お題 「お風呂・夜・夏」 1
ある暑い夏の日の事だった。
私の夜の楽しみはお風呂での長い半身浴。社畜とし馬車馬の如く働き、スマホで十一時から投稿動画を見ながら、一時間のんびりと過ごすのだ。この週間は結構長く、母が死んだ高校時代からもう十年ほど続けている。動画を見ていると、面倒くさい日常を忘れて脳みそを空っぽにできてとてもいい。バカをやっている動画でも、動物の癒し動画でも何でもいい。結構雑食に動画を貪っている。
中でも最近ハマっているのはVチューバーと呼ばれる、投稿主の動きをCGの様なもので萌えキャラに変換し、声も機械的な声に変換されている。めちゃくちゃ可愛いキャラクターがおじさん臭いことを言っているのもまた面白いのだ。
そして私の一押しはこてこてのロリキャラのランドセルを背負ったチカタンというキャラクターチャンネル。これもまた、たまに見せるおじさん臭がたまらなく面白い。
毎日ちょうど十一時くらいからライブ配信をしており、私はそれに合わせて半身浴を兼ねてみた。今日何食べた?とか本当に話す内容は多岐にわたっており、夕飯が同じ時なんかはコメントで絡んだりもしている。
きょうの話題はなんだろう?
そう思いながら今日もお風呂に入る。
「みなたーん、きょうもーチカタンのお部屋にー来てくれてあーりーがーとーー。めっちゃうれしーぴょん!そうそう、今日はー、チカタンの〜…」
今日もそんな感じで始まった。今日は何でも、お気に入りの文房具を紹介していくらしい。
お気に入りのシャーペン、お気に入りのミラー、お気に入りの消しゴム。チカタンの中の人を想像できてちょっとほっこりする。今日紹介されているものはとても可愛らしい物ばかり。ただ、ちょっと気になるのはちょっとどれもこれも古い。私がちょうど小学生の頃にはまったような、いや、私が持っていたようなものだった。
当時流行ったよくわからないペンギンのキャラクター。今ではどうやっても流行らなそうなキャラクターなのだが、当時はアニメもやっておりクラスメイトはキャラクターTシャツを着ている子もいた。
「…って感じでーす。ふぁー、今日も眠くなっちゃったー、いつも見てくれてありがとーチカタンそろそろ寝るねー、ばいばーい」
そういういつもの声で動画が終わる。しかし、今日は終わらなかった。長い。静止が長い。
ずっとチカタンが動かない。コメントもざわついてくる。もしかしたら動画を切ったと勘違いしての誤配信…?そう思い始めた人が増えた頃画面が暗転し、カメラに女性と思われる部屋にいるおじさんが映し出される。
あれ?この部屋私の部屋?あれ?そこにいるのはお父さん!?
私はお風呂を飛び出した。




