでしょうか?」


 俺がそう言葉にすると俺の演技を初めて目にする人たちが驚いたように目を開いたのが分かる。


 俺の演技が驚かれるのは昔からなので慣れっこだ。


 幸い次に続く言葉は先輩だったようで、先月に何度も俺の演技を目にしていただけあってあまり動揺する事なく言葉を続けてくれた、、


「サラマンダー、貴方にできるのですか?そんな大役」


 そう言葉にするのは聖先輩だ。


 ちなみにサラマンダーというのは俺の演じている配下の名前だ。一応炎を操る事ができるという設定になっている。


 一応言っておくと、彩葉にはウンディーネ、先輩にはシルフィ、風間にはノームという呼び名がある。


 それぞれの水、風、土という四大元素を操る四天王というわけだ。


「ほざけ、シルフィ。勇者如き俺だけで十分だ」


 お分かりいただけただろうか?


 この明らかに咬ませ犬としてしか思えない台詞を。


 俺は1番最初に勇者にやられる所謂四天王最弱枠なのだ。


「……そうか、分かった。ここはお前を信じるとする。任せたぞ、サラマンダー」


「はい、お任せください陛下」


「それでノームよ、武器の方はどうなっている?」


 ここで魔王役の先生が外から振り返りノーム役である風間に目線を向ける。


「陛下、武器の大量生産には成功しております。ご安心くださいませ。あの勇者はどうやら国王より聖剣を賜ったようではありませんか。それに対抗するため1本のみ魔剣を製造いたしました。どうかお納めください」


 そこでノーム役の風間はすっと立ち上がって剣を魔王に向かって手渡す。


 あの剣は映画研究部に過去所属していた人たちが使ったであろう玩具の剣である。


 それを受け取った魔王こと二宮先生はニヤリとまさに魔王っぽく怪しい笑みを浮かべる。


 そして何故だろうか。その姿が凄くあの人に似合っている気がした。


「……ククク、良くやったぞノーム。この剣は使わないに限るが、最悪これを使ってでも憎き勇者の息の根を止めてやろうではないか!」


 そう声に出す先生は本当に良く役が似合っていた。


「……はい、カット」


 そこで海斗のカットの合図が入りようやく俺たち魔王サイドの最初のシーンの撮影が終わった。


「……なんか凄かったね」


「……うん、これに比べるとウチらなんてミジンコ以下だったかも」


「いや流石にそれは……荒井だけだけど。でもあたしらの何十倍も凄かったよね」


 いつも騒がしいはずの友里と陽毬が衝撃を受けたような顔で会話をしているが当然と言えば当然の結果と言えるだろう。


 何故なら勇者サイドにいた演技経験者は海斗と彩葉だけで基本皆演技が未経験な状態でスタートしたのだ。それに対して今回のメンツは俺と風間は子役経験者であり、彩葉は最近演技に力を入れているモデル、先輩も昔は演技していたようなので実際初心者と言えるのは先生くらいだ。


 これほどまでに役者に差があるので、演技に差が出るのは仕方ないとも言えるだろう。


 あっちで先輩と海斗が撮影した動画を見直しているようだがリテイクは無さそうだ。


 こうしてすぐに魔王サイドの最初の場面のシーンの撮影は終了した。


 その後は勇者サイドの撮影に移りたかったが、荒井がいないので撮影する事ができずいつもより1時間早く部活動が終わり、解散する流れとなった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ