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4.健斗とハナ

引き続き、ストーカー女による気持ちの悪い行動などがありますのでご注意下さい。


 

 回想から戻って来たハナが見たのは、ソファで膝を抱えブルブル震えている健斗だった。

 健斗も色々思い出していたのだろう。


「白田杏奈がアン・ホワイトって決まったわけじゃないから、そんなに怯えなくてもいいんじゃないの? ま、私たちが転生してるぐらいだから、無いとは言い切れないけどねー」


「人ごとみたいに言わないでっ! ハナちゃん、酷いよっ」


 ハナは本格的に泣き出した健斗に、ハンカチを投げつけた。


「杏奈とアンって、見た目とか雰囲気とか似てたの?」


「うーん、白田杏奈のことは本当に覚えていないっていうか、無理やり記憶から消したっていうか。でも盗撮されてたとか、髪の毛食べてたとか聞いた時に、それ、僕がハナちゃんにしたかったことじゃんって腹が立って。今思うと、同族嫌悪感をアン・ホワイトに強く感じる!」


「バッカじゃないの!? ど変態!」


 ハナがドン引くと、健斗がエヘヘと照れる。


「私と婚約破棄して、明日の卒業パーティーではアンをエスコートするんでしょ? どうせドレスも強請られたんでしょうが」


「うん……ドレス贈った。僕の瞳の色とアンのハニーブラウンの入ったマーブル模様のドレス。僕とお揃いで。あの時の僕を殴ってやりたい」


 自分の太ももをバンバン叩きながら言う健人に、黒とハニーブラウンのマーブルってどんなセンスだよ、とハナは呆れる。

 婚約者であるマーガレットには一度も贈り物をしたことがないのに、全くバカにした話だ。


 アンは目の敵にしていたマーガレットに嫌がらせをしていると思っていたが、杏奈が転生したのなら本気で健斗であるケントを欲しがっているのかもしれない。


「やっぱりさ、アンと結婚すれば? このまま婚約を続けて、結婚した後に健斗がケントに戻ったとするじゃん? ケントは絶対怒り狂うよね。そうなると本当に面倒だし、当たられるのも腹が立つ。あんた、なに記憶戻っちゃってんのよ」


 吐き捨てるハナに健斗が絶望の表情を浮かべる。

 すでに健斗はアンが杏奈でなかったとしても、あの手の女が怖いのと、せっかく会えたハナを手放す気がないのとで、アンとは全力で距離を置きたくなっていた。


「ハナちゃんは……マーガレットはケントのこと嫌いだった?」


 健斗に聞かれて、ハナはマーガレットの時の記憶を辿る。

 そもそも、マーガレットも結婚と恋愛とを結び付けて考えるタイプでは無かった。

何なら、侯爵夫人の座を脅かさないのなら愛人の一人や二人は認める、という貴族の考え方をしている。

 ただ、何かあれば法律と実家を駆使して戦うつもりはあったが。


「ケント・ゴードンのことは好きではないよね。ただ、好きでも嫌いでもどうでもいいけど、これ以上バカにしたら〆るぞ? って感じかなぁ」


「ハナちゃん、前世で何学部だっけ?」


「ん? 法学部。弁護士希望の」


 思い出したわー、そうだったわー、と健斗は頭を掻きむしる。


「多分、その温度の低いところが、ケントからしたら寂しかったんだよ。ケントは決してマーガレットの見た目が嫌いって訳じゃないみたいだし、何なら逆に慎ましい美人って思ってたし」


「……そうなの? きも」


 すごく嫌そうにハナが言うと、健斗が「ケント、可哀想な子」と居た堪れなそうに項垂れる。


「じゃあ何故、婚約破棄まで言い出したんだろうね。アンとマーガレット、どっちでもいいならマーガレット一択じゃん。実家太いし」


「そこなんだよねー。絶対アンに何か言いくるめられてるんだよ。その何かが思い当たらないんだけどさ」


「んなわけ無いじゃん、どうせ、おっぱいでしょうよ。どこの世界でも、男はみんなおっぱいなんだよ、バカだから」


 口悪く罵るハナに健斗は「僕はハナちゃんのがジャストサイズ!」とフォローを入れる。


 確かに、健斗の性格を考えれば、ケントとは考え方が合わないだろう。健斗は好きな人に意地悪をする思考は無いし、ケントも好きな人にストーカー紛いの感情を持つことはないのだろう。


 ハナは健斗を睨むが、睨まれたケントは何か思いついたのか嬉しそうにしている。


「ハナちゃんは、僕が仕事が続かないフリーターでパチンカスだったから別れたかったんだよね? 今の僕、ケントはきちんとした地位も仕事もあって、賭け事もしない。もう別れる理由無くない?」


「……仕事もして賭け事もしてなくても、相変わらず変な女に絡まれて、私に迷惑かけてんじゃん」


 ニコニコ言う健斗にハナが冷たく言う。


「そうなんだよねー。ケントほど損得勘定で動く人はいないのに、何でアンを選んだんだろう?」


「だから、おっぱ……」


 続けようとしてふと見ると、心配した家令がチラチラと開いたドアから覗いてるのが見えた。

 伯爵令嬢なるもの、おっぱいおっぱい連呼しているのを聞かれては大問題だ。


「そろそろお開きだよ。とりあえず婚約破棄は一旦保留ね。明日は当初の予定通り、アンと卒パに出なさいよ。それと、みんなの前ではケント・ゴードン侯爵令息として振る舞って。もし中身が健斗だとバレたら、即婚約解消よ」


「は、はいっ! ハナちゃんと結婚するために頑張ります!」


 そう言って、健斗はケントとなって侯爵邸に帰って行った。




 

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