第130話 危険
俺たちは全員分の焼きそばや飲み物を購入した袋を1つずつ手に持ちながら皆が待っているであろう場所へと戻る。
するとそこには俺たち以外の男子3人に加え、友里、陽毬、葵の姿はなく彩葉、愛花、小豆の3人の姿があった。
「……ねぇ、湊あれって……」
隣に立つ海斗が彩葉たちの方へと視線を向け少し鋭い目つきへと変わる。
かく言う俺も目を鋭くして「悪い、海斗これ持ってて」と海斗に俺が持っていた袋を預けてその場を駆け出す。
そして彼女たちの近くまで寄ると腹からこれ以上出ないくらいの声を発する。
「てめぇら!それ以上近づいたらぶっ飛ばすぞ!」
そう言葉に出して俺は彩葉たちを後ろに庇うように立つ。
そう、彩葉たち3人は見た目がチャラチャラした男たち3人に言い寄られていたのだ。
いわゆるナンパ行為である。
おそらく風間や千影たちもこの事は予想していなかったのだろう。だから美少女3人でここに残る羽目になった。
美香あたりは女子だけでいる事を気にしそうだが、彩葉が大丈夫とでも言ったのだろう。
兎にも角にもプールに来て無邪気に遊んでいる風間たちは悪くはないし、勿論彩葉たちも悪くない。
俺から見て悪とするならそれは目の前で気持ちの悪い笑みを浮かべている男3人だけだ。
彼らの姿をよく見てみると腕やら足、そして顔なんかにも刺青が入っており、俺が今まで追い払ってきたチンピラたちとは違いいかにも暴力団に所属してそうな見た目をしていた。
人を殴る事に対して何にも思ってなさそうな目つき、正直言って恐怖という感情が自分の中に生まれてくる。
しかし自分の後ろにいる3人は俺以上に怖い思いをしたはずだ。ならば男として女を守る事は当然の事だろう。
俺は自分の心までを騙し切って冷静な目つきで男たちを睨み返す。
「おいおい、兄ちゃん。そんな怖い目つきで睨むなよ。俺たちは彼女たちとお話ししてただけだぜ?」
「そうそう、お前もさ、今そこどいてくれれば殴らないでやるからその女の子たちを俺たちに渡しな?」
顔に刺青を入れた男、そして舌にピアスをした男が立て続けに脅してくる。
こいつらみたいな喧嘩慣れした奴らにおそらく俺の演技は通用しない。
だからと言ってこの場所から離れるわけにいかない。
俺は海斗の方へチラッと視線を向ける。
するとその視線の意図をすぐに理解した海斗は2つの袋を持ったままその場を走り去る。
後は俺が時間を稼ぐだけだ。
たとえ殴られてもいい。何されてもいい。
ただ彼女たちに傷さえつかなければ。
俺は一瞬だけ後ろを振り向き、彼女たちを安心させるために作り笑顔を見せ、そして改めて男たちの方へと向き直る。
「はぁ?てめぇらみたいなクズに俺のダチをやるわけねえだろうが。彼女たちをナンパしたいなら100年早いぞ」
「おいおい、マジかよ。お前相当イカれてんな?俺たちに食ってかかるなんてよ。どうする、マサ?こいつやっちゃう?」
顔に刺青が入った男がマサと呼ばれているらしい。
彼の右後方に立っていた足に刺青がある男が俺の事を嘲笑しながらマサへと問う。
「まぁこの子たちみたいな美少女は滅多にお目にかかれねえからなぁ。さっさとこいつぶっ飛ばしてお持ち帰りすっぞ、やれタケ」
「りょーかい」
タケと呼ばれた足に刺青がある男が少しだけ前に出てきて、ニヤリと笑みを浮かべると唐突に回し蹴りを放ってくる。
それを俺はギリギリ目で追える速度だったので一歩下がって避ける。
「へぇ、今の避けるなんてなかなかやるねぇ。んじゃ、これはどうかな?」
今度は一瞬で間合いを詰められて腹に向かって拳で強く殴られる。
「ぐはっ」
俺はその痛みからその場で膝をつき崩れ落ちてしまう。
「「「「湊 (くん)!?」」」
3人が俺の事を心配そうな目で見つめる。
「だ、大丈夫だ……」
なんとか声を振り絞りタケと呼ばれてる男の方へと向き直る。
「お前の拳はそんなもんか?案外大した事ねえな」
「てめ……オーケー分かった。お前の事は確実に殺してやるよ」
さっきの雰囲気とは変わり俺に大したことないって言われて自分のプライドが許せなかったのか再度俺の腹目掛けて拳を振り上げる。
俺は終わったな、と思ったがどうやら天は俺に味方してくれたらしい。
「おい!お前ら何やってる!」
遠くから海斗が連れてきたであろう警備員4人がこっちに向かって走ってきている。
流石に警備員の姿を見て焦ったのか男3人は舌打ちだけ残してこの場を去っていく。
海斗に助けられたな、そう思いながらガクッとその場に座り込む。
そして後ろを向くと美少女3人が心配そうな目でこちらを見ているのが分かる。
それに対して俺はニカッと笑って見せて彼女たちを安心させてやる事にした。




