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エピローグ

「――と、こんな判断をしてきましたけど、これで良かったですか?」


 最後の仕事を終えて、召喚の魔法陣を通じて帰路に着く。

 帰路といっても、まず私が訪れるのは女神ミエリクトリの住む小さな庭だ。

 初めて女神ミエリクトリと出会った場所である。


 結局、当初の約束を撤回し、召喚の魔法陣はそのままにしてきてしまった。

 私の判断がどうあれ、聖女の召喚は最後にしてくれ、と取り付けてあったのだが、これで大丈夫だろうか。

 少しだけ心配になって確認すると、女神ミエリクトリは悪戯っぽい微笑みを浮かべる。

 

『召喚の条件は変えたから、聖女が召喚されるのは貴女で最後のままよ。『つりあい』が大事なのでしょう?』


 王とつりあうのは、やはり王だ。

 勇者とつりあうのも、やはり勇者である。

 そして、聖女を呼ぶために必要になるのもまた聖女だ。

 

 あの魔法陣は本当に、実質役に立たない召喚の魔法陣となった。

 

『気になることがあるとしたら、あれを利用すれば逆召喚ができそうなことね』


「それは元からでは? あれ、召喚の魔法陣って呼ばれてましたけど、世界同士を繋ぐ扉のようなものですよね?」

 

 実は、召喚の魔法陣と呼ぶのは正しくない。

 召喚しかできない魔法陣であれば、今度は送還の魔法陣が必要になってくるのだ。

 けれど私は、あの召喚の魔法陣を使ってここへと戻って来た。

 つまり、あの魔法陣は扉の役目を果たしているだけで、入り口専用ではないのだ。

 

『……では、異世界へ聖女として召喚されろだなんて、私の無茶なお願いを聞いてくれた貴女に、何かお礼をしたいと思います』


「結構引っ掻き回して楽しめましたし、わたしが召喚された元の時間、元の場所へ返してくれるだけでいいです」


『あの神官のことを気にしていたような気がするのだけど……』


「住む世界の違う男の人ですよ」


 ちょっと気になってはいるが、思い出にするのが正しい判断だろう。

 というよりも、彼は聖女に対して盲目すぎて少し怖い。

 少しでも理想の聖女から外れた行いをしようものならば、彼が潰してきた者たちと同じように私まで処分されそうな気がする。

 

『そういえば、別れ際に名前すら教えていませんでしたね。今さら名前で呼ばれるのも妙な気分だから、と断っていましたが……』


「名前を教えたら、なんとなく付いてきそうな気がして怖くて……」


 結構好きだが、同じぐらい怖いのがフェリクスに対する私の正直な感想だ。

 女神からの仕事の終了と同時に別れるのが正しい判断だっただろう。

 

 ……でも、そうだな?

 

 願いがあるとすれば、彼についてだろうか。

 

「やっぱりご褒美いただけますか? 物じゃなくて、ですけど」


 時々でいいから、フェリクスの様子を気にかけてやってくれ、と女神ミエリクトリに願う。

 真面目で正直な青年だが、時折やり過ぎるきらいのある青年だ。

 やり過ぎて要らぬ恨みなど買わないよう、道を誤りそうになったら止めてほしい。


 そう願った私に、女神は慈愛に満ちた微笑を浮かべた。

 心に留めておこう、と。

 

 

 

 

 

 

 ――後日、私の願いを曲解した女神の策略により、ちょっと困った大神官が我が家の隣へと引っ越してきた。

 解せぬ。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 凄いな。ハッピーエンドだし。 [一言] 天に使わされる者、無垢なイメージがあるが。 勝手なイメージだという事なのだな。
[一言] 面白かったです!
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