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間話 断罪の刻が来た

 私はあの日全て見ていた。


 別に初めから見ようと思っていた訳ではない。ただ最初はいつものようにあの人の後を追っていただけ。


 すると驚いた。瞬く間に二人が恋人同士になってしまったではないか。遠目から見ても分かるお互いの幸せそうな顔。


 あの人が私には見せてくれない見たこともない顔だ。


 心臓がキュッと締め付けられた。声を上げてしまいそうになるのを必死にグッと堪えた。


 あの人がもっと遠くに言ってしまう。このままずっと想いを伝えられないまま、今よりもっと手の届かない所に。


 元々叶わない恋だと心のどこかで分かっていた。あの人が一途にずっと想い続けていた事を、私はずっと側で見て来たから。


 それは分かってた。分かってたんだけど‥‥

 

 初めての失恋だった。恋をしたのも初めてだった。あの人と出会って感じた事全てが私のかけがえのない物になった。


 だからなのだろうか、あれ程まで辛いと感じてしまったのは。


 二人が仲良く教室を出た後を見計らうかのように、私は誰もいない教室に入った。


 誰も来ない事を確認した後、あの人の椅子に座ってしばらく机に顔を埋めた。記憶の中のあの人が、私に向けてくれた笑顔を思い出し、我慢していた物が瞳から溢れ出す。


 私はそこでハッとなり急いで顔を上げる。私なんかの涙で大好きな人の机を汚してはならない。


 もう帰ろう、帰って一人で思う存分泣こう。そして明日から何も見なかったかのようにあの人の前に出よう。例えこの想いが伝わらなくても、少なくともいつものようにあの人の側にいる事は出来るのだから。


 そう思って自分のタオルで机を拭いている時、男女の声が聞こえてきた。


 私が言うのも何だが、普通はみんなもう帰っている時間なので完全に油断していた。


 この声は聞いた事がある。二人の幼馴染、霧島凜人先輩とたまにテニス部に遊びに来る斎藤麗奈先輩の声だ。あの人とは同じクラスだと聞いている。


 やばい。入って来たらどうしよう。


 別に見られて困るような事は何もしていない。だがずっと苦手だった。二人のキラキラしたオーラが。私のような日陰で生きる存在に取っては、あまりにも眩しすぎる存在。


 今から教室を飛び出しても間に合わない。私は咄嗟に掃除用具入れのロッカーに身を隠した。幸いあの人を日々身を潜めながらストーキング‥‥いや見守っていた事もあって隠れる事には慣れている。


 息を潜め、声が完全に聞こえなくなったら出ていこうかと考えていた時、二人が教室に入って来た。


 来てしまったなら仕方がない、用が済むまで隠れていよう

と息を潜めていた時、とんでもない会話が聞こえてきた。


 友達を罠に嵌めるという最低の裏切り行為、卑劣な計画が二人の口から話される。


 私は本能でこれは録音すべきだと直感し物音を立てないように注意しながらスマフォを操作した。途中あわやスマフォを落としそうになり声が出掛けるが、何とか堪える。


 数十分後二人が出て行った事を確認した私は、ゆっくりと

ロッカーから出て酸素を補給する。


 会話は反吐が出るような内容だった。無実の人間を犯罪者に仕立て上げるなど言語両断だ。


 こんなの絶対に許される訳がない。


 私が偶然にもこの場にいておいてよかった。残念だったなお前らの計画は失敗に終わるぞ、ここに確固とした証拠があるんだぞと正義感に突き動かされそうになった時‥


 私は、ある最低な事を思いついてしまったのだ。


 これは私にとってチャンスなのではないか、と。


 恋人になった二人の仲が引き裂かれれば、こんな私にもチャンスが訪れてくるのではないか、と。


 自分の中の正義感と中学以来の恋心を天秤にかけ、悩みに悩んだ。


 そして悩んだ末に私は‥‥


 愚かにも黙秘する事を選択した。


 こうして私は、卑劣なあの日の二人と共犯者と言われてもおかしくない存在に成り下がった。


 自分が最低の人間な事は自覚していた。だが本気であの人が私に振り向いてくれると信じ、可能性に賭けたのだ。


 だが現実は違った。あの人はずっと、私ではない一方を一途に、一心に見つめていた。


 あの人の弱った心に付け入るという、私の愚かすぎる作戦は無惨に失敗した。


 ある日を境に、あの人の笑顔は少しずつ消えていった。そして昨日、あの人の顔が絶望に染まっていたのを見た。


 私は今、心底自分が恥ずかしく思う。あの時正義を行なっていれば‥私が自分の想いに終止符を打っていれば‥


 大好きなあの人のあんな顔を見ずに済んだのに。


 あんな悲しい想いをさせずに済んだのに。


 今度は私が自分の愚かさを悔い絶望する番だ。だがその前に私は私のやるべき事をせねばならない。


 私は今日誰よりも早く登校をし、今あの人の教室にいる。


『私は全て知っている。霧島凛人、斎藤麗奈。お前達の断罪の刻は来た。』


 黒板に文字を書く。あとは人が集まるのを待つのみ。


 断罪の刻が来た。あの二人と、そして私自身の。


 私の行動が憎い恋敵を守る事になるが、これ以上自分が嫌いになるよりはマシだ。何より私の大事な‥私にずっと優しくしてくれた大好きな先輩‥


 桜木美桜先輩がこれ以上傷つくより遥かにマシだ。


 遅くなってごめんなさい美桜先輩‥深く傷つけてしまってごめんなさい美桜先輩‥それに‥‥八神先輩も‥っ。


 私は心の中で懺悔しながら、人が集まるまでどこかで待機する事にした。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 録音!!! まじでナイス!! この後輩だれだ~気になる!!! 冤罪がはれていくのがすごく楽しみです(^^♪
[一言] 主人公の冤罪がやっと晴れるのか 陥れた奴は退学やしあと校長もクビかな
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