エピローグ
昔々、王国に竜が現れました。
竜はとても暴れん坊で、春を飲み込んでしまいました。
春がなくなって、皆は誰もが困り果て、続く寒さに凍えていました。しかし、そこに一人の騎士が立ち上がったのです。
騎士は『聖なる乙女』に助けを求め、彼女から宝剣を借りると、その剣で竜を倒しました。
こうして国に春が戻り、平和が戻ったのでした。
それから長い時が過ぎて、なんと竜はよみがえってしまいました。
竜は再び春を奪おうと、春を招く祭りを邪魔し、人々は恐ろしさに震えました。けれどもまた、一人の騎士が立ち上がったのです。
かつての騎士の遺志を継ぎ、勇気を持った騎士は皆を救うため、竜に立ち向かいました。そこに『聖なる乙女』が現れ、今度は共に戦ってくれました。
そして二人の力が合わさって、ついには竜を倒したのです。
それ以来、春は二度と失われることなく季節を廻り、人々は平和の中で幸せに暮らしました。
「——めでたし、めでたし」
本が静かに閉じられると、少年は閉じられた本の表紙をじっと見つめる。
「ねえ、おかあさん」
「なぁに?」
「ぼくもその本のきしさまみたいになれる?」
問われた母親は少しだけ目を開いて、それからふっと優しく微笑む。
「ええ、もちろん」
そして立ち上がると、ベッドに横たわる息子の額にキスをする。
「そのためにはいっぱい寝て、食べて、大きくならないとね」
「うん! ぼく、おおきくなってきしになる! そしてくにをまもるんだ!」
澄んだ瞳を輝かせて、少年は抱いた夢に心を躍らせる。
「さぁ、もう寝なさい」
「うん。おやすみなさい、おかあさん」
「ええ、おやすみなさい」
部屋の明かりが落とされ、すぐに少年は眠りに落ちていく。
今日も国のどこかで『春告げの騎士』のお話は語り継がれていた。
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