第101話 レヴィア
―――魔道技術祭決勝戦開始2時間前 ワイバーン内の一室にて
「……へぇ、彼らが今大会のダークホースねぇ」
「見た所、それなりの潜在能力を持った者が揃っているようです」
「とは言っても俺たちレヴィアには到底及ばないがな」
「どうでしょう、もしかしたら……なんてこともあり得ますよ?」
「おいおいベル、冗談にしてはちと苦しいぞ?」
「いえ……私は決して冗談で言ったつもりでは……」
「まぁ、どっちにせよわたしたちに負けは許されないことは事実よ。今宵はあの方も我々の一戦を見るとのことですから」
「……ほぅ、そりゃ下手できねぇな」
特別施設複合型コロシアム、ワイバーンのとある一室にその三人の戦士はいた。
魔技祭決勝を控え、待機する3年A組こと神剣十傑と呼ばれる十人の聖剣使いたち。そのメンバーの中で三人の主要格の戦士が決勝の相手となる1年A組について議論をしている最中だった。
「にしても相手が1年とはな……アロナードも廃れたもんだ。余裕だな」
「そうかな? あまり油断はできないみたいだぞ」
そう言って部屋へと入って来るこの若い男こそこのレヴィアのリーダーであり、アロナード学園生徒会長でもあるルーカス・アルモンドだ。
「お、ルーカス会長じゃないっすか。仕事は終わったんですかい?」
「その呼び名はやめてくれバトス。普通にルーカスでいい」
「へいへい」
このお調子者でこれでもかというくらい巻いたリーゼントが特徴のこの男の名はバトス。レヴィアの中ではムードメーカー的立ち位置であるがたまに裏目に出て喧嘩沙汰になることもしばしば。
得意戦法は持ち前の俊敏性と判断力を活かした一撃離脱戦法。使用武器は主に短剣を使い、所有聖剣はアゾットと呼ばれる短剣だ。
「お疲れ様です、ルーカス」
「ありがとうベル。試合までまだ2時間あるのにもう戦闘用の鎧を着ているのか」
「はい、なのでいつでも戦闘可能です。この多くの人で入り混じった場では何か起こるか分かりませんからね」
「はぁ、まったくせっかちだなベルは……そんなこと絶対に起きないって。俺たちに喧嘩売るとか自殺行為だぞ」
「いやそうとも限らないぞバトス。確かにこの世の中、いつどこで何が起こるか分からない。念には念をの精神は見習うべきだ」
「けっ、ルーカスもベルも用心深いこと」
この大柄でスキンヘッドな男の名はベルニア・アクティズム。大柄な身体をフルに活かした豪快な戦闘スタイルは対峙する相手に多大なる威圧感を与える。
大きな身体に似合わず性格は温厚で仲間想いなところが強く、チーム内での信頼もリーダーであるルーカスからの信頼もかなり厚い。だがその屈強そうな見た目から他人、特に小さい子からはまるでオーガやギガンテスを見るような目で見られ、怖がられてしまうということがあり、子ども好きな本人には割と真面目な悩みとして心の中にあるようだ。
使用武器は主に大剣で所有聖剣はデュランダルだ。
「ルーカスはもう見たの? 彼らの試合」
「ああ、この学園に入り立ての生徒たちにしては中々の腕だったよ。準決勝はとくにすごかったね」
「準決勝ってことはお前まさか観客席にいたのか?」
「うん、そうだけど……」
ルーカスがそういうとバトスは深く溜息を吐き、
「いや……ルーカスはそういう所は用心深くないんだな。関係者に見つかりでもしたらどうする? 盟約破りになるぞ」
「ま、まぁさすがに俺もそれは理解しているさ。第5位階級の迷彩魔術を使って見ていたから相当な腕のキャスターでない限り見られていないと思うよ」
「たかだが一般生徒の試合を見るだけで第5位階魔術を使うなんて……どうかしてるぜ」
「そうかな? でも中々に見どころのある一戦だったよ。いくら俺たちでも気を抜けないと思ったね」
「ふーん……ルーカスにそこまで言わせるとはねぇ……」
いまいちピンとこないバトスは首を傾げる。
「でもわたしはルーカスと同じ意見かな。映像で見ても彼らは中々の腕よ」
「おいおいメサイアまでそういうこと言うのかよ。もう少し俺たちの立場を自覚してだな……」
「自覚するのはあなたの方よバトス。自らの力を過信した先に光はない。身を滅ぼすだけよ」
「ちっ、どいつもこいつも軟弱者ばかりで困るぜまったく」
この四人の中で唯一の女性であるメサイアはレヴィアに三人いる女戦士の一人である。
本名はメサイア・イバン・デスペラード。槍道一筋を教訓に掲げる槍使いの名手でその洗練された槍さばきは敵を素早く蹂躙していく。また器用な立ち回りも得意とすることから前衛、後衛ともに兼任することができるオールラウンドな戦士でその技巧さはルーカスも一目置いているくらいだ。
そんな万能な彼女も最近悩みが出来たらしくその内容は元々大きかった胸がさらに成長し、ブラジャーのサイズが合わなくなったという女性特有の悩み。
もちろんこのことは誰にも公言することはなく、自分の中にある密かな悩みとしてあるようだ。
主要武器はもちろん槍で、所有聖剣はトライデント。聖剣というよりかは聖槍と言った方が正しいだろう。
「……あ、そういえば他の皆はどこに行ったんだ? 三人以外見当たらないが……」
ルーカスがこう言うと三人は、
「あいつらは知らん。またどっかで狩りでもやってんじゃね?」
「ガルスとベンジャミンは新しいビジネスを思いついたとか何とかでどこかへ……」
「アイリーンとセナも自分のことで忙しくてこっちに来れるのは試合前ギリギリになるって言ってたわ」
そう聞くとルーカスは頭を掻きながら、
「そ、そうか……相変わらず自由だな」
「まったくです」
「俺もそれには同感だな。自分勝手な奴らばっかりだ」
チームワークは決してないとはいえ、個々の自由の方が優先されるのはレヴィアではお決まりだ。
十人もいればそうなるのも仕方のないことなのだろう。
「……で、残り二人は相変わらずなのか?」
「ええ、ダークインサイドは趣味の墓巡りをレッドボーンは薬草集めで忙しいとのことです」
「はぁ……あの二人は扱い自体難しいからな。ホント骨が折れる」
「俺もできる限り仕事以外の関係はごめんだね」
「わたしもあの二人に関してはちょっと……」
不評の二人、彼らもまた聖剣使いで相当な実力を持ったレヴィアの一員。
そんな破格な力を持つ者たちを束ねるルーカスにはやはりそれなりのストレスが溜まっていくのは必然であった。
「ま、とりあえずメンバーのことについてはいいとして。お前たち三人に今すぐ伝えなければならない事項がある。例の一件だ」
「例の一件……? お前まさか……」
三人の驚く顔を見ると、ルーカスは一瞬間を置いてこう告げる。
「……ああ、見つかったよ。この世を支配できるとも言われた最恐で最悪の”ブツ”がね」




