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霧の勇者は業が深い  作者: 彼岸花@
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スタンピード

◆◆◆スタンピード◆◆◆

デストリンドについてみると、四方を魔物に囲まれていた。多くの戦車隊が出撃しており、斉射のたびに魔物に少なくない被害を与えている。飛べる魔物は自走高射砲が討ち取っているようだ。


「なんか、大丈夫そうなんだけど。」


「だからって、加勢しないわけじゃないでしょう?」


「まぁ、そうなんだけどね。」


「我が眷属ヴリトラよ、ブレスで敵を薙ぎ払うのだ!」


「戦車とかに当てないでね。」


(承知。)


―恐ろしい邪龍の雄たけびが響き渡り、すぐに放たれたブレスが多くの魔物を塵へと変えた。


「おお!すごいのじゃ!さすが龍なのじゃ!」


「フハハハハ!魔物がゴミのようだ!」


(これは恥ずかしいところをお見せいたしました。この私としたことが、撃ち漏らしを出してしまうとは。)


―さらに放たれたブレスがこちら側にいた魔物の生き残りを薙ぎ払った。


まずいぞ。夏海ちゃんの獲物がなくなってしまう。


「よくやった。お前はそれくらいにしておけ。」


(ハッ!有難うございます。)


「とりあえず降ろしてくれ。夏海ちゃんは敵の多そうな右側、他のやる気のある人は左側から回ろう。」


「よっしゃーッ!先に行くぜーッ!」


この高さから飛び降りるとか、勇気あるなぁ。


(私も行くー。)


「え?ミレイも行くのか、がんばれよー。」


「はやく!もっとはやく高度を下げなさいよ!」


降りれる高さになったのはいいが、

「うーん、もう遅いんじゃないか?」


夏海ちゃんはともかく、ミレイが張り切っているので敵がすごい速さで減っている。


「はぁ、しょうがないわね。次のダンジョンもバラバラで戦わない?全然Lvが上がらないわ。」


「回復魔法でも覚えて俺に寄生したほうが早くないか?」


「将太は魔物を捕まえてばかりで全然経験値稼ごうとしてないじゃない。」


「虫の洞窟ではかなり稼いだぞ?もうLv1204だ。」


「もう遅いじゃないの!」


「次やる時はみんなに何かかけてもらうことにしよう。」


「私たちはやることが無くなったので、町に合流しましょう。龍は物騒なのでしまってください。」


「こんなところにつっ立ってても仕方ないか。ヴリトラ、また頼むよ。」


(主のお役に立てるのならば、いつでもお呼びください。)




町には簡単に入れた。こちら側の魔物はいなくなっていたし、俺と違って双子は知り合いが多い。とりあえず、町長の屋敷に向かっているところだ。


「それにしても、戦争の時と違って妙に活気があるな?スタンピード中なのに。」


「町壁から様子でも見たんでしょ。負ける雰囲気が全くないわ。」


「所詮は低Lvの魔物ですからね。機関銃を搭載している戦車もありますし、誤射でもなければ大丈夫でしょう。」


「そういえば、俺の速が244もあるんだけど、これってどれくらい早いの?」


「全力で平地を走って1秒間に244m進める速さですね。防御力が足りないと自爆する恐れがあるのですが、今の守なら大丈夫でしょう。建物に当たれば壊してしまいますが。」


「速いな。ちょっとしくじっただけで壁に激突とかないよね?」


「攻と同じで力を入れすぎないように気を付けていれば大丈夫ですよ。」


「もしかしなくても速も上げすぎたら危険なステータスなんだろうなぁ。」


跳躍発動[中級]のおかげで地面を踏み抜いたりはしないで済んでいるが、速くなりすぎると着地に失敗しそうだ。


「着きましたね。」


「これは、マロニカ様とネネリム様、お帰りでしたか。どうぞお入りください。」


「ご苦労!」


「お邪魔します。」




「やぁお帰り、待っていたよ。装備を見る限りかなりうまくいっているようで嬉しいよ。シルヴィアは部屋で休んでいるから、寄ってあげてくれないか?」


「ええ、行ってくるわ!」


「ネネリムちゃんはいいのかい?」


「ええ、大事な話があるのでしょう?」


「まぁ、そうなんだけどね。後ろの壁と蟹の勇者はデストリンドに協力してくれるってことでいいのかな?」


「それでいい。」


「フッ。魔王ユレイラ・Fキャンサーが出るほどの事でもないが、我が半身のため、しばらく手を貸してやろう。」


「それならいい。スタンピードは幸いにして被害も少なく片が付きそうだ。しかし、もっと大きな問題がある。トワイトライとの停戦は9か月となった。」


「え?短くないですか?」


「そうだ。冬が明けたら再戦しようと言っているようなものだ。」


「俺が結構被害を出したはずなのに何故…?」


「勇者もこっちにいる。トワイトライに勝ち目はない。」


「にもかかわらず再戦を予定しているということは、勝つ算段があるってことだ。」


「それがどんな内容なのかはさすがに解らないですよね。」


「いいや、判明している。Sランクギルド輝ける剣聖が参加を表明した。」


「剣聖って、なんか相性悪そうだな…。」


「ええ、とても相性が悪いですね。」


「だよね。なんかこうぶわーっと霧を切り払って一瞬で間合いを詰められてザクってやられる気がする…。」


「本当に哀れに思えるほどに相性が悪くて将太さんの圧勝です。手加減しなければ、ですが。」


「え?そうなの?」


「魔法攻撃以外からもMPを無理やり拡散させるのが英雄級です。伝説級になった将太さんなら適当に霧を動かすだけで勝てますよ。」


「ほう、伝説級か。道理で強いわけだ。」


「いや、それは最近手に入れたんですけどね。まぁ、勝てるなら良かった。ちなみに、MP拡散使わないとどうなるの?」


「輝ける剣聖のギルドマスターのインチキ効果でぶわーっとやられるかもしれません。」


「マジか…。その人ってどんな人?」


「強い人を見つけては決闘を挑んでいてね。それで生き残った者をギルドに加えて各地を回っているそうだ。今回はうちに白羽の矢が当たったというわけだよ。」


「その剣に耐えられなかった人は亡くなってしまいますし、生き残っても決闘の結果として無理やり引き抜いていくので解散に追い込まれたギルドもあるでしょうね。」


「なんか迷惑な人だなぁ、手加減しなくてもいいか。」


「ええ、気を付けてくださいね。」


「あ、そうだ。暗黒龍を3体ほどテイムしたので、一番弱いダークドラゴンをここの防衛として置いていきますね。」


「一番弱い…?」


「あれ、やっぱ強いやつの方がいいですか?ヴリトラは俺たちが使うから遠慮してほしいんですが。」


「おぬし、ベルゼブブとかいうもっと良いのがおるではないか。」


「そいつは今回のスタンピードを起こしたダンジョンを潰すのを手伝ってもらおうかと…あ、それも伝えた方がいいか。」


「いやいや、ダークドラゴンをこの町の護衛に貸してくれるのならありがたいが、いったい何処に行ってきたのだね?」


「虫の洞窟に行ったら出てきたんですよ。テイムした魔物をダンジョンの攻略に回そうと思うので、待機している兵士の方に連絡してもらえませんか?目印にカニのマークをつけておきますので。」

これでテイムした魔物の仕事が増えたし、見つかっても攻撃されることが減るだろう。どんどん増やすぞー!!


「それはやっておこう。しかし、虫の洞窟にそんなのがいたのか。まぁ、すでに討伐されたからいいか。とりあえず、これがスタンピードを起こしたとされるダンジョンの地図だ、渡しておこう。3月になったら戦争が始まってしまうから、余裕をもって2月までには帰ってきて欲しい。」


「解りました、準備が終わったら出立します。」


また食料を買いだめしないとな。


「ダンジョンでの戦利品をある程度買い取ってもらえませんか?」


「いいぞ、控室にでも置いておいてくれ。あとで手配する。」


「解りました。ありがとうございます。」


「構わんさ、お前も俺のかわいい妹みたいなものだ。」


「戦利品というのは余っているミスリルの装備の事じゃろう?本当に買い取ったら町の財政が傾くのう。」


「おそらく相当な金額になるので払える分だけ渡してもらって、残りは後払いで構いませんから。」


「うちはこれでも町長だぞ?そんな心配は無用だと思うが?」


「実物を見た方が早いでしょうから、後で確認してください。」


「そうか、まぁいいだろう。」

~スタンピードは怖くない?~

スタンピードが起きても勇者様が守ってくれるから安心と思っているそこのあなた!

それは大きな間違いです!

勇者様はちょっと旅行に行くとか言って何年も帰ってこなかったりするんです!

直接あなたの住んでいるところが大丈夫だったとしても、

近くの村が被害にあうということもあります。

そういう時に備えて、しっかりと避難訓練を行いましょう。

町の安全を守ろうの会 代表 アンダス・ウラリレイヤン

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