12-7話 実にうまくやったもんだ、立花備
ヤマダは図書室の担任教諭に複製を作ってもらった図書準備室の、出来立てで金色に光っている鍵を鍵穴に挿して回した。鎌状の錠は横にスライドする戸に取りつけられていて、内側からでも外側からでも開閉が可能なように作られていた。
年に何度か、図書室に常備するほどではないが廃棄するには資料的価値が高くてもったいない本や、校内で作られる学校新聞・卒業アルバムなどを収容するためだけに開けられるようなその部屋は、ソファや机、いささか古いテレビとその録画セット、折りたたまれて窓際に立てかけてある数脚のパイプ椅子など、あらゆるものに灰白色のほこりが溜まり、3月のくすんだ光がその部屋を灰白色に照らしていた。
ヤマダは入って右の壁、図書室との境側に貼ってあった一枚の写真に興味を持った。それはデジカメの写真を、ちょっといい紙にプリントアウトしたもので、複数の生徒たちが様々な服装をしている集合写真だった。
紙を裏返すと、そこには「20○○年11月、学園祭、白雪姫と七人の侍」と、ていねいな手書きの字で書いてあった。
「ああ、これは白雪姫が鳴海和可子、王子が立花備、悪いお后が藤堂明音と松川志展のふたりひと役、物語部の5人と関谷久志・紺野陽が森の中のドワーフ役だったな」と、ヤマダは写真を見て微笑んだ。
「実にうまくやったもんだ、立花備。多分それが君の望んでいた結末だった。サマラの町で会ったみんなは死神に殺されず、マルウィヤ・ミナレット、螺旋の塔を登った」
ヤマダは写真を持って部屋を出てドアを閉めると、自分が持っていたふたつの鍵がすでについているキーホルダーに、金色の鍵をつけくわえ、ふたたびドアを開けた。
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「やあ、どうしたのヤマダ。珍しいねえ、部室に来るなんて。おまけにまだ春休みなのに」
ヘイゼル色の髪と瞳の、高校生にしてはかなり小さめの女子は、ソファで読んでいた本、小栗風葉の『青春』をひざに置いて、ヤマダにそう言った。
「また新しい茶番劇のはじまりね」と、紫色の髪と瞳の女子は、高そうなカップで安そうなティーパックの紅茶を飲みながら言った。
「で、今年はどんな新入生が入るんですか」と、桔黄色の髪と金色の瞳の女子はヤマダに聞いた。
図書準備室ではなくすでに物語部になっているその部屋は、新しい鍵と同じぐらい金色に輝いていた。
「とびっきりの3人だったな。楽しみにしていいよ」
ヤマダはそう言いながら、入って左側に置いてある鍵つきロッカーを開け、一冊の卒業アルバムを取り出すと、そこに写真をはさんだ。
その一冊はまだかすかに、消臭剤、人工のバラの匂いがしていた。




