34話 福井駅
福井と言えば『恐竜』を思い浮かべる人が多いはず。まさにその通りで、福井駅の目の前には『恐竜広場』がある。僕は恐竜に興味ないけど。
首の長い恐竜に、角が生えた恐竜……残念ながら、名前は知らないんだよね。
前に一回だけ『恐竜博物館』に行ったことがあるけれど、ティラノサウルス(?)しか覚えていない。あれは大きかった…。
逆に『恐竜博物館以外で福井での思い出は?』って聞かれたら、海で波にさらわれそうになったことくらいだ。
「あれ以来、海に行くことは滅多にないなあ……」
「海のどんなところが嫌なんですか?」
「やっぱり一番は水がしょっぱいこと。口に入っちゃったら何時間も塩の味が口に居続けるからさ。ミズハが行ったら潮風で錆びるかも」
「……コーティングされているはずなので大丈夫だと思います」
「あ、そうなんだ」
コーティングとか初耳だ。
「そろそろコーティングの再施工をしてもらわないと…」
「Hey, you over there!!」
「...?」
もうすぐで発車というときに外国籍の男性に話しかけられた。
「I want to ride that train that's stopped there!」
(・ࡇ・) ?
僕は英語は多少話せるけれど、こんなに早口で、なおかつ少し興奮状態の英語で話しかけられると固まってしまう。どう答えるのが———
「Do you have a ticket?」
状況に気付いてくれたミズハが運転室から出てきて、男性の対応してくれた。
「Um... Oops. I had forgotten about that.」
「You cannot board this train without a ticket.」
「ヴァ、ヴァイパーさん!」
そのとき、大勢の護衛みたいな人たちと、テレビで見たことのある大臣...佐納さんが駆け寄ってきた。
あれ、ということはこの外国籍の男性...相当偉い人なのでは???
「Sano, please try to talk him into it!」
「え、ええ」
佐納さんは改めてこちらを向いた。
「こちらはヴァイパーさん、今回の来賓です。そこに停まっている電車を見た瞬間『あれに乗りたい』と言い出して...できそうでしょうか?」
「えぇ...」
W7系の一部分を貸し切ったのは聞かれたくない話をするはずだ。それはするのかな?
というか、521の席がない。立たせるのもダメだろう。それに他の乗客もいるし……。
「マスター」
「うん?どうしたのミズハ」
「断りましょう」
「...え〜と、理由を聞いても?」
「発車まであと一分です」
ミズハが僕のスマホを持ってきて見せてくれた。
やべっ。乗客を待たせるわけにもいかないな。
「佐納さん。今回は時間もないため、ご乗車になれません。また次の機会にご乗車ください…とお伝えください」
「そうですか...そうですよね。すみません唐突に」
「いえいえ、それでは」
僕とミズハは521の運転室へ戻った。
……これは来年も確定かな。
『……分かった。こちらこそすまなかった』
「頭を上げてください。希望通りにならなくて申し訳ないです」
521が発車した後のホームで二人は会話していた。
『ちなみに、貸切にするのにはいくらかかるんだ?』
「えっ……そ、それは私にも……」
『製造費と同じ額を出せば———』
「そこまではしないかと……多分」
『まあ、来年もう一度来日させてもらうよ』
この翌日、佐納と金石区長を含めた上層部が対談することになった。




