6-12
ジュンはファランに向けて剣を振るうが、やはりその得意の素早さで回避されてしまう。
「馬鹿が。そんな攻撃が俺には通じないって、まだ分からないのか?」
ファランは嘲笑しながら言い放つ。
「それでも、一方的にやられる訳にはいかないからね」とジュンは応じるが、その言葉には焦りが滲んでいた。
「無駄な動きをするくらいなら、何もしない方がまだマシだぜ?」
ファランは余裕の態度を崩さず、再びジュンにパンチを繰り出す。ジュンの攻撃は当たらず、一方的にファランの攻撃だけが命中する。次第にジュンの体力が削られていくのが目に見えて分かる。
ジュンの体には激しいダメージが蓄積していた。もしもレベルバッジが無く、ただの人間だったなら、間違いなく命を落としていただろう。それほどの攻撃だった。
「これが戦いか…」
ジュンの頭に様々な思いが駆け巡る。生き残りを懸けた戦い。だが、目の前の相手は人間。自分が彼を倒すことで命を奪ってしまうかもしれない――そんな思いがジュンの剣を重くし、動きを鈍らせていた。
「ジュン!」
遠くからルイーザの叫ぶ声が響いた。
「!!!」
ジュンはその声にハッとする。そして、自分の心の弱さを悟った。そうだ、自分はこの世界で生きると決めたのだ。ウルフと出会い、覚悟を決めたではないか。たとえ人を傷つける結果になっても、自分が生き延びるためなら仕方ないこともある。そう思い直した瞬間、ジュンの中で迷いが消え去った。
彼はルイーザに向かって叫ぶ。
「ルイーザ!」
「何?」
「ありがとう。この冒険に誘ってくれて」
「ジュン…?」
その言葉にルイーザは一瞬驚いたような顔をした。ジュンは続ける。
「ウルフが生きる覚悟を教えてくれた。でも、一緒に『始まりの異界』を目指そうと誘ってくれたのは君だ。君のおかげで、僕はこの旅を苦だと思わなくなったよ。君がいてくれたから、お互いに支え合いながら進めてきた。ありがとう、本当に。これからもよろしくね!」
その言葉に、ルイーザの目に涙が浮かぶ。
「うん、こちらこそ。これからもよろしく!」
彼女は力強く返した。
だが、その時。ファランが冷笑を浮かべながらジュンの目の前に立ちはだかった。
「感動の再会劇は終わりか?残念だったな。お前たちの旅はここで終わるんだよ。死ぬ覚悟をしておけ」
ジュンはファランの冷笑を正面から見つめ、静かに答えた。
「いや、僕はこの瞬間、生きる覚悟を決めたよ」
「は?」
ファランの表情が一瞬だけ歪む。
「ルイーザ探検隊は『始まりの異界』を見つけるまで諦めない。この場を生き延びてみせる!」
その言葉と共に、ジュンの手が不思議な光を帯び始める。そして、強く願った。
「頼む、うまくいってくれ…!」
ジュンの手には、見慣れた拳銃が出現していた。
「なっ、拳銃だと?だが…そんな物を出したところで扱えるのか?」
ファランが挑発する間もなく、ジュンはすぐに引き金を引いた。
ズドン!
一発の銃声が響く。
「き、貴様…!」
ファランはその一撃を受け、驚愕の表情を見せる。
ジュンは微笑みながら叫んだ。
「ルイーザ、ウェンディ!反撃開始だ!」
「うん!」
「ええ!」
ルイーザとウェンディの声が力強く響き渡った。反撃が、ついに始まる。




