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6-3

次の日の朝は早かった。牢屋の鍵が開く音と共に、甲高い笛の音が響き渡る。

「おい、起きろ!さっさと出るんだ!」

看守たちは容赦なくジュンたちを叩き起こし、強制的に外へ連れ出した。


簡素な缶詰の朝食を済ませると、労働が始まる。ジュンたちが命じられたのは、謎の黒い荷物をひたすら運ぶという単純作業。しかも、それが夜遅くまで延々と続くのだ。


「これはひどいな……。僕のいた世界なら、完全にブラック企業ってやつだよ」

ジュンはそうつぶやきながら、見張り役の怠惰さに不満を募らせる。彼らは特に仕事をするわけでもなく、ただ周囲を見回しているだけだ。


「ホントよね。自分たちは何もしないくせに、他人にはこれだけの苦労を押し付けるなんて」

ルイーザもジュンに同意し、不満を漏らす。


とはいえ、ここ数日で得た情報から、脱出の糸口が見えてきた。施設の警備体制はそれほど厳重ではなく、隙をつけば脱出は可能そうだ。ただし問題もあった――現時点ではルイーザだけが戦闘手段を持っており、ジュンとウェンディは何もできない。


「今のところ、僕らに戦う武器がないんだ。そこをなんとかしないと……」

ジュンは悔しそうに言う。


「でも、このままじゃいけないっていう気持ちは大事よ。どうにかして状況を変えていきましょう」

ウェンディは前向きに応じるが、その疲れ切った表情からは不安もにじみ出ていた。


ジュンはニヤリと笑い、隠していた紙を取り出した。


「とりあえず、これを見てよ。僕なりに建物の構造を把握してみたんだ」


紙には施設内の見取り図が手書きで描かれており、捕らわれている人々のいる場所や通路が詳細に示されていた。


「なるほどね!これを使って捕まってる人たちを全員助けて、力を合わせて反撃するつもりね!」

ルイーザはその意図をすぐに察する。


「ピンポン、正解!幸いにもこの施設、見張りの数は多くないから、数の力で制圧できる可能性がある」

ジュンの言葉にウェンディもうなずきつつ、心配そうな表情を浮かべる。


「けど、そのためには武器が必要よね……武器の場所が分からないままじゃ、計画も進められないわ」


「そこはこれから探すよ。地図は脱出ルートを確保するだけじゃなく、武器の隠し場所を特定するのにも役立てるつもりだ」


ウェンディは感心したようにジュンを見つめた。

「いつの間にこんなものを作ったの?やっぱり、ただの旅人じゃないのね」


「冒険する時もまずは地形や状況を把握するのが基本さ。これくらいは当然だよ」

ジュンはさらりと言うが、確かにその観察眼と行動力には驚かされるものがある。


「短い間にここまで準備してたなんて、本当に探検隊の経験が生きてるわね」

ウェンディの言葉に、ジュンは笑みを浮かべる。


「まあ、僕たちの探検隊はまだ結成したばかりだけどね。それに、こういう面倒な状況に巻き込まれることばかりだよ」

ルイーザも笑いながら続ける。


ジュンとルイーザのこれまでの冒険談を聞き、ウェンディは思う――この二人は面倒ごとに巻き込まれる体質なのかもしれない。しかし、それを嘆くどころか、むしろ自ら進んで問題に立ち向かっている。そして、その選択を決して後悔しない強さを持っている。


「この二人なら、きっとやってくれる気がする……」

そう確信しながら、ウェンディも脱出計画に向けて心を固めるのだった。

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