14、獣人国の一騒動(6)
カーン、カーン、カーン
すぐ近くから聞こえてくるそんな無機質な音を前にして、俺は人生最大のピンチの中にあった。
このダンジョンは、あまりにもダンジョンらしくない。道が入り組んでもいなければ、罠があるわけでも無い。ただ、魔物がいるだけだ。
より魔物を倒すのに集中できるのだが、何とも味気無い。
色々考えるよりも先に、あの耳障りな金属音を止めさせる必要がある。ずっと聞いていると、耳がおかしくなりそうだ。
そう言えば、最近エアルの戦い方を変えたのだ。エアルは最弱クラスの魔物で、低ランクのスキルカードしか使えない。でも、エアルは空気の塊、つまり風船なのだから、まともにスキルカードが使えないのは当たり前の話だ。
だから、今までは、エアルが魔物の口から体内に入ったタイミングで、エアル自体に『火属性付与』をして、敵の体内を火傷させていた。しかし、戦うたびにエアルを魔物の体内に入れるのは可哀想なので
......本音を言うと、魔物の体内に入ったエアルを触りたくないので
エアルに外側から魔物を包ませて、エアル自体に『火属性付与』をしている。魔物視点だと、体の周りに鉄板を押し付けられているような感じだ。
話を戻すと、あの魔物に、エアルのスキルカード『火属性付与』による火傷攻撃、もとい鉄板焼き攻撃が効かない。おそらく火傷耐性を持っているのだろう。
まあ、大きな赤色のトカゲだから、納得できない話では無い。時々口から火を吐いているから、何となく予想はしていた。
俺の持っている魔物カードは『エアル』1体のみ。スキルカードは、『効果拡大』『火属性付与』『眠り』『鈍器強化』『斬撃』『嗅覚上昇』、そして、ここに来るまでに獲得した『怪力』『二連撃』の合計8枚である。
魔物カードについては、お腹が減った時に売り払って、俺たちの昼食に姿を変えている。
シュゥーー、シュゥーー
あの大トカゲに見つかったのかもしれない。俺が隠れている岩の方をずっと見ている。
どうしよう......。
俺の攻撃だと、ダメージが通らない気がする。どうせ、ああいう魔物は表面がガチガチに硬いと決まっている。火属性耐性も持っているようだし、本当にどうすれば良いのやら。
のっそりと大トカゲが近付いてくる。その距離、残り5m。
逃げる選択肢もあるが、このダンジョンは一本道みたいだから、いつか戦うことになる。だから、ここで仕留めておく必要がある。
でも、策が無い。
後ろに少し下げた左足にコツンと何かが当たった。
なんだろうかと思って振り返ると、青白く輝く氷があった。周りをぐるっと見回してみると、ところどころに氷が散らばっている。
「そうか、氷か」
僕の頭に1つのアイデアが思い浮かんだ。カードゲームでは、よく弱点というものが存在する。
それは、部位、属性、武器の種類など色々ある。そして、一般的に火属性は氷属性に弱い。俺の敵は火属性で、周りにあるのは氷属性のもの。
つまり、あの大トカゲに氷を叩きつければどうにかなる気がする。
「スキルカード『効果拡大』『怪力』」
今回も『効果拡大』にはお世話になる。
このカードでスキルカードの対象に俺を追加した。今は、俺にも『怪力』のバフが乗っているということだ。
きっと氷を持ち上げられるだろう。いや、そうでなくては困る。
「エアル、時間を稼いでくれ」
本当にひどい主だとは思うが、エアルに足止めは任せた。無事に帰ったら、何かお礼をしてあげよう。
俺は一番近くにあって一番大きい氷に手をかけた。これくらい持ち上げてみせる。
と、意気込んだものの、びくともしない。
エアルは大トカゲの妨害をしているようだが、みるみる体力が削れていっている。
バカ真面目に氷を持ち上げようとしても時間の無駄なので諦めることにした。
だが、戦いを諦めたわけではない。大トカゲ、氷、俺の順に並ぶようにし、氷すれすれに、地面に剣を斜めに突き立てた。
あとは、てこの原理だ。俺がこの剣に飛び乗れば、氷が動く。そしてきっと、あの大トカゲめがけて転がって行ってくれる。
「エアル、離れて!」
ガンッ!
鈍い音とともに、剣に飛び乗った足に衝撃が入った。剣は弧のように曲がっている。
このままだと、剣が先に折れかねない。足場が剣で不安定だが、『怪力』のバフがある俺の足で氷を蹴ることにした。
ただ蹴るだけでは効率が悪いので、もう1枚スキルカードを使うことにした。
「スキルカード『二連撃』」
『効果拡大』のおかげで、攻撃が二連撃判定になった。これで、二倍の威力で氷を蹴れる。
ガンッ......ガンッ
3発目、俺が氷に足を付けると同時に、氷がグラッと揺れた。
そして、4発目。俺が蹴っていた所の氷が少し割れて飛び散ると同時に、氷が転がり始めた。方向はまったく問題無い。
敵の大トカゲは、エアルがスキルカード『眠り』の効果を使っているから、移動速度が落ちている。元々のスピードも早くないから、避けるのは無理だろう。
予想通り氷は大トカゲを踏み潰した。壁にぶつかったかと思うと、そのまま道沿いに転がって行ってしまった。
半自動で、道の先にいる魔物を倒すことができるだろう。
エアルに一通り弁明してから、俺達も進むことにした。
まだ初心者で改善点があると思うので、なにかあれば感想で教えていただけると助かります。
もし面白いなと思っていただけたなら、ブックマーク登録、ポイント、リアクションもお願いします。
ぜひ他の作品も読んでみてください。




