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出会い

面白そうだったら評価などして頂けると有難いです

それと100PVありがとうございます

大怪我を負い、絶体絶命の奏多たちの前に突如現れたのは、ピンク色の鱗を纏った子ドラゴンだった。

正直に言うと、奏多としてはこのドラゴンを倒してLvをあげたいのだが、敵意の無い相手を一方的に攻撃するのも気分が良くない。


「つか、そんな事したら妹に嫌われちゃうじゃんか!!」


それだけは絶対に避けなければいけない。

せっかく元の世界に帰ることができたとしても、妹に嫌われたら奏多はもう生きていくことは不可能だろう。


(お前って、ほんとシスコンだよなぁ……)


そう、かつての世界で呆れながら自分にそう言った友人がいたのを思い出す。

奏多とて自分の妹愛が尋常ではないことくらい自覚しているが、それでもシスコンなどと軽蔑されることは心外である。


「大体、あいつだってアイドルオタクだったんだ。俺をとやかく言う資格はないよな。うん。」


適当に現実逃避をしながらも、しかし瞳はしっかりとドラゴンを見つめているのは流石と言った所だろうか。

ここ6日間で養ったサバイバルの経験もあるが、やはりこの油断の無さは生来のものと言っても過言ではない。この少年とて、決して無能ではないのである。


見かけによらず合理的な性格を持つ彼であれば、現状況で少しでもレベルアップをして体力を伸ばしておくのが得策なのは言わずもがなで理解しているだろうが、それでもこの少年は優秀なこと以前に中学二年生だ。


情を優先する甘さは当然残っており、故に襲ってこなければ倒さない、というのは最初から決めていた。


となると、次はこのドラゴンの処遇だがーーー


「連れていくのは食糧的に論外だしな……

放っていくしかない、か?」


奏多も多少このドラゴンに興味はあったが(主に厨二病的な意味で)、この状況で好奇心を優先していては本当に命を失いかねない。


残念だが、今の奏多にはドラゴンに構っている暇はなかった。


「とりあえず、ほっといて先に進む……か。」


ひとまず現状維持することを選択した彼は、再び遅い速度ながらも大蜥蜴と共に進む。


既に食料は明日の分しかない。

一刻も早く街へつかなければ、この森の中で餓死することも考えられるのだ。


「せめて、大蜥蜴の傷が無ければ……!」


絶望的な状況を嘆くが、ないものねだりをしても仕方がない。

後悔しても何も変わらない事は分かっているが、大蜥蜴が足を焼かれる瞬間のことが今も脳内で渦を巻いている。自分にも何か出来たのではないか、そんな自責の念がどうしても奏多の中に産まれていた。


痛む足をひきづりながら森の中を暫く歩くと、あのピンク色のドラゴンは既にいなくなっていた。


「せっかく見逃したんだ、頑張って生き抜いてくれよ。」


なんとなくそう独り言を呟くと、すぐ側をかなり遅いスピードで歩く大蜥蜴と目が合う。


大蜥蜴の前脚、特に右の脚は火傷が酷く、脚の付け根まで火傷が広がっている他、直撃を受けた脚先は鱗が焦げ、骨が見え隠れするほどの大怪我だった。


包帯は既に大蜥蜴の血で真紅に染まっていて、正直あと1日歩けるかどうかも分からない。

ましてや、傷薬や消毒液がない今の状況では破傷風等と言った感染症にかかる可能性すらあるのだ。

無論、この剣と魔法の世界に破傷風が存在していたら、の話ではあるが。


「クソ、治癒魔術的なあれが使えたらな……」


大蜥蜴の脚を焼き焦がしたあの一撃は、奏多がもし大蜥蜴と同様に至近距離で直撃を受けていたら、大蜥蜴と比べ防御力の低い彼であれば即死も有り得る程の威力だった。

死にかけの蜘蛛が最後に放った一撃は、それ程までに強力で、並の人間であれば一撃死も有り得る程の痛烈なものだ。


だからこそ、違和感が生じる。


「どうなってんだよ、こんな強い魔物いるなんて聞いてねえぞ……?」


そう、あの全身鎧の兵士からは、確かに巨大蜘蛛の情報は聞いたが、あんな強力な魔術を発動できるなんて言われていない。誘魔石が通用したのだから低級の魔物ではあるのは確かなのだろうが、あの威力は低級魔物の中でも飛び抜けている。


というか、奏多が1度単体で遭遇した巨大蜘蛛は火の玉なんて撃ってこなかったし、大蜥蜴の突進であっけなく死んだ。


恐らくだが、チャージ時間が長いのだろう。


故に、不意打ちで瞬殺すれば大した驚異ではないが、複数体で、しかもお互い認識した状態であれば話は別だ。

それなりの時間をかける代償に放たれるのは、高威力高射程の火球で、しかも死にそうになると火事場の馬鹿力で威力が数段アップする、というこちらがげんなりする程の技。


「だからこそ、あの蜘蛛がそれだけ強力な技が放てるからこそ、俺がその事を知らないのが一番おかしい……!」


普通、あれだけの攻撃力を持つ魔術を放つことができる魔物ならば奏多に警戒を促してくるはずだ。


だが、そうなるとーーー


「それなら、なんであの兵士は教えてくれなかったんだ?」


思い出せ、あの兵士は、奏多になんと言っていたか。

それは、きっとこの先の命運を左右する重要なことだ。

寒気が、脳に渦巻く言い知れぬ不安が、奏多に重くのしかかっていた。


「巨大蜘蛛は、体長が1メラル程度の大きな蜘蛛です。身体の大きさ以外目立った特徴もなく、低級の魔物の1種ですね。特に注意する必要はありませんよ。」


嘘だ。低級の魔物が、〈乗用魔物〉としてそれなりの強さを持つ大蜥蜴にあそこまでの傷をつけられるはずもない。

明らかに、不自然なのだ。

あれだけの攻撃力を持つあの蜘蛛の攻撃を、仮にも兵士が知らないはずがない。


それはつまり、奏多にとって最悪の事実を示していてーーー


「意図的に、情報を抜いていた……?」


もしそうだとしたら、彼に取れる選択肢は一気に縮まる。

彼らが奏多を騙しているのであれば、そもそも街の方角がそもそも嘘の可能性だって無いわけではないのだ。


「いや、まだ決めつけるには早いだろ……」


瞼によぎる最悪の想像をかき消すように頭を振り、頭を冷やす為一旦休憩にしようと止まりかけたその時ーーー


「ぎゃう、ぎゃうあう?」


またしても、あのピンク色のドラゴンが奏多の前に現れていた。

恐らくだが同一個体だろう。というか、あんなモノが何体もいたら奏多が持たない。

そうなると、このドラゴンは奏多達を追ってここまで来たのだろうか。


「……お前は、何がしたいんだ?」


邪気や敵意と言ったものは全く感じられないが、今の状況で魔物に追いかけられている時点で無視することもできない。


魔物は、他種類の魔物も襲う事がある。一応魔物である大蜥蜴が良い例だろう。

故に、このドラゴンが原因で他の魔物が集まってきて奏多達が全滅すれば笑い話にもならない。


「殺す、しかないか……」


脅かすだけでもいいだろうが、驚異を感じたこのドラゴンがもし親かなにかを連れてきたらあっという間に詰む。

今の奏多にとって、驚異となり得る物は少しでも排除しなければいけないのが現実なのだ。


「ごめんな……」


ゆっくりと鉄剣を抜き、5m程前にいるドラゴンに向かって鋭く踏み込む。勢いは十分、大気を切り裂きながら弧を描く剣先はドラゴンの首を捉えーー


「ぐ、があぁぁあ!?」


突如の加速で刺激された脚が激痛を訴え、奏多は鉄剣がドラゴンを切り裂く直前で地面に蹲っていた。

全身の毛穴が沸騰し、思考すら霞む激痛に涙が出てくるのをなんとか堪える。


痛みに喘ぎながら、奏多はそれでも何とかあのドラゴンを倒そうと立ち上がろうともがくが、しかし当然立ち上がれる訳もない。

仕方なく痛みが引くのを待とうとしていると、息を荒くして寝転がる奏多へとドラゴンがてくてくと近づいてきた。


先程の攻撃で、奏多が自分を殺そうとしているのが分かったのだろう。

硬い鱗から生える鋭い爪がきらりと輝き、殺られる前に殺ってしまおうと思ったのか、ドラゴンは蹲る奏多のすぐ側で立ち止まるとーー


「……あ?」


ドラゴンが、奏多の黒く爛れた右足に手を翳していた。

訳の分からない行動に錯乱した思考が、激痛に霞む脳内が更に真白に染まるが、直後彼の思考は更に猛烈にかき乱される事となる。


ドラゴンが翳した手の平から出現した、白く、優しい印象を与える淡い光が奏多の焼き焦げた足を包み込んだのだ。


刹那、少しむず痒いちくちくした感覚とともに急激に痛みが引いていき、やがて光が収まるころには奏多の焼き焦げた足は綺麗な肌色へと完全に元通りになっていた。


「な、なんだこれ……」


突然行われた人知を超越する治療に呆然とする奏多だったが、痛みがすっかり引いているのを確認すると慌てて包帯を解いた。


「マジかよ、すげぇ……!!!!」


特に損傷が酷かった部分には、ついさっきまで黒く焦げるほどの火傷をしていたとは到底信じられないほど普段と変わらない肌色へと変化していた。

先程まで感じていた舐られるような痛みは既に影も形もなく、右足付近だけ焼かれていたズボンが巨大蜘蛛との闘いを物語っていた。


今、このドラゴンがしたのは完全に治療。


奏多の知っている異世界もののテンプレ通りならば、恐らく治癒魔術と呼ばれる類のものだろう。


「ドラゴンって、そんなの使うのか……?」


少なくとも、奏多が読んだ異世界ものにそんな設定のものはひとつも無かった。

とはいえ、今はそんな些細なことはどうでもいい。


このまま行けば餓死も有り得る程の絶望的な状況だったのだ、傷が治ったことを素直に喜ぶべきだろう。

何より、殺そうとしたにも関わらず傷を治してくれたドラゴンを、一応の善性は兼ね備えている奏多が殺すなんて出来るはずがない。


合理的な性格であるこの少年も、そこまで性根が捻くれている訳では無いのだ。


ーーー無論、治療をしたのは、自分を見逃させる為なのではないかと邪推してしまう程度には捻くれているが。


とはいえ、本当にこのドラゴンに治癒魔術が使えるのならば、奏多にはもう1つだけ、恥を忍んで頼みたいことがあった。


「頼む、大蜥蜴も治療してくれないか……!」


痛みの消えた足でさっと立ち上がると、奏多はこのドラゴンに懇願した。


奏多の願いが届いたのかは分からないが、ドラゴンは彼の目をじっと見つめると、その小さい前足を大蜥蜴の方に向け、そして再び奏多を見つめた。


それは、まるで僕も連れて行ってと言っているように奏多には感じて。


「分かった、分かったから、頼む……!」


すると、ドラゴンはその答えに満足したかのように頷き、てくてくと大蜥蜴の方へ歩み寄る。

やがてドラゴンが翳した掌から奏多を包んだ白光より二回りは大きな白い光が生まれ、大蜥蜴の前足を優しく包み込んだ。


突然の出来事に狼狽する大蜥蜴を奏多が必死で抑えていると、しばらくして中空に溶けるように治癒の光が消え去っていく。

そうして奏多が光の収まった所を見やると、先程と同じく一切負傷の痕跡が見当たらない大蜥蜴の前足が浮かび上がった。


「治癒魔術、凄すぎるだろ……」


奏多も慌てて駆け寄り大蜥蜴の包帯を解くと、完全に灰に帰したはずの漆黒の鱗さえも完全に復活していた。

突然の回復を不思議そうにしている大蜥蜴に安堵すると同時、奏多はここまでやってくれたドラゴンに礼を言うべく振り返りーー



背後から忍び寄っていた犬人達の群れを一瞬で葬り去ったドラゴンと、目が合った。










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治癒子竜 B-級 Lv79



筋力 194



防御 176



素早さ 117



体力 219



神紋性能 A-



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通常スキル



治癒魔術Lv:7 野生の本能Lv:6 爪術Lv:6



飛行Lv:1 息吹Lv4 言語理解Lv:8 風魔術Lv:3



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称号スキル



〈希少種〉 〈魔物の王〉 〈子ドラゴン〉



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