31話 いつの間にか復旧していた
あっという間に休憩が終わり、福井駅を出発する時間になった。今も電光掲示板は灯っておらず、真っ黒な板のままだった。
521に乗り込んでくる乗客はいるものの、さっきよりは減った気がする。気のせいかもしれないけど。
僕は無線を手に取って連絡できないか試してみた。結果、無反応。
「まだ司令部と繋がらない……復旧してないのかぁ」
「ちょうど、電力会社が原因を究明したようです」
「お、じゃあすぐに……」
「復旧には時間がかかるということも……」
「期待した僕が⑨でした」
大聖寺駅を通過した頃、僕の頭では教祖様がリグル観音をしていた。さっき摩天楼を聴いたときに思い出したんだよきっと……。
「ああいうのを聴いている時は、何もかも忘れることができるよなぁ……」
「時代ですね」
ミズハよ……。
『ザッ……あー』
「ぅぉっ」
無線から誰かの声がした。車内非常通報ボタンが押されたわけでもないから……というかずっと『あー』って言い続けてる。いよわさんの『一千光年』でも始まった?
『こちら司令部、こちら司令部。応答願います』
「はい、翫です」
ちゃんとした連絡で安心した。さっきのはラグなのかな?
『現在、電力が復旧したため、各運転士が車両の回収に向かっています。より一層注意して走行してください』
「了解です」
『そして福井方面に向かっているD51にも注意してください』
「わ、分かりました」
ミズハたちが言っていたことは正しかったんだ……。
「ん?」
松任駅の手前で、遠くで黒煙が上がっているのが見えた。
「通電火災……?」
「もしそうなのであれば、サイレンの音がするはずです。しかし、今は聞こえてはいませんね」
「ということは……」
すると、一瞬だけ電球のような光がキラキラと光った。しかも一灯だけ。
間違いなくD51だ。
「何だあれ!?」
「写真撮らなきゃ!」
「見たい見たい!」
後ろで乗客たちが扉や窓に寄っていることが分かった。それもそのはず。
「うわあ、逆機してる~……」
炭水車を前にしてこちらに向かっていたからだ。
蒸気機関車の逆機はネットで探せば出てくるけど、実際に見ると迫力が凄い。
Poooooooooo!!!!!!
デゴイチが大きく警笛を鳴らした。
「じゃあこっちも……!」
フィーッ!ピロリロ……
負けじと警笛とミュージックホーンを返した。デゴイチの警笛で『Brain Power』を思ってしまったのは何故だろう……疲れてるかのな。
運転席には作業服姿の金石区長と島さんが頑張っていた。
『暑い中お疲れ様です』
と口を動かすと、区長は……
『これくらい当たり前だ』
と言っていたように見えた。やっぱりすごい、蒸気機関車の運転士って。
金沢駅に着くと、五番線以外は全て521で埋め尽くされていた。石川、富山、福井関係なく。一斉に車庫へ戻すのは難しいらしい。
「そりゃあ、車間距離の維持って疲れるし」
「司令部は今、ダイヤを一生懸命組んでいるんですかね?」
「加賀谷の言う通りだと思うけど……」
今はミズハに車内の点検を任せ、僕と加賀谷で車外の点検をしていた。今のところ、何の問題もない。他の521も同じように、整備士さんたちがあちこちを見ていた。
「マスター、車内に異常はありませんでした」
「おっけ。じゃあちょっと報告してくる」
僕は階段を降りて駅内の事務室へ向かった。これからのことも聞いてこようと思う。
……結局、原因は何だったんだ?




