第4話 NGスチル01
「あ~食った食ったと、来たもんだぁああ」
流石はジュエル王国、王室補償付きの指定店舗だけのことはあるよなぁ~。弟たちも残さずよく食べてくれるしよ、エアハルトもリヒトも一回りでかくなったんじゃねぇか? あ、いや、それは言い過ぎか……。まだ、四月だ。だがしかし、美味い飯が食える、有り難い有り難いことだ。俺は手を合わせて拝む。
俺は昼食はいつも中等部に居る弟たちと取ることにしている。
なにせ、国を出る時にきつぅぅぅくっ、王と王妃に言われたからな! 『下の王子は、アーサー、お前が守ってやるのだぞ』、『アーサー、くれぐれもくれぐれも、エアハルトとリヒトの事を頼みましたよ。貴方は兄なのだから』……。なあ、王に王妃よ、俺の事はどうでも良いんですかい? そりゃぁあああ、俺は親父に似て兄弟の中で一番でかいがな? 俺の心配しないんですかい? あ゛~~~ちくしょうぉおおお。
まあ、そうはいっても、俺は前世でも兄弟が多かった。四人兄弟の長男だ。弟を庇って死ぬくらいだ。この世界だって、弟は愛おしくて堪らない。
そんな弟は、中等部三年にエアハルト、十五歳と、二年にリヒト、十四歳が在籍している。そして全寮制のこの学園の寮では無理を言って同じ部屋にして貰った。他の生徒たちは兄弟でも別々の部屋に別々の使用人を連れているのだが……。なにせ貧乏国の俺は、やっと、執事のスコットとその娘のアリアに着いて貰っているという有様だ。
そして昼食後の午後、今日は午後の授業がない。
俺はお茶会まで昼寝をしてやろうと、弟たちを連れて、割と人気がないスポット、木があって芝生あって、ただのだだっ広い野原のような庭で、春の日差しを木の下で木漏れ日を楽しむように寝転がっていた。
弟たちは、何が楽しいんだろうか……、芝生の上を二人して走り回っている。俺はそのうちにうとうととして…………。
夢を見たんだ。そう前世の夢だ。
俺の家族は祖父も祖母も居て、家業は洋装店と洋裁教室をしている。一家総出でやっており、父が昔立ち上げたブランドで一発当てたお陰で、そこそこは暮らしていける。まあ、ブランドは縮小したがな。
それで姉ちゃんも俺も服飾系大学に進み、当時中学生だった妹も多分、その道に進むのだろう……八歳の弟はわからねえ。まあ、なんにせよ、幸せな夢を見ていたんだ。それから……。
学園の庭の芝生の上を走り回る弟たちの楽しそうな声を聞きながら、少し肌寒い程度の庭で、時々、風が頬を撫でて木や草の匂いがして心地良い。
俺は夢を見ていたんだ。さっきの夢の続きか? いや、これは……。
肌寒いと思っていた俺の体には、小さめの上着が掛けられて、俺の頭をそっと持ち上げて膝枕をしてくれる。ああっ!!! なんて柔らかいく心地良いんだ。(うん? ごつくねえか?)それで、良い匂いがしてくるんだなぁ~。これぞ女子力ッというような……(うん? 草の匂いしかしねぇ~)。ああ、そんなイメージだったんだよ。俺のお気に入りの巨乳ちゃんのギャルゲームはっ!!! ラブ展開で最初の方に出て来るスチル!!!
それでそれでだぁあ、主人公の男に言うんだ。こう、膝枕をしたたままで段々屈んで来て、耳元でその巨乳ちゃんが、男の顔に顔になぁああ、巨乳を乗ってだなぁあああああ。『まだ、肌寒いですよ?』て言うんだぁああああ。
「アーサー、この肌寒いのによ、よく寝てんなぁ」
うん? なにか声が聞こえたか?
「俺の上着、掛けてやったんだ、これで風邪は引かねぇよ、感謝しろよ? アーサー」
え? あ、いや。俺の夢だ夢だ夢だぁあああ。夢なんだから、ここは巨乳ちゃんだろうっ!!! なんか俺、それ耳アワーが聞こえる……。
気を取り直していってみようっ! それでだ、そのスチルでは男の顔に巨乳ちゃんの巨乳が乗ってだなっ! はい、頂きました! この幸せショット!!! てなっ、もう、窒息必須のありがとう頂きましたスチルなんだぁああ。
「うん?」
待てよ……、確かに膝枕はされているような気がするぞ? だが、ごつくねえか? というかだな、俺の頭に何か当たってねえか? こう、柔らかいもんがよ……。
俺は、俺は、俺は飛び起きたっ!!!
するとそこには、胡座を掻いて座るリカルドが居た。
「よう、起きたのか、アーサー。こんなところで寝るんじゃねぇよ、風邪引くぞ?」
「お、おう、リカルド。あ、弟たちは?」
「ああ、さっき植え込みの迷路の方に走って行ったぞ」
「そ、そうか」
「おう」
「なあ、リカルド。つかぬ事をお聞きしますが……」
「なんだよ」
「お前さっき……、ひ、ひ、膝枕をだな? してして……」
「ああ、頭は大事なところだからな。膝枕してやったぞ、アーサー、俺に感謝しろよ」
「あ、ああ……(ちーん)」
「おい、また、寝るのかよ! まあ、お茶会までは時間があるけどよ。おやすみアーサー、安心して寝ろ、俺が時間になったら起こしてやるよ」
「……」
俺は男の膝枕で夢を見ていたのであった。ちーん……。