平日の彼
「ソラって見た目大学生くらいだよね。
平日外歩いていて、変な目で見られない?」
「大学生って平日の昼間に出歩いている代表みたいだから、そこまででもないな。
海外に行けば旅行者だと思われるし」
確かに大学生と言うと、遊んでいるイメージはあるけれど、一応学生じゃなかっただろうか。
授業がない時には、遊んでいるかもしれないけれど、授業があれば学校に居るはず。
とは言え、世間の人が個で見ているわけではないだろうし、目立つような行動をしないと、「またあの人だ」とは思われないのかもしれない。
「でも、最初の頃は警察とかに声かけられたな」
「何か悪い事したの?」
「同じ格好で同じようなところに、ずっといたからだとは思う。
今の世界なったばかりの頃だったから、勝手が分からなかったんだよ」
「それでどうしたの?」
「スーツを着たら話しかけられなくなった」
いきなり出てきた、スーツという言葉に、一瞬頭が働かなくなる。
それから、ソラのスーツ姿と言うものを想像してみる。
意外と似合うかも知れない。ソラの服装ははいつも白と黒でまとめていて、シンプルなのだけれど、もっと冒険した格好してみて欲しい。というか、いろいろな格好をしてほしい。
「就活生に見られたって事?」
「どうなんだろうな。営業って線もあるけど、俺の知った事じゃないし」
「何でスーツ着なくなったの?」
「今度は、夜に話しかけられるようになった」
「夜?」
「『お兄さん、良い女の子いますよ』ってな具合で」
「ついて行ったの?」
夜でそういう風に声を掛けられると言う事は、そういうお店と言う事だろう。
ソラも男性だというのは分かるのだけれど、心に靄がかかったような、そんな心地がする。
「いや。正直怖かったし」
「ソラが怖いって相当だと思うんだけど」
「旧世界でもアングラなところってあっただろ? そんなイメージがあってな」
「女の子と遊びたいとか思わなかったの?」
「遊んでるだろ、こうやって」
そう言って、ソラがわたしの頬を引っ張る。
少し痛かったけれど、笑顔のソラを見ていると、何だかとても安心してしまった。




