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じゅんけいさん。  作者: ジョウビタキ子


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自由を与えてすぎてはいけません


今日も田植えに来ています。



植える箇所が多いんです。



昔は

それぞれの田んぼを

それぞれの家の人が管理していたようですが

高齢になるとできなくなるそうです。


跡継ぎがいてくれたら

その人がするのでしょうが

継いでくれるかは、その人の選択次第。


力があっても別の道へ。

継ぎたくても事情が邪魔して難しい。

継ぐ予定だったけれど継げなくなってしまった。



そんな風に、上手く回らないこともあります。



田んぼは

一年お世話をサボると

ただの荒地になります。


整っていた畦道は雑草が生い茂り

綺麗に水を張って輝いていた水面も

やはり雑草が生い茂ります。


生き物にとっては良い隠れ家になりますけれど


ボサボサの田んぼをみかけると

少しだけ切なくなります。


父は

自分の田んぼ以外にも

何ヶ所か管理しているそうです。


だから

きゅうりも忙しいのに

田植えも忙しい。


きっと今頃

きゅうりのつるは

父から解放されて

伸びたい放題している事でしょう。


絡まりまくって

多分ジャングルになっています。

恐ろしい。










今日は田植え2日目です。

田植え機『さなえ』に乗り込んで

さてスタート…というタイミングで


「鍬持って来て〜!!!」と大声をあげる父。


トコトコと鍬を手渡すと

田んぼの中にズボッと突っ込んで

何かを掬い上げました。





ゴミ?





そのまま鍬を娘に手渡した父は


「川に投げとけ!」


と、職人モードで全開で言い残し、

『さなえ』を走らせて行ってしまいました。






鍬を片手で持ったままポツンと立つ娘。






父に渡された鍬は

とてつもなく重いです。


ドロドロの塊が乗っています。


じわじわと腕が疲れてきたので

ゴトリっと鍬を地面に下ろすと、

モゾリ…ッ

顔が出てきました。





カメです。





「カメー!でっかい!」

「あらー。カメいたのー?いやいや。このカメ見て。一丁前に威嚇してるねー。お父さんが助けてくれたのに」

「おお〜。口開けて頑張ってるね」




父が田んぼから掬ったのは

なかなかでっかいカメでした。


忙しい田植えの初っ端から

まさかの珍客に出会うとは。


娘はルンルンしながら

父に言われた通り、

近くの川に向かいました。




意外と大人しいな。

静かに鍬に乗ったまま動かない。

ありがたい。

バタバタされて逃げられたら

娘が捕まえないといけなくなる…

手袋してるから…まぁ大丈夫かな?




そんなことも考えながら、

最大限に広げた手より余裕で大きいカメを

チラチラ確認しなが橋に到着した娘。


そこで一度動きを止めます。





「いや〜…コレは高すぎる…」





橋の上から川の投げるつもりでしたが

思いの外高さがあります。

娘はここから投げられたら嫌です。

大怪我じゃすみません。




カメなら大丈夫?

そんな訳はない。

絶対痛い。




キョロキョロ見回すと

少し遠いですが

階段があります。






悩みました。






今、忙しいんです。

早く帰らないと『さなえ』が苗を切らします。


でも…

「川に投げて来い」と言ったのは父です。




階段と『さなえ』に乗る父を

交互に見比べたあと

娘は階段へ向かうことにしました。


走ることはできません。

カメが地味に重いです。


それでも早歩きで頑張りました。


そうして無事に川に解き放たれたカメ。

水流で泥が流れて

スッキリしましたね。




「……………」




川と

カメを

1分ほど

ぼーっと見ました。








「ど〜こまで行ってた〜?!」

「え?川に降りれる階段まで」

「んも〜!放ったら良かったろ〜!」

「いや、だって、川まで高さがあってね、投げたらカメが痛いかなって…だから、あそこまで行ってた」


川の階段を指差す娘。

少しだけ不機嫌そうな父。

でも川までの高さを伝えると折れました。よし。



本当は

もう少し早く帰れたんですけれど…

しょうがないです。



娘の手綱を緩めたのは父なので。



小学生の頃、

通学させると小一時間以上帰ってこなかった娘に

自由を与えたのですから。



大体は通学路にいたそうです。



水たまり、虫、川、棒切れ、

なんでも遊び道具にして

なにか気になるものがあったら

座り込んで見つめたまま動かなくなり

全く帰ってこない。



そんな娘に

「川に投げて来い」なんて言ってしまった日には、

直ぐには帰って来ません。



川を眺めるのを

1分で切り上げたことを

褒めて欲しいくらいです。



1分見たのは…内緒なんですけれど。








さて

今日は田植え3日目です。


忙しく動いている合間、

久しぶりにカエルの卵を見つけました。



そうそう

コレがカエルの卵

卵白が薄く横に広がった感じの中に

黒っぽい丸が何十個もあります。



「父。カエルの卵」

「ん?そこのあったら踏まれるぞ?」

「そうだよね…何か掬うものないかな…」

「しょうがない。助けてあげようかね〜」



今日もしっかり

忙しいはずなのですが

少し隙間時間ができると

娘は自由行動をしてしまうようです。



でも

父も大体乗り気なので

同罪です。



2人で

カエルの卵を

安全な場所へ移動させました。












田んぼには程よい自由と管理を


娘にも程よい自由と制限を


どちらも程よく整っていると


なんとなく回るのかな?と思います。


自由は…


程よいくらいが丁度いいのかな?と


ぼんやり思いました。



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