7-12
倒れたのはセトだった。トーラはセトの必殺技を拳で破壊しただけでなく、彼自身にも致命的なダメージを与えた。観戦していた一同はその光景に息を呑んだ。
「だ、団長!」
「ま、まさか・・・」
セトはまだ息があるものの、命が危ういほどの重傷を負っていた。近くにいた衛生兵がすぐに治療に取り掛かる。
「安心しな、せめてもの情けだ。殺しちゃいねえよ。ただし、二度と戦場に立つことはないだろうがな」
トーラの言葉が重く響く。周囲の兵士たちは絶望の色を浮かべた。セトの身体は腕を中心に酷く損傷しており、トーラから受けた攻撃だけでなく、自身の無理な必殺技の反動も原因だった。衛生兵もその様子を見て、彼が再び剣を握れる日は来ないだろうと判断する。
「・・・こんな、ことが・・・」
兵士たちは一様に顔を曇らせた。リフィリア王国最強のセトが倒された以上、目の前の強敵トーラに抗う術はない。逃げ出したい衝動が全員の胸をよぎる。だが、次の瞬間――
パンッ――
銃声が響き、銃弾がトーラの腕を貫いた。
「ちっ・・・貫通弾か・・・」
傷は軽いものだったが、トーラの表情が険しくなる。誰も予測できなかった攻撃――その気配すら感知できなかったのだ。彼の目が銃弾が飛んできた方向を見据える。
「・・・まさか、こんな雑魚ども以外にこの俺に傷を負わせる者がいるとはな」
トーラの瞳に一瞬、興味が宿る。
「まあいい。その者が成長すれば、俺を満足させる相手になるかもしれないな。待つのも悪くねぇ」
トーラはそう呟き、煙の中から一枚のカードを取り出す。
「この俺に一矢報いた者よ。その度胸を褒めて、今回は見逃してやる。ただし、次はないと思え。もし本気でこの街とリフィリア王国を守りたいなら、このカードを使うんだな」
トーラはカードを銃弾が飛んできた方へ投げつける。それが届くと確認すると、彼は背を向けた。
「次に会うときが楽しみだ。せいぜい生き延びて俺を楽しませてくれよ」
そう言い残し、トーラはその場を去っていく。彼の不敵な笑みと共に漂う威圧感が消えたとき、兵士たちはようやく息を吐き出した。この場は何とか乗り切ったといえるかもしれない。しかし、それは勝利ではない。ただ「生かされた」だけ――その実感が胸に重くのしかかるのだった。




