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TAKUMI  作者: 水嶋ゆり
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第54話

  駒木以下、2名の逮捕の知らせを買い堅固のレセプションで聞いた匠は、日下にだけ耳打ちし、こっそり会場を抜け出した。そして沢木と共に警視庁に赴いた。そこでは真田が今か今かと2人を待っていた。駒木たちを乗せたパトカーは少し前に到着しており、3人は各々別の部屋に入れられていた。駒木に会って話を聞きたいと申し出た匠だったが、現時点では不可能だと真田に言われ、あっさり引き下がった。ダメ元で聞いてみた。と匠が言うと、真田は苦笑いし、当然でしょう。と付け加えた。


  沙織が警察病院で治療を受けていると知らされた匠と沢木はすぐ病院へ直行した。真田によると、口の中を切っているのと精神的なショックを受けているため病院へお連れしたというのだ。

  受付で案内を請うと、510号室に入院したということだった。エレベーターで5階まで行き、一番奥の部屋のドアを開けると、死んだように眠る沙織と、見たことのある女性が傍らの椅子に腰掛けていた。

「沙織!」

滅多に感情を表に表わさない匠が、沙織の腫れ上がり紫色に変色した顔を見て逆上した。沢木とその女性が必死で押さえ、何とか椅子に座らせた。

「今、薬で眠っておられます。ケガも数日で直るそうですから、どうぞお静まり下さい。」

女性の訴えがなければどうなっていたか。沢木は改めて匠という男がわからなくなった。

「本当に大丈夫なんだろうな!」

搾り出した声に女性は怯んだ。

「は、はい。ああの、私、先生を呼んで来ます。」

どちらに向かって言ったのか定かではなかったが、女性は一刻も早くこの場を去りたいと言わんばかりに病室を飛び出した。

  医師を待っている数分の間で、どうにか匠の身体から発せられていた怒りは収まったようだ。事実、医師と看護師を連れ戻ってきた女性に「さっきは取り乱して悪かった。」と本人にだけ聞こえるよう謝罪していた。

  詳しいケガの状況を聞き、匠たちはひとまず胸を撫で下ろした。医療用語などチンプンカンプンの沢木だが、匠には全て理解できるのか更に突っ込んだ質問をしている。しまいには綺麗な発音のドイツ語を話し医師たちを仰天させた。

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