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エピローグ

 

 あの後、両親に連れられてやってきた医者に器具を外したことをしこたま怒られた。


 あれから体力も回復して、広志はまだ車椅子だが、自由自在に病院を動き回るくらいには元気になっていた。


 目を覚ましてからおよそ1ヶ月。


 事故の後遺症は幸い残らなかったが、脚にはギブスをはめて車椅子で病院内を探索している。


 本当のところ松葉杖で歩ける程度なのだが、両親が過剰に心配するため、車椅子での移動を条件に散策を許されたのである。


 凜に至っては「私のいるときに車椅子で移動してくださいね!」と笑顔でプレッシャーをかけてくるため、気付かれないように脱出を繰り返していた。


 今日もこっそりと車椅子で移動をして、途中階段があるため、車椅子の後ろの部分に固定していた松葉杖を取り外す。


 落ちないように松葉杖をうまく使い一歩一歩上にあがる。


 一番上の階にある鉄の扉をあけると、開けるときの隙間から風がもれ、日の光が優しく照らす。


 屋上に繋がる扉をあけると歌声が聞こえてきた、ヒロシは聞き覚えのある歌声に心を踊らせて勢いよく扉をあけた。


「凜!!」


 屋上のベンチには凜が座っており、目を丸くしてびっくりしてる。


 びっくりしてるところをみてるとまるで小動物でも見てるかのような不思議な気持ちになる。


 ただ広志は忘れていた。


 凜に黙って屋上にきていることを、そして松葉杖をついてることを....


「広志くんなんで?」


 広志は小さく「あっ、やばっ」っと何事もなかったのように扉を閉めようとする。


 扉を閉める寸前で声が聞こえる。


「広志くんこっちにきなさい!」


 優しく聞こえるが怒りがこもっているようにも聞こえる。その声に広志は黙って従った。


 ○ ○ ○


 広志は今凜の隣でベンチに座り、凜いや凜さんのお話をただただ拝聴しているところである。


 その間広志は、はいとすいませんしか言葉にできなかった。

 ただ嵐が過ぎるのをじっと耐えていた。


 凜も落ち着いたのか、広志になんでここまできたのかを訊ねた。


「ここの場所好きなんだよね。風が気持ちいいし、たまにいろいろな音が聞けて楽しいから、気分転換ってやつ」


「そうだったんだね!私もここは風が気持ちくて好きなんだ」


「そうだね!凜は今歌を歌ってたよね?すごく上手だね!」


 凜は急に褒められたため、恥ずかしくなり、頬を赤くする。


「ここにくるとたまに歌うの、歌うのは好きだけど誰かに聞かれると恥ずかしいから」


「だから誰もいないときにこここにきて歌ってるんだよ。広志が誉めてくれて嬉しいよ」


 ヒロシはなにも考えずに、誉めたため今さらになって気づき恥ずかしくなった。


「凜、変な話だけど一週間寝ている間絵本の中の世界で暮らしていたんだ」


 ヒロシは一週間のキャンプの出来事を凜に楽しそうに話した。

 変なやつだと思われても、凜に聞いてほしかった。


 凜は突拍子もない話に驚きもせず、ただ楽しそうに話すヒロシに目線を合わせ黙って聞いていた。


「俺は死神のギルを倒して生に執着することを教わったんだ。すごく不思議で、そしてなにより勉強になった一週間だった」


「その一週間のうちにリンに良く似たエルフの女の子も出てきたんだよ?歌がとても上手かったんだ。まるで君みたいに....」


「君は俺を救ってくれたんだよ。ありがとう」


 凜はヒロシの話を一通り聞くと涙目で話はじめる。


「ううん、それはきっと君が強く生きたいと思えたからだよ。ヒロシの力で戻ってこれたんだと思う」


「ヒロ、本当に良くなってよかったね!」


「ありがとう、凜!」


 外は日射しが強く二人を照らしていく、ヒロシはポケットになにか入っていることに気付いた。


 がさがさとポケットを漁ると、入れた記憶のない四角いうすいものがあった。


 ヒロシはそっと取り出すと、一枚のプレート。


 ヒロシはこのプレートに見に覚えがあった。


【初心者ヒロシ】


「げっ」


 顔を顰める。


 何となく思いつきで裏返すと、そこには一言。



 "生きろよクソガキ "



「あっ」


 その瞬間突風が吹き荒れ、手に持っていた名札が飛ばされる。


 ただヒロシは驚き、飛ばされたプレートを見送るしか出来なかった。


 ヒロシは心にためていたものが溢れだし、涙が溢れ出す。


 ヒロシは無意識に屋上からそっと呟いた。


「うるせいよ、バカギル!本当にありがとう!」





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