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婚約破棄してきた侯爵令息が前世でなかなか別れてくれなかったクズ男だった件  作者: ミズアサギ


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3. ヤバい女

一部、ストーカー女による気持ちの悪い行動がありますのでご注意下さい。

 

 白田杏奈という女は、健斗がバイト先で出会ったフリーターらしい。

 らしいというのは、私は白田杏奈とは面識がなかったからだ。


 居酒屋のバイトで健斗と杏奈は二ヶ月だけ一緒になった。

 杏奈は健斗に一目惚れをした。

 健斗にハナという彼女がいると知った杏奈は、ハナと同じ大学に通っていると嘘をついた。

「ハナは大学の人気者で、きっと私のこと知らないから内緒にしていてね」と言う杏奈の言葉を信じたのか、ハナは健斗から杏奈の話をされることはなかった。


 そして杏奈は、健斗に近づいた。ハナに別れ話をされていると聞くと、親切に相談に乗った。同時に、ハナのことを調べ上げた。

 それが杏奈の手だった。


 ハナと別れたくなくて悩む健斗に、ハナがこんな酷いこと言ってたとか、彼氏がフリーターだと恥ずかしそうにしてたなどと、健斗に嘘を吹き込んだ。

 健斗はショックを受けたものの、振られるのが怖くてハナには直接聞けない。

 隙をついて、杏奈は一気に健斗を奪うつもりだったのだろう。


「これ、ハナからもらったお菓子。健斗くんに渡してって」


 健斗のバイトが休みの日。ハナに内緒で通っているパチンコ屋に現れた杏奈は、打つのに忙しい健斗の隣に座った。


「ハナちゃんが俺に?! 嬉しい。手作りかな? いや、市販でも全然いい。こんなの初めて!」


 喜ぶ健斗に、一瞬複雑な表情を浮かべた杏奈だったが、食べさせてあげると健斗の口にクッキーらしきものを突っ込んだ。


「んっ!? 辛い! からいからいからいー!!」


 吐き出そうとトイレに駆け込む健斗。健斗が戻ると杏奈はいなくなっていた。


「もう、ハナちゃん! 砂糖とタバスコ間違えたでしょ。ドジっ子にも程があるよ!」



 杏奈のことなんかすでに頭にない健斗は、そのままパチンコを打ち、いつも通り負けて、早めにハナのアパートに戻った。


 鍵を開けようとしてボディバッグやポケットを探るが、どこにも鍵は無い。

 あれ? とドアノブを回すと鍵は掛かっていない。

 アパートを出る時、ハナは大学に行くため家を出た後だった。

 鍵を閉め忘れてたんだな、あぶねー、と部屋に入った健斗は、ベッドで毛布を被ったハナが寝ているのに気がついた。


「えっ、ハナちゃん? 大丈夫? お腹痛いの?」


 慌ててベッドに駆け寄る健斗。健斗が毛布を下げようとした途端、


「おかえりぃ! 健斗くんっ」


 ガバッと毛布を剥ぎ捨て、一糸纏わぬ姿の杏奈が現れた。


「えっ!? 白田さん!? な、何してんの、っていうか、何で裸なのっ!」


 そのまま抱きつこうとしてきた杏奈に、健斗は咄嗟に頭から毛布を被せて、そのままベッドに抑えつけた。


「……ぐもっ! 健斗くんったら強引。ねえ、顔を見せて。杏奈、健斗くんとなら……ぐえっ」


 健斗は、毛布から杏奈が出られないように全力で抑えつける。そして健斗は必死に考える。しかし、いくら考えてもこの状況が理解できない。

  理解できないが、毛布から杏奈が出てくるのは非常にまずいということだけは理解できた。


 十分ほど攻防してると、「あれ、健斗帰ってるのー」とハナが呑気な声を上げながら帰ってきた。


「は、ハナちゃん、変態がいるっ! 警察、警察呼んでーーーーー!!」




 そこから、警察が駆けつけ連行されるまでの間、杏奈は一度も毛布から出されることはなかった。

 ハナがちらっと見たのは、毛布の隙間から見えた杏奈のでかいおっぱいだけだった。



 不法侵入とストーカーとして取り調べられた杏奈の供述によって、ハナは色々なことを知ることとなった。

 ハナからと健斗に食べさせたタバスコクッキーは、やはり杏奈が焼いたものだった。ハナの料理下手を知った杏奈は、二人が喧嘩して別れるきっかけになればと思い、作ったものらしい。


 しかし思いのほか辛かったらしく、ボディバッグを放り投げてトイレに走った健斗。

  チャンスとばかりにボディバッグを漁ると鍵が出てきたので、バイト帰りの尾行により突き止めたアパートに忍び込んだ、と杏奈は供述した。既成事実を作るのが目的だった、などと供述していたらしい。


 自分の知らないうちにストーカーされ、個人情報を抜かれ、プライベートを暴かれていたと知り、杏奈の好意にすら気づいていなかった健斗はショックを受けた。

 その他にも、杏奈は盗撮した健斗の写真を肌身離さず持っていたり、SNSに健斗との妄想日記を投稿して拡散していた。


 髪の毛を食べた、持ち物にキスをした……また、とても話せないそれ以上の内容を警察から聞かされた健斗は、その場で吐いた。


 健斗はしばらく事情聴取のために杏奈が留置されている警察署に通っていたが、帰ってくる度にゲッソリやつれていった。

 そんな健斗を見て可哀想だとは思ったが、ハナは健斗ごと変な女との縁を切りたいとも強く願った。

 何なら、その女と健斗がくっついてくれたら丸く収まるのでは、とまで考えもした。

 結局、ハナは杏奈の顔を一度も見ることなく、不法侵入は杏奈の親からの謝罪と慰謝料と引越し代を受け取ることで、被害届を取り下げたのだった。



 警察沙汰にまでなったこの出来事は、ハナに健斗との別れを強く決心させた。

 

お読み下さり、ありがとうございます。

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