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第3話 ライバル

 「アーク様、お隣の席に座ってもよろしいでしょうか?」

「グレタ、席に名前など書かれてはいない。好きな場所に座れば良いと思いますよ?」

「あら、そうでしたわね。では、お隣の席、失礼しますわ」

「……」


アークが無言になる。そして、おもむろに後ろの席に居る俺の方を振り返って。


「アーサー、そういえば、君が探していた本が入荷したと連絡がありました。私も注文した本が届いたので図書室に取りに行くつもりですが、君の本も貰っておきましょうか?」


この学園は、全寮制だ。街に出るには許可がいる。それも一回や二回じゃぁあ許可が下りない。余程の理由が無ければ街に出ることは出来ない。本を買いたいだの、服が欲しいだの、カフェに行きたいだの、そんなぁあああ理由で許可が下りることはまずない。

「本が欲しい?」「図書室で申請なさい」だ、「服が欲しい?」「学園内にはデザイナーも仕立屋もいるでしょう?」だ、「カフェに行きたい?」「この学園のカフェで結構、味も王室の補償付きです。学生の本分は勉学に武術です」と来たもんだ。まるで牢獄のようだ。だがしかし、全て無料なのである。

貧乏国出身の俺としては、今のうちに本を沢山読んでおかないと国に帰ったら、そうそう高価な本は手に取ることが出来ない。

ああ、ちなみにアークは図書委員をしている。彼は本当に本が好きなんだと思う。進められてはずれを俺は引いたことがない。


「悪いなアーク、いつも助かる」

「いえ」


それだけ言うと、前を向くアークなのだが、何か居心地が悪そうだ。なので俺は、


「おいアーク、今日の午後はお前をお茶に誘ってもいいか?」

「急になんです」


振り向きながらアークが言う。


「アンに頼まれた菓子が手に入ったのとだな、お前が好きな茶葉も手に入れたんだ」

「そうなのですか」

「ああ、日頃の礼と本の礼だ。どうだ?」

「そうですね……」


アークはアンジェリールの方を見る。すると、


「まあ、アーサー様、私が好きなお菓子ですか?」

「ああ、そうだよ。君にピッタリの可愛らしい菓子だ」

「可愛らしい? まあ、何でしょう」

「フフッ」


いやらしく俺は笑う。あ、いや、蕩ける微笑みが唇から零れる。という具合だ! あ゛~~~~~!


「あ、あの!」


突然、グレタ・コーネルが立ち上がる。グレタ・コーネル……、このジュエル王立学園でも貴重な……きちょうぉおおおおおおな巨乳ちゃんだぁあああああ!!! ふむ。


そして、ヒロインのライバルでもある。


彼女、グレタ・コーネルは、銀髪でフワリとしたウェーブの髪をこちらもまた、腰の辺りまで伸ばしている。キラキラと輝く髪はアンジェリールではないが、こちらも絹糸のようで本当に美しい。目の色はサファイア。と言っていいだろう。深い青は包み込むような色で印象深い。グレタもまた美形で、しかもスタイルは抜群だ、今すぐにでもその巨乳に顔を埋めて……、ゲフンゲフン……。背はアンジェリールより高く168センチ。いつ見ても華やかなのはこの背の高さにもあるのかもしれない。

そして、大貴族とはグレタの家のためにあるような言葉なのかもしれない。財産は王族に継ぐ、国内二位だと聞いている。それこそ、貧乏国出身の俺としては、グレタの家の資産なら、小国が一つ買えるのではないかと思われる。

あ~、グレタの性格だが、兎に角、プライドが高い、だが、正義感が強い。ふむ、姉ちゃん情報だが、グレタの性格設定は、今までの乙女ゲームと違ってヒロインを虐めたりはしない。本当に良きライバルとして戦う。まあでも、最後はグレタが負けるんだけどね……、何やら哀しそうに言っていたのを思い出した。

そうだな、堂々と戦っているかもしれない。勉学も武術も……。ああ、グレタは意外にも回復魔法が専門だ。後は防御魔法。グレタのパーティーに入ると、怪我人が出ない。と言われるほどの評判だ。


「どうしたんだ? グレタ」


立ち上がったグレタに俺は聞く。なんだ俺っ! 普通に喋れるじゃぁあああないか! 自分でも吃驚したぞ。


「私も、そのお茶会に……」


グレタが言い淀んでいる。あ~俺には分かるぞぉ~~~、お茶に行きたいんだろう? だがな、俺には決める権限はないんだ! 全てはな、ヒロインのアンジェリール様次第なんだよ! そして俺は知っているんだ! 君は俺狙いではなく、アーク狙いだと!!! それは、アンジェリールも知っているはずなんだが……。俺はチラリと彼女を見る。


「ご一緒しましょう」


満面の笑みで答えるアンジェリール。蕾だった花が開き零れるような笑顔だ。

だがしかし、こうもあっさり返事をしていいのか? アンジェリール! 俺は、


「姫の許可が出た訳だが、グレタ。俺たち三人の他に、リカルドとルカも一緒だがいいのか?」

「ええ、ええ、それは!」


グレタもアンジェリールの即答に、吃驚しているのか、声が震えながら大きくなっている。


「それでアーサー様、場所は何処ですの?」


アンジェリールが俺に聞いてくる。


「可愛いアン、素敵な情報を耳にしたんだ。第一庭園の花が春の花と植え替えが済み、それは可愛らしい花が春を咲かせているそうだ。だから、その庭園がよく見えるカフェにしたよ。如何かな、可愛い春の姫」

「フフッ、アーサー様ったら。ではご招待状は?」

「ああ、昼食時には間に合う、その時に配って貰おうと思ってね。今回は、イレギュラーだったんだ。無様な手配だが許してくれ」

「いえ、そのようなことは。アーサー様のお茶会はセンスがよろしいもの、アンは楽しみです。では、グレタにも招待所を送って下さいませね」

「わかったよ、グレタにも届けるよ、可愛いアン」


俺は微笑み、アンに言葉を返すと、


「グレタ、招待状は昼食時となってしまうのだが、よろしいか?」

「ええ、ええ、アーサー様、ありがとうございます」


グレタは大輪の花を咲かせたような笑顔で、膝を少し曲げ礼とした。

グレタが頬を赤らめた顔は、春の日差しよりも眩しくて……。俺からすれば、恋だ青春だぁああああ。と、思えるものであった。

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