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第10話 お茶会の席には来たものの

 俺とグレタは、カフェの前に着いた。皆は楽しくやっているだろうか?

そして、俺は足を止めてグレタに声を掛ける。


「グレタ」


俺が立ち止まったことで、グレタは数歩先に足を進めていた。


「なんですの?」


すっかり元のグレタに戻って俺に聞き返してくる。俺は胸元から懐中時計を出しチラリと見ながら言った。


「グレタ、今、リカルドに言付けた時間から5分程遅れたくらいだ。5分遅れはレディの嗜みだろ? 先に行ってくれグレタ。俺は、数分遅れて行くから」


その言葉を聞いたグレタは、俺のアークへの気遣いに気付き、そしてグレタ自身も、アンジェリールに気遣いすることを思い出したように、


「わかりましたわ、アーサー様」


グレタの言葉を聞くと、俺はスッと腰を落としその場に跪くとグレタを見上げる形で言った。


「グレタ、君には魔法が掛かっている。その立ち姿は春の女神のように美しい。微笑む君は春の花のように愛らしい。だから、自信を持ってアークに見せ付けてやれ」


そう言うと俺は満面の笑みで微笑んだ。

グレタは、頬を染めて目を伏せたかと思うと、顔を上げ潤ます瞳は輝やいていて、


「はい」


返事を返すと、くるりと回りスカートを膨らませ、カフェへと足を運んだ。その見せた笑顔は、恋する乙女なんだろうなぁあ……、焼けちまうぜ! ちくしょうぉおお。というほど絶品だった。

俺はグレタを見送り、暫く懐中時計を眺めると、パチンと蓋を閉めカフェへと向かう。カフェの出迎えは、


「お待ちしておりました、アーサー様」

「遅れてすまない、招待客の方はどうだ?」

「はい、皆様、アーサー様をお待ちになると言われるので、喉ごしの良いアイスティーと、キラキラと光りが当たると光る珍しい天然の炭酸水が手に入りましたので、お出ししておきました」

「そうか、それは助かる」

「では、お茶とスイーツのご用意をさせて頂きますね」

「ああ、本日もよろしく頼むよ」

「かしこまりました、アーサー様」


俺が受付のカウンターから、案内の者の元に行こうとすると、


「ああ、アーサー様、お待ち下さい」

「うん?」

「新しい茶葉が発売されたのですよ。その名もベイビーブルーローズと申しまして、ブルーローズと紅茶の茶葉のブレンドなのですが、これが注ぐと美しい水色で。先ほど、お越しになられたお嬢様がお召しになっておられたドレスのようでして、一興にお出ししては如何でしょうか?」

「ああ、いつもすまない。流石だね、シャルレ。

シャルレのお茶会の演出にいつも助けられているよ、お陰で皆が喜んでくれる」

「ありがとうございます、アーサー様。では、ベイビーブルーローズもお出しいたしますね」

「頼む。ああそうだ、俺の方からもお願いあったんだった。いつも頼んでいるブルーローズの茶葉なんだが、多めに今日は包んでくれるか? 実は友人が好きなのだが、今回は飲むペースが速かったようだ。もう、無くなってしまったと頼まれたんだ」

「さようでしたか、では、多めにお包みしておきます。ああ、それと……」

「なんだ?」

「足をお止めしてしまって申し訳ありませんが、頼まれていました茶葉の同じ御本が二冊と初心者向けのティーを入れる茶器のセット、説明書も丁寧に書かれております。それも届きましたが、如何いたしましょうか?」

「そうなのか、それはアークが喜ぶ。あいつ、紅茶が好きな癖に、てんで茶の入れ方がなっていない! 俺が教えてやらねばと思っていたんだ。そうだ、本は一冊、今日、この後で持って帰りたい。そうだな、茶葉とティーセットに本、それはアークの寮に送ってやってくれないか」

「かしこまりました、ではアーク様のフルネームをお願いいたします。そして、アーサー様の御本はお帰りになる際に、皆様の手土産と一緒にお渡しいたしますね」

「ありがとう、シャルレ。アークのフルネームは、アーク・ティアラだ。一つ、良い話しのネタも出来た」

「そう言って頂けて、シャルレも嬉しく思います。では、ご案内いたします、アーサー様」

「ああ」


俺は案内係の後に着いて行った。


そして、通された部屋を入ると、既に俺以外は揃っており、テーブルには、よく外が見える窓際にアンジェリールとグレタが席に付き。席順をいうと、アンジェリールの横に、リカルド、続いて、ジェイド。グレタの方は、横に、アーク、続いて、ルカ。という席順で座って居た。

どうやら、ヤローーどもは、レディーファーストとばかりにグレタに窓側の席を空けておいたのだろう、偉い偉い。と、俺は鼻を膨らませながら思うのであった。やるじゃねぇえかっ!


「やあ、遅くなってしまいすまないね」


俺が声を掛けると、


「おう、アーサー、聞いてくれよ!」


開口一番にリカルドが、笑いながら言う。その横でジェイドはしらけているのか関心がないのか、素知らぬ顔を決め込んで座っていて。ルカはというと俺の顔を見るなり立ち上がり、


「アーサー、リカルドを叱ってやってぇ~、ちょっとアークをからかい過ぎだよ」


と言う。その言葉に、アークの方を見ると、赤くなって下を向いて座っている。

え? なにぃいいいいいいいい。アークが赤くなるだと?! 何が起こっているんだっ!!! こんなアーク見たことねぇえええぞぉおおおお。

俺は、横の席に座るグレタの方も見た。すると、こちらも赤くなって下を向いて座っている!!!


「え?」


ねえ、何が起きているのかな? お兄さんにもちゃんとお話ししてくれないかな? ね、ねえねえねえ……。俺の心の声が言っている。何が何だかわからない。

おっと、肝心のアンジェリール姫はと、ご機嫌を損ねてはいないだろうな? 俺はそっと、アンジェリールの方を見た! すると、彼女は涼しい顔でアイスティーに口を付けていた。


なにがぁあああ起きてぇえええいるんだぁああああ。

俺は心の中で叫びながら、背後に気配を感じた。すると、ワゴンを押してカフェのメイドたちが来ていたようで……、取り敢えず俺は、


「お待たせ、今日の菓子と新作のベイビーブルーローズティーが来たよ」


上品な笑みを口元に浮かべ、甘く蕩けるような口振りと声色で、少し大袈裟に身振り手振りを加え、皆に告げるのであった。



ふぅ~~~、やれやれだぜぃい……。

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