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俺の柱魔法ってハズレ能力かと思ったら実は最強の盾でした ~土木作業魔法で成り上がる~  作者: 影木とふ「ベスつよ」②巻発売中!


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39 故郷シルビドにて ── 完 ──





「ここを見てもらえる? この本のこの一文、多分これ、シアン少年と同じ柱魔法じゃないかしら」



 夜、ファーマルの広場で行われているオーク討伐大宴会。


 少し休もうと人の輪を抜けてきたら、アイリーンさんとヴィアンさんにつかまった。


 ヴィアンさんが俺のこと、主に『柱魔法』のことを調べたらしく報告を聞くが、どうにもこの柱魔法、謎が多いらしい。



「ええと……勇者は仲間である閃紅の剣士、絶氷の魔法使い、回復盾のエルフ、轟雷の弓使い   たち と旅立つ。ドラゴンとの戦いでは、どんな魔法すら弾き防ぐ魔法を盾になんとか追い返し……」



 ヴィアンさんから渡された本。


 これは物語が書かれた本ではなく、解説書と書いてある。


 ドラゴンを倒したという英雄勇者の物語の本は色々読んだことがあるが、解説本らしき本は初めて見る。


 勇者パーティーのメンバーは俺も知っている、勇者、剣士、魔法使い、盾エルフ、弓使い。


 まぁどの絵物語にもこの構成で書かれているし、実在の人物の物語なんだから変えようがない。


 だが弓使いのあとの表記が、少しおかしい。


 なんだか妙な空欄があり、違和感。


 その後の文章の、『どんな魔法すら弾き防ぐ魔法の盾』という表現は初めて見た。


 俺が知っているのは、回復と盾使いのエルフが防御を担当して、使っていた盾も巨大な鉄の盾で、普通にドラゴンの放つ魔法に苦戦していた描写があったと思う。


 そして絵物語では、『ドラゴンを倒しました』で終わるのが基本。


 だがこの解説書、『なんとか追い返し』と書いてある。



「仲間の表記におかしな空欄がありますし、追い返し……? こういう表現をしている本、初めて見ました」


「これ、いつの本なのか、年代不詳の本なんだけど、作り方や素材を見るに相当古い物だとは思うの。ドラゴンを倒したという勇者のパーティーは五人で描かれていて、私もずっとそう思っていたけど、この本、弓使いのあとに空欄があっておかしいのよ。どんな魔法をも弾き防ぐ魔法盾ってのも、初めて見たわね。そして、最後は倒しましたではなく、追い返したという表現」


 そう、勇者の物語は五人の旅が描かれた物。


 もしかしたら一時的に加入した人もいたかもしれないし、その人を書いたが、メインメンバーではないから後から消して省いたのかもしれない。


 そしてどんな魔法すら弾き防ぐ魔法の盾。


 これは……本当に初めて見る。


 まるで俺の『柱魔法』みたいだ。


「これがどういう意味なのか昨日までの私では分からなかったけれど、今日あなたの『柱魔法』を見て理解できた。この本が語っている勇者の物語は、『柱魔法』の使い手を加えた六人パーティーで旅をし、ドラゴンを相手に歯が立たず、『柱魔法』を盾になんとか逃げた、というもの。これはこの本だけを信じた場合の、完全に想像だけど、ドラゴンを相手に全員生き残っただけの物語が後世に都合のいい脚色をされて英雄譚になったのが、今に伝わる『ドラゴンを倒した英雄勇者の物語』ではないのかしら」


 ヴィアンさんが、英雄勇者の物語の新解釈を語る。


 確かに、この解説書だけを信じるのなら、そう考えることも出来る。


 でもヴィアンさんも言っているが、想像の域を超えない。


「……こういう本、たくさんある。デタラメ……嘘……売るためだけに、派手な表現をした本……そういうのかも、しれない。……でも、ファーマルの街に現れたドラゴンの攻撃を防いだって聞いたし……オークエンペラーの攻撃を完全に防いだシアンの柱魔法を見て、もしかしたら勇者パーティーに、『柱魔法』の使い手がいたのかも……しれない」


 狐耳パーカーの女性、アイリーンさんも本をパラパラとめくり、俺を見てくる。


 あの伝説の勇者パーティーに『柱魔法』の使い手がいたかもしれない……それはすごいことだが……


「……ええと、『柱魔法』の使い手が勇者パーティーにいたかもしれない、というお話は分かりましたけど、その、なぜそこの情報が後世に残らず、それどころか消されているんですかね……」


 俺と同じ『柱魔法』が使えたのなら、その人は大活躍したはず。


 なぜ物語には登場せず、存在ごと消されてしまったのか。


「そう、そこが分からないのよ。数百年も昔の話だし、残された資料はほとんど消されたか改稿済み。なぜだか分からないけど、『柱魔法』の情報がこの世から排除された。そして歴史上『柱魔法』の使い手は存在していない。もうお手上げね……と思ったけど、いるじゃない、その使い手が。ふふ、私こういうの調べるの大好きなの。真相解明の為にこれからはあなたに協力してもらうわよ、うふふふふ……」


 ヴィアンさんの目が怪しく光り、がっしりと俺の両腕をつかんでくる。


 え、協力?


 ……確かに、勇者パーティーに『柱魔法』の使い手がいたかもしれないっていうお話にはロマンを感じるから……まぁいいか。






 翌日、俺はルナにお願いをし、とある場所に馬車でむかっている。



「ごめんねルナ、疲れているだろうに」


「ううん、いいのよ。私のシアンのお願いだし、あんな真面目な顔されたら断れないわよ……って、二人っきりで馬車だっていうから色々期待したのに……なんで全員いるのよ……! もうっ!」


 そう、ルナだけ誘ったのだが、なぜかSランクパーティー『月下の宴』のメンバー全員が付いてきた。


 みなさん、俺が心配、ということで付いてきてくれたのだが、なぜルナが怒っているのか。


「ふァ……ねむ。ンだよ、ヤるならさっさとヤりゃあいいだろ。場所変えてまですることかァ?」


 リューネも付いてきたのだが、宴会で食べ過ぎ&寝不足で超ダルそう。



「ふははー、いやぁルナがシアンくんに告白されるシーンは絶対にこの目で見たいしー、その後の組んずほぐれつは親友として絶対に見届けないとー」


「そうですね、正しい知識の元、行為をするのが正解かと思います。シアン様はお若いですし、パワーがすごいかもしれませんので、ルナレディアお姉様だけでは足りない場合、このルウロウも参戦いたします」


 メイメイさんとルウロウさんが意味不明な発言。


 俺のパワー? 


「確かにシアン少年って、大人しそうに見えて、そっち系のパワーすごそうだものね。私も久しぶりに熱く燃えられそう……うふふ」


「……そうなんだ……すごいんだ……ちょっと興味、ある」


 ヴィアンさんとアイリーンさんも謎発言。


 どうしたの、『月下の宴』の女性陣……


「お、見えたね。フレンドリートークはそこまで、一応オークに警戒しつつ、シアン君のお願いを叶えてあげようか」


 リーダーであるロイドさんが馬車の外を指し、目的地到着を教えてくれる。


 今のって、フレンドリートークなんだ……俺にはよく分からない内容だったのですが。






「………………ただいま、父さん、母さん。ちょっと時間がかかってしまったけど、帰って来たよ」



 ファーマルの街から馬車で三時間ほど北にある、廃墟。


 ここはかつて、シルビドという街だった場所。


 俺が生まれた地、そして、大好きだった父さん母さんと六年間過ごした地。



 十年前、シルビドの街は突如、大量のオークの軍勢に襲われた。


 騎士や冒険者のみんなが抵抗したが、オークの数が多すぎたのと、さらに強い個体であるオークキング、オークエンペラー相手に成すすべもなく殺されていった。


 俺の父さんと母さんも冒険者で、六歳だった俺を避難用の馬車に押し込んだ後、俺を逃がそうと巨大なオークに立ち向かっていった。


 ……それが俺が見た、二人の最後の姿。


 十年ぶりに来てみたが、街はオークに徹底的に荒らされ、もはや更地に近い状態。


 思い出の家も、よく遊んだ街の公園も、何も残っていない。


 あまりの状況に泣きそうになるが、俺は二人に泣き顔を見せに来たのではない。


 ぐっと涙をこらえ、ファーマルの街で買って来たお花をお墓に添える。



 俺が住んでいた家のあたりに廃材が残っていたので、それを二人を最後に見た付近の地面に突き刺し、お墓とさせてもらった。


 狐耳パーカーの女性、アイリーンさんが無言で廃材に短刀で加工をしてくれ、かなり見栄えの良いものにはなっていると思う。


 いきなり目にもとまらぬ速さで木を削り、彫刻のような美しい女神の像が彫られた墓標が出来上がったのには驚いたが、ただの廃材よりは喜んでくれるだろう。


 ありがとう、アイリーンさん。


 みんなも花を添えてくれ、簡易ではあるものの、華やかになったのでは。


 これなら二人も寂しくはないと思う。



 ルウロウさんが何度もお墓に頭を下げてくれ、小さい声で何度も謝罪の言葉を言っていた。


 ルウロウさんはこのシルビドの街の出身で、俺の父さんと母さんに命を救われたそう。


 騎士である弟さんもそうなのだが、リーブル王子にご報告しないと、と早朝にみんなと一緒に王都に帰っていった。


 一緒に行きたいと言ってくれたが、騎士のお仕事中で独断行動は取れず、姉であるルウロウさんにお花を託していった。




「そうだ、俺、憧れだった冒険者になれたよ。頼りになって信頼できる仲間も出来たんだ。……だからもう大丈夫、あまり心配しないで大丈夫だから」


 冒険者になって初めてもらったお給料で買った指輪。


 父が好きだった赤い装飾が入った物と、母が好きだった青い装飾が入った二つの指輪、それを二人のお墓に並べて置き、頭を下げる。


「俺はあなたたちに助けられ、今を立派に生きています。これからも俺はフォスター=ソイル、メイドーラ=ソイルの息子ということに誇りを持ち、二人のように冒険者となって世界を見てこようと思います」


 俺も父や母と同じ冒険者として世界を巡り、二人が見た景色を見てみたい。




「……じゃあまた来るから。さよなら、じゃなくて、ええと……行ってきます!」






 さぁ行こう。


 これから冒険者としての俺の人生が始まる。


 不安はあるが、大丈夫、俺には信頼出来て、楽しい仲間がいる。




「……あれぇー? ねーねー、シアンくーん、ルナに告白はしないの? 組んずほぐれつはー?」


「ちょっとメイメイ! さすがに空気読みなさい!」




 ……楽しい仲間……は確かにいるけど、今度来るときはルナとリューネだけにして、メイメイさんを誘うのはやめようと思った、故郷からの帰り道────




 

 

39 故郷シルビドにて ── 完 ──






「俺の柱魔法ってハズレ能力かと思ったら実は最強の盾でした ~土木作業魔法で成り上がる~」

























++++++++++++++


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【以下定型文】




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         影木とふ









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