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ジュン、ルイーザ、ウェンディの3人は東城高校にそびえる塔のふもとに到着していた。地上からではその全貌をつかみきれないほどの高さだ。この塔の最上部に、ローデンがいるという。そして、その入口を開く鍵となるカードキーを、ジュンたちは手にしている。
「さて、このカードで中に入れるみたいだけど……」
「塔の中って、一体どんな感じになってるんだろう?」
「普通に考えたら、罠だらけでしょうね」
塔の内部が簡単に通り抜けられるはずがない。きっと配下の者たちが待ち受け、何らかの仕掛けも用意されているだろう。
「……帰るか」
ジュンがそっと後ろを振り返る。だが、その背中をルイーザが即座に掴み、無理やり元の方向に向き直させた。
「ジュン、ちょっと待って!」
「いやいや、ルイーザ、冗談だって。ジョークだよ」
「ほんとに帰ろうとしてなかった!?」
「してない!絶対してないよ!」
「その必死な否定が逆に怪しいってば!」
2人のやり取りを横で見ていたウェンディは、ふっと肩の力を抜いた。
「やれやれ……こんな漫才みたいなことをやってるんだから、大丈夫そうね」
この2人がこんな調子なら、きっと何とかなる――そんな確信が、ウェンディにはあった。まだ一緒にいる時間は短いが、このやり方にも少しずつ慣れてきたのだろう。
「ほら、2人とも、バカやってないでそろそろ行くよ」
「そうだな。今回は絶対に負けられない戦いだ。気を引き締めていこう」
「そうね。ジュン、ウェンディ、絶対に勝つわよ!」
「ええ。回復役は任せて。最後まで付き合うわ」
意気込みを新たに、3人は塔の入口へと向かおうとした。その時だった。
「おーい!」
誰かがジュンたちの方へ駆け寄ってくる。振り向くと、見知った顔――ヒロとケンの2人だった。
「ヒロ、ケンさん!どうしてここに?」
「君たちが塔に向かったって聞いて追いかけてきたんだ。水くさいな、黙って行くなんて」
「ごめんなさい。塔に入る手段が、このカードキーしかなくて……」
「それは別にいいんだよ。ただ、監獄のボスを倒してヘルプを街に呼び込んだのは君たちだ。それに、この街で今、ローデンに立ち向かえる可能性があるのは君たちしかいないだろう。君たちが行くのが一番妥当だ。ただ、応援くらいさせてくれよ」
ケンはジュンたちに、見た目はお守りのような防具を手渡した。
「セト騎士団長からだって。これを持っていると、防御力が上がるらしいよ」
「セトさん、無事だったの?」
「意識は取り戻したよ。でも、残念ながら戦える状態じゃない。一部の騎士団は、騎士団長をリフィリアに撤退させるために戻ることになる」
ケンの言葉に一瞬沈黙が流れるが、ヒロが続けた。
「けど、俺たちは残って最後まで戦うよ。ジュンたちに任せっきりってわけにはいかないからね。外の戦いは任せて、君たちは思い切り戦ってきてくれ」
2人の言葉に、ジュンたちは胸の奥が熱くなるのを感じた。
「ありがとう。必ず勝って戻るよ」
「ああ。俺たちは応援しかできないのが悔しいけど、下のことは任せな」
「うん、行ってくる」
ジュンはヒロとケンとグータッチで互いの健闘を誓い合った。そして、仲間たちに振り返って言った。
「2人とも、行こう。突入だ!」




