♥ 領主邸 15 / 食堂 2 / ハラハラする晩餐 2
ゼルには後で、命を狙われる可能性がある自覚を持つ様に確りと言い聞かせとかないとな!
オレの左側には、セロが座っている。
領主もツァンベルヒッツも執事も侍女も見惚れて見取れてしまう程の美しい完璧なテーブルマナーで出されている料理を食べている。
セロが口を開けて、フォークの先に刺した料理を口の中に入れる仕草を見ているだけで、何故だか『 いけない欲望 』が胸の中に込み上げて来るんだから困る。
領主もツァンベルヒッツもナイフとフォークを持つ手が止まっていて、食べるどころじゃなさそうだ。
テーブルマナーなんて気にしないで普通に食べたらいいのに、セロは態とそ~~ゆ~~食べ方をして、相手の反応を面白がったりする。
質の悪い確信犯だ。
“ 態と ” だって分かる理由は、マジマジと食べている所を見詰めている領主とツァンベルヒッツに対して、態と目を合わせてニコッと微笑むサービスをしているからだ。
始末が悪いよ。
セロが自分達に気があるんだ──って、とんでもない勘違いをしたり、今夜こそはセロと一夜を共に出来るんじゃないか──っていう希望が胸に芽生えていたりしてるんだろうだな……。
…………オレは複雑なんですけど…。
オレも目の前に出されている料理を食べる。
テーブルマナーなんか無視して食べたいよ……。
美味しい料理の筈なのに、テーブルマナーの所為で全然美味しく感じないよ……。
口に料理を入れると偶に変な味がする時がある。
折角の料理の味を台無しにしてしまう様な違和感のある味──。
多分、無味無臭の毒なんだろうけど、オレの舌は悲しいかな入っているのが分かってしまう。
全くもう、何で毒なんて入れてくれちゃうんだよ!
明らかに殺しに掛かってるよな??
一体誰が誰の指示で美味しい料理に毒を盛ってるんだろう……。
調理に携わる料理人の中に紛れ込んでるのか、厨房から運んで来てくれる侍女の中に紛れているのか……。
食器や食具に毒は付けられてないみたいだ。
料理の中に毒が混ざり込んでいる訳だから、調理中に混入させてる奴が居るんだろな……。
其処迄してゼルを殺したいのかな??
ゼルは王子だけど、王位継承権順位は絶望的に低いし、出来損ないで「 王族の恥 」だと迄言われている〈 ノマ 〉なんだけど……。
態々領主邸に招待しといて、毒殺するだけの価値があるのか??
………………分からん。
いや、別にゼルを毒殺したい実行犯達や指示者の気持ちなんて分かりたくもないけどな?
取り敢えず、オレは次々に運ばれて来る料理を食べまくる。
もう、やけ食いみたいなもんだ。
オレが口の中に入れた料理を味わう中で毒の味に気付くぐらいだらか、セロなんて運ばれて来た料理を見ただけで分かっちゃうんだろうな。
其でも構わずに出された料理を完食してしまうのは、毒が混入していても関係無いからだ。
セロの事だから、どうせ「 此の料理には◯◯◯◯の毒が合うのに… 」とか思いながら食べてるんだろうな。
そして、オレが……セロのチョイスした猛毒入り特製料理を食べさせられる羽目になる訳だ。
オレが無味無臭の毒の味に気付けてしまうのは、悲しいかなセロの猛毒入りの特製料理を食べ慣れてしまっている所為な訳で……。
オレ、泣いてもいいかな??
ゼルは毒の味には気付いてないんだろう、パクパクとデザートを美味しそうに食べている。
マオ
「 ──美味しいけど、変わった味付けだな? 」
ゼリンネル
「 そうかい?
あぁ…でも、同じ料理でも領地に依って味付けが微妙に違うらしいから其の所為かも知れないね。
口に合わない? 」




