521-37、最近不調かも?
「マジですか~…」
加賀谷はクラウンから降りてきた僕とミズハを見て驚いていた。
「ついに翫さんが■■■入りしちゃって…」
「そんな物騒じゃないから!最廉価グレードだし、既に十年落ちだから!」
「マスターの決断っぷりは、それはもう見事で…」
「ミズハも流れに乗らないでいいから!購入するときいなかったでしょ!」
ボケが二人はさすがに追いつかないです。勘弁してよ。
そのとき、FL5とスカイラインが同時に駐車場に滑り込んできた。
FL5のドライバーである輪嶋くんは震える指でクラウンを指さした。
「そ、それ、誰のクラウンなんですか?」
「まさか…翫のか?」
スカイラインのドライバーである見上先輩も怪訝そうな表情をしていた。
だから僕は堂々と答えた。
「そうですよ」
「すげえなこれ」
「いいなあ…!」
そして輪嶋くんはエンブレムを、見上先輩は後輪のサスペンションを覗き込んでいた。まるで窃盗団みたいな行動してる……。
「で、いくらだったんだ?」
「203万円です」
「…え?」
「203万円です」
重要なことなので二回言いました。三人は驚きのあまり言葉も出ていなかった。
「翫さん、騙されたんじゃないんですか?」
「で、でもこれBグレードですよね。走行距離も多いのなら納得かも…!」
「手ごろなヤツがあって良かったな!」
「運がよかったです。本当はまたカローラスポーツにしようと思ってたんですけど、納期が半年と言われちゃって」
「いろいろ部品がないもんなあ。世界情勢がもっと安定化しないと」
全く、誰がこんな世の中にしたんだか。
さて、クラウンの話題はここまでにしておいて。
今日は早速、521-37と521-34の四両編成を担当することになっていた。でも、確か先週だったかな。
「クモハ側の白色HIDが球切れ起こしてたんだよね…」
あれはびっくりしたよ。金沢駅に入線してきたとき、右側のライトが黄色HIDの光しか届いてなかったんだもん。
でも今はしっかりHIDが交換されているので、光量はバッチリ。他の点も異常はなかった。
ところが、車内の冷房を動かして中を確認していると…。
ババババババ……!
クモハ521-37の天井から工事現場のような異音が聞こえてきた。ここは…中間のドアの辺りか。どれどれ…。
「はは~ん、ここだな」
僕は天井を見上げた。風の吹き出し口は左右にスイングするのだけど、その度に異音がしていた。潤滑油が足りてないんじゃないの?
けれどこの異音は何回かスイングしているとすぐに消えた。故障とかじゃなくてよかった。
それにしても、最近の521-37は踏んだり蹴ったりだねえ…521-105のようにならなければいいんだけど。
ちなみに、34の方は元気だった。




