37 オーク大発生の衝撃の理由
「シアーン! 信じてたわ……私のシアンならやってくれるって!」
「え、うわ、ちょ……ルナ……!」
ファーマルの街を襲ったオークの軍勢数万。
俺たちはついにそれら全てを撃破、全員無傷での勝利となった。
街の防衛に協力をしてくれたファーマルの冒険者の方々、そして王都から派遣されたというリーブル王子直属の騎士の方々が、武器を掲げ、勝利の雄叫びを上げ喜びを分かちあう。
人間では倒すことが不可能と言われていた、高さ十メートルを超える巨体の持ち主オークエンペラー。
三体全ての止めを刺したエルフであるルナが、ダッシュで俺に抱きついてくる。
「すごいわシアン……! 全部あなたのおかげ! あーもう、グリグリしてあげる!」
「ルナ、みんなの前わっぷ……」
エルフ特有の長い耳をピコピコ動かしながら、ルナが大興奮で俺の顔を自分の胸に抱え込み、顔を擦り付けてくる。
「ちょ、待って、すごいのは止めをさしたルナと、攪乱をしてくれた『月下の宴』のメンバーと、街を守ろうと立ち上がってくれた冒険者、騎士のみんなで、俺は別に……」
「あーーーもうっ! ダメよシアン、こういうのは素直にならないと。あなたはその持てる全てを使い街のみんなを守り、オークエンペラーの弱点を見抜き作戦を立案し実行に移した。そしてそれが見事成功し、オークエンペラーを討伐出来た。これ全部シアンがやったことなのよ。なにせこの私が全部側で見ていたんだから、間違いないわ!」
冒険者や騎士のみなさんが羨ましそうに俺を見ていて恥ずかしいので、なんとか大興奮ルナの抱きつきから逃れようとするも、逆にグイグイ抱きついてきて脱出は不可能ぽい。
「そうだよシアン君。今回のオークエンペラーの討伐が成功したのは、君のおかげだ。僕たちだけでは、きっと街は守れなかったと思う。ありがとうシアン君。君はまさに、ここにいる誰もが認める、街を守った英雄だ。そうそう、今回の報酬はすごいよ、期待しておいてくれ、あはは!」
Sランクパーティー『月下の宴』のリーダーであるロイドさんが俺の肩をバンバン叩き、爆笑。
ほ、報酬……?
「うん、そうだねー、今回の一番は誰がなんと言おうがシアン君! 今回の討伐報酬って、結構えげつない量あると思うから……覚悟しておいたほうがいいかも! マジで!」
メイメイさんも俺の頭を撫で、変な脅しをかけてくる。
報酬に、覚悟……? 一体どういうこと。
「うふふ、やったわねシアン少年。ああ、私でよければお買い物に付き合うわよ? 私、ちょっと欲しい物があってね、少年がどうしてもって言うんなら、受け取ってあげなくもないわよ? うふふ」
「……シアン、多分、王都で家買えるぐらい貰える……いやもっと……?」
黒いドレスを着たヴィアンさんと、狐耳パーカーのアイリーンさんも俺の頭を撫でて行くが、え、王都に家……?
「当然ですシアン様。あたながいなければ、この結果にはならなかった。堂々と報酬を受け取るべきです!」
ルウロウさん、あなたも相当頑張っていたと思いますが……。
あ、いや、一番の活躍は多分、オーク数万を超える軍勢の半分以上を一撃で焼き払ったリューネか、って、そういやリューネがまだ戻って来ていないな。
「おーい、リューネー。どこまで行ったんだろうか……」
北側に流れたオークの討伐では物足りなかったらしいリューネは、そのまま森に突撃、手当たり次第にオークたちを倒しまくっていたが……さて、どこまで行ったやら。
街の外側、戦場となった場所の後片付けが始まったが、俺はリューネが戻って来ないことを心配し、一人森に入ってきた。
……しかし、とんでもない数のオークが倒れていて、正直怖い……。
「リューネー……あ、いた、よかった無事だったんだね……ってなんだこれ……!」
森を進んでいくと、木がものすごい力でなぎ倒され、ちょっとした広場になっている場所があった。
そこの中心に、うず高く積まれたオークがあり、その上にリューネが不満そうに肩肘ついて座っていた。
ここに倒れているオーク、これ全部リューネがやったのか……って普通にオークエンペラーとかいるんですけど?
やっぱとんでもない強さだな、リューネは。
って忘れがちだが、彼女の正体は人間ではなく、ドラゴン。
英雄勇者が挑んだという、あの伝説のドラゴンで、今はなぜか人間の姿で俺の側にいる。
「おゥ、シアンか。そっちも余裕だったみたいだな。まぁアタシのシアンが巨大な豚程度に負けるわけがねェわな、ヒャハハハ!」
俺に気が付いたリューネがニカっと笑顔になり、オークの山からジャンプし、俺の側に来る。
いや、余裕ではなかったかな……結構危なかったよ……。つか俺、防御は出来ても、攻撃手段が無いからなぁ。
「なんだかこっちは向こう以上にすごいことになっているけど……これで森のオークは倒し切れたのかな?」
ファーマルの街を襲った数以上のオークが道中に倒されていたけど、これで全部なのだろうか。
「まさか、またいつか無限に湧くぞ。ま、しばらくは大丈夫だろうがな、ヒャハハ」
俺の言葉にリューネが反応するが、え、また無限に湧く……? それって、普通の生き物の理から外れていないか?
森のオークって、一体何なんだろうか……。
「ん……? それは何だいリューネ。黄色い宝石……? あれ、それ確か、さっきのオークエンペラーの右目にも入っていたけど……?」
リューネが右手に握っている黄色い宝石。
どこかで見たな、と思ったら、さっきのオークエンペラーの右目にあったやつと同じだ。
そうか、こっちのオークエンペラーの右目にも、同じものがついていたのか。
「……ん、ああ……これは、な……」
俺の質問に珍しく歯切れの悪いリューネ。
どうしたんだろうか。
「これのおかげでオークエンペラーを倒せたんだよ。どうやらこれが彼等の弱点らしくてさ、右目のこれを壊したら、黄色い光を放って倒れていったんだ」
さっき俺たちが倒したオークエンペラーのことを、簡単にリューネに伝える。
「………………シアン、この一連のオーク大発生だがな、これは自然発生的に起きたことじゃあなくて、誰かが意図的に発生させたものだ」
しばらく考えた後、リューネがゆっくりと口を開いた。
……え……? オークの大発生が誰かの意図的……?
それはどういう……
「普通のオークエンペラーの右目には、こんな黄色い魔宝石はついていない。これは明らかに、誰かがこの魔宝石をオークエンペラーの右目に無理矢理ブッ込んだものだ」
リューネが握っていた黄色い魔宝石を砕き、俺の目を真っすぐに見て、言う。
「これをやったのは…………ドラゴンだ」




