第108号・茨城県内某居酒屋(9/5 21:15〜)音声記録
参加者: ムタ、中条夕里の母親(女性・仮名)、および背景音(TV、他客)
(ノイズ:食器の擦れる音。換気扇の回転音。女の、乾いた笑い声)
母親: 「……あんた、夕里の知り合い? 悪いけど、あの子のことならもう終わった話だよ。警察も来たし、葬式も済んだ。あたしにこれ以上、何を言えって言うのさ」
ムタ: 「……隣、いいですか。話を聞きたいだけです。あの子が、どんな風にここで過ごしていたのか」
(椅子が引かれる音。ムタが座った気配)
母親: 「はっ、律儀なこった。あの子が死んだって聞いた時? 別に何とも思わなかったよ。むしろ『やっとか』って感じ。あの子は昔から、周りの空気を重くする天才だったからね。……あんた、あの子が中学の頃の不倫話、知ってるんだろ? あれでここにいられなくなった。迷惑だったよ、本当に」
ムタ: 「……母親なら、守ってやろうとは思わなかったんですか」
母親: (ライターの火をつける音。煙を吐き出す音)
「守る? あはは! あんた、おめでたいね。あの子が物心つく前、あたしが金に困ってた時……あの子を喜んで買う変態がいたんだよ。二、三日貸してやるだけで、一ヶ月遊べる金になった。あの子にとってはそれが『日常』だったのさ。今さら母親面して泣けって? 冗談じゃないよ」
(一瞬の沈黙。ムタの周囲で、パチパチと空気が乾燥するような音が混じり始める)
ムタ: 「……他にも、男がいたはずだ。あの子が地元にいた頃、関わっていた連中のことを教えろ」
母親: 「ああ、いたねえ。地元のヤンキーから、神栖の半グレ、果てはネットで知り合ったどこの馬の骨かもわからない客……。夕里はね、自分を安売りするのが得意だったんだよ。誰かにすがってないと、一分も立っていられない、空っぽの操り人形。あの子に触れた男たちはみんな言ってたよ。『中身がないから、いくらでも好きなように汚せる』ってね」
ムタ: 「(声がかすかに震えている)……お前は、あの子の心の中を見たことがないのか。あの子がどれだけ必死に、お前に愛されたがっていたか……」
母親: 「愛? そんなの、この店に置いてある安い焼酎以下の価値しかないよ。……あら、あんた、顔が真っ赤だよ? お酒、まだ飲んでないでしょ。……ちょっと、なんだか、この席……暑くない? サウナみたいなんだけど――」
ムタ: (極めて静かな、しかし重圧のある声)
「……計量は終わった。お前も、この店も、あの子を汚した『不純物』の一部だ」
母親: 「は? 何言って……ちょ、あんた、腕が! 服から煙が――!!」
(激しいノイズ。水蒸気が噴き出すような音。母親の悲鳴。直後、耳を裂くような破壊音と、何かが粉砕される大音響)
(録音終了:衝撃波によりマイクが破損)




