◎ 「 20歳未満,女性の読者さんは── 」以下略。
現れたのは “ なりそこない ” よりも巨大な化物だった。
凶暴な獣の顔を持ち、体は顔とは異なる獣の部位を持っていた。
巨体を支えている太くて丈夫な両脚は頑丈そうな鱗で覆われている。
両足は鶏だろうか。
太くて長い尻尾は蛇なのか、クネクネと動いている。
胴体には腕が4本も付いていて、背中には馬の様な鬣が生えている。
一体何の為に現れた化物なのか。
化物はセロフィートが作り出した〈 合成獣 〉だが、エミルリアンは其の事実を知らない。
突然現れた〈 合成獣 〉を敵だと認識した “ なりそこない ” は腹の底から声を出して咆哮した。
“ なりそこない ” の咆哮に依って、子供達も一斉に威嚇の咆哮を上げた。
“ なりそこない ” の子供達は一斉に〈 合成獣 〉へ襲い掛かった。
〈 合成獣 〉は “ なりそこない ” の子供達を4本の腕を使い器用に掴むと口に放り込み喰べる。
尻尾を器用に動かし、飛び掛かって来る子供達を払い、天井,床,壁へと容赦なく叩き付ける。
壮絶な光景がエミルリアンの目の前で起きている。
次々と巨大な化物に掴まれ、大量の血を飛び散らせながら実に呆気なく化物の子供達が喰べられていく。
とうとう最後には親である化物迄もが、化物の蛇の尻尾にキリキリと締め付けられている。
エミルリアンは全身をガクガク,ブルブルと震わせながら、顔も口も胴体も血塗れの化物を見上げていた。
瞳には絶望の色に染まっていた。
口から滴り落ちる血を舌で舐めている〈 合成獣 〉の両目の瞳には、情けない表情をしたエミルリアンの姿が映っている。
今迄ずっとエミルリアンを守ってくれていた魔法陣が何の前触れもなく消えた。
先程迄エミルリアンと〈 合成獣 〉を隔てていた魔法陣が消えてしまった事で、発狂したエミルリアンはけたたましい悲鳴を上げた。
身体を動かそうとしてもエミルリアンの身体はピクリとも動かない。
全身に力が全く入らないのだ。
〈 合成獣 〉はグルグルグル…と喉を鳴らしながらエミルリアンをジッ…と見詰めている。
牙と牙の間から涎を垂らしながらだ。
〈 合成獣 〉の直ぐ隣に魔法陣が出現した。
魔法陣から姿を現したのは、とある人物だった。
其の人物はエミルリアンの知っている者だった。
白髪と白銀が7:3の割合で絶妙に混ざった様な美しい緩やかなウェーブがかった髪の人物。
膕迄伸びた美し過ぎる髪とお揃いの真っ白なコートを着て、ブーツを履いている。
真っ白なコートには、光が反射するとキラキラする銀色の糸で美しい刺繍がされており、まるで雪の精霊を思わせる様な麗美な容姿をしている。
黙って微笑んでいれば性別も判らない程だ。
190cmの長身の麗人は、自分に好意を抱いてくれたゼリンネル王子と領主邸に滞在している吟遊詩人様だ。
──何故????
其の言葉だけがエミルリアンの脳裏に過った。
美しい吟遊詩人は、〈 合成獣 〉の喉を撫でていた。
化物が吟遊詩人に懐いており、嬉しそうに喉をゴロゴロと鳴らしている。