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92、スチーム星 〜神の社

「どうぞ、こちらへ」


 外が明るくなってきた頃、僕達は、神スチーム様の側近の人に案内されて、長い通路を歩いている。


 この星の住人の大きさに合わせて造られた建物は、僕達からすると、とんでもなく大きいんだよね。


 窓から見える景色は、夜明けの独特な色に染まっている。イロハカルティア星では、夜明けなんて目にすることがないから、僕は懐かしさからか、言い表せない気持ちになっていた。


(これが普通だったのにな)


 太陽が昇り、やがて日が沈む。月や星の夜空は、たまに寂しくなるんだよね。そして、じわじわと夜が明けてくると、ス〜ッと気持ちもリセットされる。


(だけど、休日明けの朝は、辛かったっけ)


 遠い記憶を思い出し、フ〜ッと息がもれてしまう。



「ライト、どうした?」


 僕の哀愁に気付いたレンフォードさんが、声をかけてくれた。


「いえ、夜が明ける光景って懐かしいなって思ってただけです」


「翔太だった頃の記憶かな?」


「はい、遠い記憶ですけどね。イロハカルティア星では、地上はずっと太陽が出ているし、逆に地底は太陽は昇らないですから」


(あ、わからないよね)


 レンフォードさんは、困ったように笑ってる。


「俺は、この星の夜の暗さに驚いたけど、太陽が昇る時間と、太陽が見えない時間があるのは、人族と魔族の共存世界のようで、不思議な感じがするよ」


「確かに、地上と地底を混ぜた感じですよね」


「女神イロハカルティア様が望まれている世界だね」


 レンフォードさんは、ふわりと優しい笑顔を見せた。


 彼が警備隊として、ロバタージュにいるのは、もしかすると女神様と同じ考えなのかもしれないな。なんだか、そんな感じがした。




 案内されたのは、大きな城だった。女神様の城とは雰囲気が違う。木で造られた荘厳な雰囲気の城なんだ。


「こちらが、神のやしろです」


(星の上に、普通にあるんだ)


 女神様の城は、異空間にあるんだよね。星が違えば、神のすまいも当然違うんだな。



「途中で、ワープしたっすよね。神の社は、星の上にあるんすか?」


(えっ? ワープ? 気づかなかった)


 僕達の後ろを歩いていた魔王サラドラさんが、賑やかすぎるからかな。何度もぶつかってくるから、ワープに気づかなかったんだ。


 彼女は、もともとシャインと親しいのか、遊んでくれている。シャインの肩くらいの背丈しかないから、なんだか、かわいいカップルにも見えるんだよね。


 魔王サラドラさんは、最古の魔王だけど、見た目は、かわいい女の子だ。妖精族って、見た目が変わらないんだな。



「ワープではありません。床が移動するのです。徒歩での移動は大変ですからね」


(うん? 歩くエスカレーターみたいな感じ?)


 振り返ると、確かに床がこちらに動いてくる。魔法が使えないから、いろいろな機械が発達しているようだ。


 驚いた顔のジャックさんに、たぶん微笑みを浮かべているロボットみたいな人。


(神スチーム様も、ロボットみたいなのかな)




「さぁ、イロハカルティア星の皆さん、こちらへどうぞ。謁見の部屋になっています」


「ありがとうございます」


 謁見の部屋と言われて、ジャックさんとレンフォードさんは、その表情を引き締めた。ノームの魔王ノムさんと、魔王マーテルさんの眷属けんぞくの男性は、無表情だ。


 そして、お子ちゃま二人は、まだ遊んでるんだよね。


「シャイン、静かにしなさい」


 僕がそう言うと、シャインは固まり、目にジワリと涙を浮かべた。この子、すぐ泣くよね。


「もうっ、ライトってば、怖い顔しないでよ〜」


 魔王サラドラさんは、ぷりぷりと怒っている。だけど、この星の神に会うんだよ?




「お待たせしたね。女神イロハカルティアの番犬が二人いると、聞いたけど……その小さな二人かな?」


 現れたのは、普通の人の顔をした30代半ばくらいに見える男性だ。姿を変えて見せているのかな。


 彼の視線は、シャインと魔王サラドラさんに向いている。なぜだ? 普通なら、ジャックさんとレンフォードさんを見るよね?



「ぶぶ〜っ。あたしは、イロハちゃんと同じ妖精族だけど、サラマンドラの魔王よ。この子は、番犬の息子だよ〜」


(ちょ、その話し方……)


「そうか、外したか。難しいな。キミ達は、どの人も戦闘能力が高そうだから、わからないな。女神イロハカルティアっぽい人を選んでみたのだが」


「ふふっ、スチームちゃんって、よくわかってる〜」


「おい、サラドラ、その辺にしておけ。イロハカルティア星の魔王が、すべておまえみたいなバカだと思われたくない」


 ノームの魔王は、サラドラさんとあまり仲が良くないんだよね。なぜ、こんな人選になったのかな。


「ということは、キミも魔王なんだね。じゃあ……」


 神スチーム様は、誰が女神様の番犬かを当てようとしているのかな。魔王サラドラさんに合わせている?



「これが、ジャックよ。魔法はあまり使えない子なの。そして、もう一人は、ちょっと問題ありなのよね〜」


(はい? 僕のこと?)


 すると、神スチーム様の視線が僕に向いた。問題ありと言われて、僕を見るのも……まぁ、いいけどさ。


「ライトです。神スチーム様」


 僕が名乗ると、神スチーム様は、目を見開いた。



「青の神ダーラと相討ちになったと聞いていた。不思議な子供の姿をしているのだな」


(不思議なのかな?)


「えっと、僕は、記憶がまだあまり……」


「なるほど、そういうことか。カース殿から、だいたいのことは聞いているよ。まさか、そんないびつな状態だとは驚いたが……」


(おかしいのかな?)



「カースさんは、この星のどこかの時代に、事故でイロハカルティア星の住人が数百人、転移したと言ってたっす。だいたいの目安はわかるっすか?」


 ジャックさんが、神スチーム様に、そう尋ねると、彼は配下に何かの合図をした。



 壁が、ガタガタと動き始めた。


 その奥から、強い魔力を感じる。何かの装置だろうか。



「時代は、わからないよ。カース殿も、特定には時間がかかると言って作業をしていた。だけど、イロハカルティア星の保護結界が消えるとわかって、戻っていったよ」


(カースが、ここに居たんだ)



「じゃあ、名探偵サラドラの出番ねっ」


 そう言うと、魔王サラドラさんは、赤いワンピース姿に変わった。白いかぼちゃパンツのチラ見せも、完璧だ。


「ノームの魔王、チビゴーレムをとりあえず100個、出してちょうだいっ」


 ビシッと、ノームの魔王ノムさんを指差す少女。彼は、嫌そうな顔をしたけど、ぶわっと魔力を放った。すると、大量のだるまが現れた。


 手のひらくらいの小さなゴーレムだ。


「じゃあ、ばら撒くよぉっ」


 魔王サラドラさんは、転がっているだるまに、魔力を放った。すると、だるまは赤いオーラを放ち、宙に浮かんだ。




「キミ達、すごいね。じゃあ、時空の扉を開くよ」


 壁の向こうから出てきた装置のようなものが、強く光った。時空の扉を開く装置なのかな。


「それじゃ、偵察ゴーレムちゃん、いってらっしゃい」


 魔王サラドラの声に従うかのように、赤い光をまとった大量のだるまは、強い光の中に吸い込まれていった。



「あとは、待つだけね〜。ふわぁぁ、まだ眠いよぉ」


(さっき、寝てたじゃん)


 ノームの魔王が作ったゴーレムをさまざまな時代に、放ったってことだよね? 偵察ゴーレムって言ってたけど。



「ふふっ、魔王は地底に住んでいるから、太陽が苦手なのかな。隣室の客間を用意させる」


 ぐぅうぅ〜


 シャインのお腹の悲鳴が、響き渡った。


「おや、お腹が空いているのか。小さな種族は、頻繁に食事を取らなければならないから、大変だね」


「ライトが、ご飯を作ってくれるから、部屋の中に小屋を出してもいいよねー?」


(客間を用意っておっしゃってるのに……)


 赤いワンピースの少女は、何も気にしないみたいだ。


「構わないよ。食べられる物も用意させよう。食材が必要だろう」


「それなら、まだあるから大丈夫よ。あっ、スチームちゃんも食べる? ライトは店をやってるから、ご飯の味は、悪くないの」


(ちょ、何を……)


「魔王サラドラ、失礼な呼び方をするな」


 ノームの魔王ノムさんが、やっぱり怒った。だよね、失礼すぎるでしょ。


 しかし……不思議だったことが一つ明らかになった。ジャックさんもレンフォードさんも、当たり前のように、僕が作ったごはんを食べていた。


 あれは、僕が店をやっているからなんだ。今までにも、僕が作る料理を彼らは食べていたんだろうな。



「へぇ、他の星の料理か、興味がある。女神イロハカルティアが食べるものがわかれば、作ってみてほしい」


「僕には記憶が……」


「ライトさんの作る料理の味は、生まれ変わる前と、変わらないっすよ。女神様は、なんでも食べるっす。特に甘い物が好きみたいっすよ」


 ジャックさんがそう言うと、神スチーム様は楽しそうに笑っている。


 あー、そっか。スチーム様からすれば、女神様は、黄の太陽系の創造神だもんな。憧れがあるのかもしれない。


(あんな性格だとは知らないんだよね)



皆様、いつもありがとうございます♪

今日、シリーズ設定という機能を使ってみました。

目次のタイトルの上に、小さく表示されているので、ポチッとしていただけると、シリーズリストのページに繋がります。

秋の夜長に、よかったら覗いてみてください♪

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