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物語部員の生活とその意見  作者: るきのまき
5・立花備の物語・その2
31/86

5-3話 とりあえずあちらの物語部員と戦ってみることにする

「それではお手数ですが、ステージを変えさせていただきます。部室のみなさんもお呼びしますので、心置きなく戦ってください」と、生徒会長は指を鳴らすと、世界は今にも雷雨になりそうな黒雲の下、不毛の赤茶けた山と荒れ地が広がるバトルステージになった。

 あちらの物語部はすでに戦闘服に着替えていた。

 あちらの市川醍醐(女子)は動きやすそうなダークグレイのレスリングみたいな服で打撃の直接攻撃系、あちらの年野夜見先輩(男子)はビスク色の重そうな鎧で大刀を持った剣技系、あちらの樋浦遊久先輩(男子)はゴーストホワイト色の防具に軽そうな盾を持った防御系、あちらの樋浦清(性別不明)はミントクリーム色の魔法少女みたいな格好で弓を持った遠・中距離攻撃系、残りのふたりのうちあちらの千鳥紋先輩(男子)が召喚魔法攻撃系で、もうひとりのあちらのおれ(女子)が回復系か。

 物語部のみんなは机と椅子とソファのまま転送されたが、どうやらワカクマは来れないらしい。

「…というわけで、どういうわけかおれにもわからないが、戦わないといけないらしい」と、おれは説明した。

「楽しそうだね! 死ぬのは嫌だけど、多分物語の中だから問題ないよね」と樋浦清は言い、「みんながそれでいいなら」と年野夜見先輩は言い、「茶番だわ」と千鳥紋先輩は言った。

「ところで、宝の地図というのは何なんです?」と、市川醍醐は当然聞いた。

「ああ、それか」と、樋浦遊久先輩は言って、ジャンパスカートの胸のポケットから、四つ折りの紙を出した。それは広げると10×15センチほどの大きさの、ほどほどの硬さと古さを感じさせる紙で、「宝図」と右上に、「N7」と左下に書いてある以外は、駅を中心にして半径2キロほどのふつうの地図だった。

「なるほど、これではどこに宝があるかさっぱりです」と、おれは言った。

「昼休みに部室に来たら、机の上にこれが置かれていた。生徒会長の話と関係あるかと思って持ってたんだ、というか思い出したよ」

「だいたい遊久先輩は、だけじゃなくてうちの部員はみんなあとで大事なこと思い出すんですね」

「そろそろ話はまとまったか」と、あちらの物語部の千鳥紋先輩は言った。

「この決戦にはわれら物語部一族の存亡がかかっている。しかし、もし戦いを望まないならその地図を素直に渡すがよい。ただし、元の世界には帰れない。この煉獄の世界で永遠にさまようことになるのだ」

「宝とか面白そうだし、なんか言うこと聞くのが嫌なので戦うことにしました」と、おれは答えた。

 さっそくおれたちも装備をすることにした。こちらは基本的に髪の毛に合わせた色の装備で、おれは打撃・直接攻撃系、遊久先輩は剣技系でみんなががっかりするビキニアーマー、市川はライフルを持ったガンマンの遠距離攻撃系、清はあちらの清と色が違う魔法少女みたいな格好で防御系、千鳥紋先輩は召喚魔法攻撃系で、年野夜見さん(先輩)が回復系か。

「ほお、これはなかなかいい銃ですね。M1876センティニアルでボルトアクションのライフルだ」と、市川は銃をかまえた。

「それはいいんだけど、ライフルって普通右肩に置くんじゃないの?」

「今までの設定では出て来なかったんですが、ぼくは左利きなんです。箸とか鉛筆とか、描写はないんだけど、確か左手を使っていたはずです。おまけにボルトアクションは左肩のほうに置いたほうが撃ちやすいんです」

「本当? まあいいや。でも弾数は足りるのかな」

「そこらへんは魔法銃だからなんとかなると思います」

「では、話がまとまったら、われらの挑戦状を受けてもらおう」と、あちらの物語部の千鳥紋先輩は言って、巻物みたいなものをこちらに放り、受け取ろうとしたおれの前で、遊久先輩はその巻物を刀で叩き落とした。

「馬鹿かおまえは。山田風太郎ぐらい読んでるだろ」

「あっそうか」と、おれは納得した。

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