表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
毒樹の果実  作者: ヒゲ博士


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

20/25

反撃準備

  スクリーンが暗くなった。黒木の顔も映っていないただの画面には、間抜けで、生気のない、僕の顔が浮いている。

 視界の端で立ち尽くすアララギに、僕は苛立ちが募っていた。


「なにかね。」


 自然と表情が険悪になっていたのだろう。だがこの体を跳ね回る熱い怒りの激情は、黒木に向いているわけでもなければ、ムタに向けたものでもない。眼の前に存在しているアララギだ。

 人を利用することになんの抵抗もない。一市民を守るという使命を守るということすら忘れて、自身の目的を最優先にしている。僕達が間に合わなかったせいで死人が出たこの状況で、平然としていられるのは何でだ。


「いいえ。」


 だがそれを言うことはしない。今は相手の情報を蓄えて、油断している隙を狙うんだ。


「そうか。まぁそれならいい。すまんが一度席をはずさせてもらうよ。」


 アララギはパソコンを畳み、腕に抱えて足早に部屋から退出した。



 静かな時間が体の周りを彷徨いている。外に視線を流せば、窓から夕暮れがなだれ込んでいた。耳を澄ませばカラスの声と遠くで聞こえる終礼の雑踏が偲んでいた。


「へへ。なんだよムタさん。あんたやりすぎだよ。」


 僕は間に合わなかった。せめて人の生き死にが起こる前に、ムタさんを止められると信じていた。

 心の中身を罪悪感が食い尽くす。虚無という無駄な時間が頭の中を巣食って、思考すら拒んで、どうしようもない。


 そして無気力に立ち上がり、かかとを翻す。


 背面には、種別関係なく色んな物が乱雑に置かれた棚が置かれている。僕はその棚に歩み寄って、とある物を探しながら、片手間でスマホで通話を試みていた。


『先輩…連絡遅いですよ。返事なかったら帰ろうかと思ってました。』


 通話相手は竹内だ。


「悪い悪い。」

『ま。いいですけどね。こんな面白そうな事、待ってたんですから』

「……やっぱお前イカれてるよ。ところで準備は?」

『終わってますよ。でも1時間が限度です。』


 棚を漁る傍ら、施錠されたドアの向こうでは、何やら若々しい声が集まっていて騒がしさが出てきた。

 

『いつ始めます?後輩ちゃんずが騒がしくなってきましたし、これ以上はちょっと…。』

「もう少しだ…ここらへんに隠したはずなんだけど。」


 黒いボックスを棚から下ろそうとした時、背面から銀色のアタッシュケースの角が覗いていた。


「あった!!」


 僕は嬉しさのあまりに独り言を零すが、知ったことではない。アタッシュケースを取って、机の上に置いた。

 黒色のナンバーロックを手際よく回して、封印を解き、貝殻のように開く。中には黒色のノートパソコンが座っている。今は真珠よりも嬉しい。


「隠しといて良かったよ。私物パソコンがあればこれが使える。」


 左手に握られた黒いライターのような物体を確認した。これは先程、ビデオ通話で使っていたノートパソコンに差し込んだUSBメモリ。アララギの目を盗み、早業でバックアップを取り込んだのだ。 

 アララギの目的がわかれば、この事態から逃げられるかもしれない。外に出たならムタの確保。これ以外に僕の勝ち筋はない。

 反撃の為の武器を手にする時だと意気込んで、僕はスマホのスピーカーに向かい、号令を上げる。


「作戦開始。」

『了解。廊下の週末清掃で足止め作戦、実行!!』


 竹内の合図が廊下に響いて、後輩ちゃんずの雄叫びが上がる。


「さ…1時間で何が見れるのかなっと。」


 彼らの心強い声援を受けながら、ノートパソコンにデータを取り込む。

 するとフォルダ分けされたデータが、表示された。僕は一先ず上からクリックしていく。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ