表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/6

3. ヤバい女

一部、ストーカー女による気持ちの悪い行動がありますのでご注意下さい。

 

 白田杏奈という女は、健斗が何回目かのバイト先で出会ったフリーターだったらしい。

 らしいというのは、私は白田杏奈とは面識が無い。無かったのだ。


 居酒屋のバイトで健斗と杏奈は2ヶ月だけ一緒になった。

 杏奈は健斗に一目惚れした。

 健斗にハナという彼女がいると知った杏奈は、ハナとは接点は少ないが大学が一緒だと嘘をついた。

 ハナは人気者で私のこと知らないかもしれないから内緒にしていてね、と言う杏奈の言葉を信じたのか、杏奈に興味が無かったのか、健斗から杏奈のことを聞かれることは無かった。


 杏奈は、健斗がハナと別れ話をされて落ち込んでいる時に、親切を装い近付いた。そして健斗だけならず、ハナのことも調べ上げた。


 それが杏奈の手だった。


 ハナと別れたくない健斗に、ハナが大学でこんな酷いこと言ってたとか、彼氏がフリーターだと恥ずかしそうにしてた等と、健斗に吹き込んだ。

  健斗はショックを受けたものの、ハナには振られるのが怖くて直接聞けない。

 この隙をついて、杏奈は一気に健斗を奪うつもりだったのだろう。


「これ、ハナからもらったお菓子。健斗くんに渡してって」


 なぜ知っているのか、バイトが休みの日にハナに黙って通っているパチンコ屋に現れた杏奈は、打つのに忙しい健斗の隣に座った。


「ハナちゃんが?! 嬉しいっ。手作りかな? いや、市販でも全然いい! こんなの初めてっ」


 喜ぶ健斗に一瞬複雑な表情を浮かべた杏奈だったが、食べさせてあげると健斗の口にクッキーらしきものを1枚突っ込んだ。


「んっ!? 辛い! からいからいからいー!!」


 吐き出そうとトイレに駆け込む健斗。健斗が戻ると杏奈はいなくなっていた。


「もう、ハナちゃん! お砂糖とタバスコ間違えたでしょ。おっちょこにも程があるよ!」


 杏奈のことなんか既に頭に無い健斗は、そのままパチンコを打ち、いつも通り負け、早めにハナのアパートに戻った。


 鍵を開けようとしてボディバッグやポケットを探るが、どこにも鍵は無い。

 あれ? とドアノブを回すと鍵が掛かっていない。

 アパートを出る時、ハナは大学に行くため家を出た後だった。

 鍵を閉め忘れてたんだな、あぶねー、と部屋に入った健斗は、ベッドで毛布を被ったハナが寝ているのに気がついた。


「えっ、ハナちゃん? 大丈夫? お腹痛いの?」


 慌ててベッドに駆け寄る健斗。健斗が毛布を下げようとした途端、


「おかえりぃ! 健斗くんっ」


 ガバッと毛布を剥ぎ捨て、一糸纏わぬ姿の杏奈が現れた。


「えっ!? 白田さん!? な、何してんの、っていうか、何で裸なのっ!」


 そのまま抱きつこうとしてきた杏奈に、咄嗟にケントは頭から毛布を被せて、そのままベッドに抑えつけた。


「……ぐもっ! 健斗くんったら強引。ねえ、顔を見せて。杏奈、健斗くんとなら……ぐえっ」


 健斗は毛布から杏奈が出て来ないように、全力で抑えつける。健斗は必死に考える。考えてもこの状況が理解できない。

  理解できないが、毛布から杏奈が出て来るのは非常にまずいということは理解できた。


 5分ほど攻防してると、あれっ、健斗帰ってるのーと呑気にハナが帰ってきた。


「は、ハナちゃん、変態がいるっ! 警察、警察呼んでーーーーー!!」


 そこから警察が駆けつけ連行されるまでの間、杏奈は一度も毛布から出されることは無かった。

 ハナがちらっと見たのは、毛布の隙間から見えた杏奈のでかいおっぱいだけだった。



 不法侵入とストーカーとして警察に取り調べられた杏奈の供述によって、ハナは色々なことを知ることとなった。

 ハナからと健斗に食べさせたクッキーは杏奈が焼いたタバスコクッキーで、ハナの料理下手を知って二人が喧嘩すればいいと思って作ったものらしい。

 しかし思いのほか辛かったらしく、ボディーバッグを放り投げてトイレに走った健斗。

  チャンスとばかりにボディーバッグを漁ると鍵が出てきたため、既成事実を作ろうと何度もバイト帰りに尾行して突き止めたアパートに忍び込んだ、と杏奈は供述した。


 自分の知らないうちにストーカーされ、個人情報を抜かれ、プライベートを暴かれていたと知り、杏奈からの好意にすら気付かなかった健斗は驚愕した。

 その他にも、杏奈は盗撮した健斗の写真を肌身離さず持っていたり、SNSに健斗との妄想日記を投稿して拡散していた。


 髪の毛を食べた、持ち物にキスをした、またとても話せないそれ以上の内容を警察から聞かされた健斗は、その場で吐いたらしい。


 健斗はしばらく事情聴取のために杏奈が留置されている警察署に通っていたが、帰ってくる度にゲッソリやつれていった。


 そんな健斗を見て可哀想だと思ったが、ハナは健斗ごと変な女との縁を切りたいと切に願った。

  何なら、その女と健斗がくっついてくれたら丸く収まるのでは? などと考えもした。

 結局、ハナは杏奈の顔を一度も見ることなく、不法侵入は杏奈の親からの謝罪と慰謝料と引越し代を貰うことで、被害届を取り下げたのだった。



 警察沙汰にまでなったこの出来事が、健斗との別れへの強い決定打となった。

 

お読み下さり、ありがとうございます。

ブックマークやいいね、評価をして頂けたらありがたいです!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ