旗取り3
◆◆◆旗取り3◆◆◆
***ネネリムのターン***
「えーっと、闘技場チームは2名戦闘不能!挑戦者チームは木の魔物が戦闘不能です!」
さて、これでユニークスキルに頼りすぎているってわかっただろうし、そろそろ行きましょうか。
「このままだと、攻めに行った人たちは全滅みたいなので、私が行ってきますね。」
「そっかー、頑張れよなッ!」
「お気をつけて。」
―壁の勇者は黙って手を振っている。一応返しておくのがいいですね。
歩いて移動すると時間がかかってしまいますから、九尾で移動しましょう。
「うおっ、それ、そんな使い方も出来たのか。」
―ネネリムちゃんは9本の鎖鎌を使って移動を始めた。
移動中におねえちゃんと魔王さんの戦闘不能報告があった。一応敵を追加で2人倒したみたいだけど、もともと人数差があるから手玉に取られたといってもいいでしょう。
「この辺りですね。」
この辺りは木が多いのだが、他よりは多少開けていて草が生えている場所もあり、地肌が見える場所もある。
よく見れば、若干土に変化があり、この下に敵が潜んでいるのだ。
「それにしても、土に潜って奇襲なんていい手を思いつきましたね。」
まぁ、バレていたら咄嗟には避けられないからいい的なんですけどね。
私は、怪我をさせない丁度いい距離を測って鎌を地面に打ち込んだ。
「闘技場チーム1名戦闘不能!」
手元が狂うこともなく、うまく攻撃できた。
「これで生き残りは本陣に合流。左右からこちらの本陣に向けて奇襲がありますが、あの3人なら大丈夫でしょう。」
そもそも、油断しすぎなんです。走ったり飛んだりといった移動が禁止されているだけで、速はそのままなのだから、気を張っていれば負けるなんてありえません。
敵本陣まではもう敵は出てきませんし、罠もしっかりと覚えていますから、気楽なものですね。
それに、大抵の罠は歩行する人間を対象としたものですので、九尾で移動していればそれだけで大部分は回避できますから。
森を抜けると草地が広がり、やや進むと小高い丘になる。防衛するにはちょうどいい地形です。
丘には5人が陣取っていて、私を発見し次第戦闘になるでしょう。
左右には誰が用意したのかいくつか大きな岩が転がっていて、この裏に2人伏兵が潜んでいるのですが、勝手に向こうから出てくるのですからその時で十分です。
今、せっせと森を移動して背後に回っている伏兵も2名いて、これを攻撃するのも一興ではありますが、パフォーマンス的に良くありませんし、あまりにも不自然すぎる攻撃ですから良くないでしょう。
あくまで、試合時間外にシミュレーションした結果ですので、今のところルールには違反してはいませんからね。
「一人で来るとはいい度胸だな。しかし、ここで討たせてもらう!ソニックエッジ!」
「エイミングアロー!」
「アローレイン!」
「ファイヤーストーム!」
「フォースキャッスル!」
「無駄です。」
これらの攻撃は目くらまし。本命は4方向からの奇襲なのですが、私は既に知っているので意味がありません。
―軽く前方の攻撃を撃ち落としながら迫りくる奇襲を返り討ちにした。
「はは、さすがは治癒の勇者のお仲間ってことか。だが、負けるまでは諦めないぜ!」
―奇襲に最低多分の鎖鎌が空いたので前方の敵の討伐に回し、あっさり全滅させた。
「ふぅ、まぁ、目的は達成できたから良しとしましょう。」
「強い!素晴らしい鎌捌きです!ネネリム選手が闘技場チームを圧倒し今、フラッグを手にしました!挑戦者チームの勝利です!」
「いやぁ、さすがは私の妹ね!よくやったわ!」
「おねえちゃん、なんで負けたの?」
「いや、それは…。気が付いたらやられてたのよねぇ。さすがはプロってやつ?」
「油断していたからでしょう?」
「あはは、まぁ、そうともいうわね…。」
「あれが実践だったら対応できたの?治癒の勇者あたりにきっちり鍛えてもらいますから。」
「ええ?それはちょっと。」
「これは決定です。」
「そんなぁ…。」
「ただでさえ鑑定を使いこなしていないんだから、自分の身は守れるようになってもらわないとね。」
「俺も、油断が過ぎたよな。代わりに頑張ってくれて、ありがとうな。」
「いえ、そんな。将太さんはいいんですよ。本来将太さんの霧をなんとかできる人はもういないんですから。それに、私がこんなに戦えるようになったのも将太さんのおかげなんです。これは、将太さんの成果でもあるんですよ?」
「いやぁ、そうかな?そういってくれると嬉しいけど、やっぱりネネリムちゃんの努力のおかげじゃないかな?」
「ふふ、ありがとうございます。」
「ちょっとー、ネネ!私の時と態度が全然違うじゃないの!」
「あ、夏海さん、いいところに。おねえちゃんの訓練をお願いしたいのですが。」
「うわー!ちょちょっと!本気だったの?!」
「いいぜ!アタシに任せなッ!」
―治癒の勇者からは逃げられない。マロニカの訓練が確定した瞬間だった。
~闘技場の実況係は楽なおしごと~
試合の進行を伝える実況係だが、○○さんが魔法を放った!等の実況をしてしまうと公平性に欠ける。
そのため、最低限の状況を小競り合いが落ち着いた後で報告するだけなのだった。
しかし実際は、ルール違反者の強制転送や多方面で行われた戦闘の結果も報告しなければならないので、それなりの技量が問われたりもする。




