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彼の居場所

 ソラが仕事をしていると知ったから、あまり気にしていなかったのだけれど、考えてみたらソラが今どこに住んでいるのか全く知らない。

 寝なくていいと言っていたし、おそらく疲れるという事もないのだろうけれど、精神的な面で落ち着ける場所というのは必要ではないだろうか。人の目から離れた、雨風のしのげる場所は、有っても困ることはないだろう。

 ソラの言動から察するに、少なくとも今は人に近い尺度で過ごそうとしているみたいだから、人としてそういった場所はあった方が良いと思う。


「と、思うんだけど、ソラ的にはどうなの?」

「ちゃんと家持ってるけどな」

「本当?」

「公園の隅っことか、橋の下とか。段ボールは探せばいくらでも手に入るからな」


 いかにも冗談ですという顔で、こちらを見られても困るのだけれど。そういうところが、男性というか、男の子っぽくて、可愛げがあるともいえるのだけれど。

 とりあえずは「そうじゃなくて」と返しておく。ソラ自身、あまり困っていないという事は理解できた。


「レンが言うようなのって、結局実家みたいな場所の事だろ?」

「どうなんだろう。わたしは家を出たことがないから、わからないけど」

「友達の家に泊まるのとは、違うわけだろ? ホームシックになった時に、帰りたい場所、みたいな」

「言われてみると、そんな感じかも。いるだけで安心できる場所、みたいな」

「だとしたら、無理じゃないか。俺には、シックになるべきホームがないわけだし」

「あ、そっか……」


 2年前に世界が生まれたのだとしても、この世界に住む人にしてみれば、ずっと生きてきた世界で、それに伴うつながりも存在している。

 わたしにはお父さんがいるし、ユイやサユにも両親がいて、その子供として居場所を与えられて生きている。でも、ソラだけはそういった繋がりがない。

 帰るべき家がないどころか、頼るべき親すらいないのだから、落ち着ける場所も作りようがないのかもしれない。


「強いて言うなら、こうやってレンと一緒にいるときが、その居場所に近いだろうな。

 少なくとも、何かあった時に、思い浮かぶのはレンの事だと思う」

「わたしも、ソラといると安心するよ」

「この世界でも、博士とは仲の良い親子なんだろ?」

「う……贅沢かな?」


 ソラと一緒にいて安心するのは本当だけれど、お父さんと一緒にいられる家もまた違った安心があるし、もっと言えば、サユとユイと一緒にいるときだってそうに違いない。

 これはきっと、わたしがこの世界が生まれる前の記憶を、わたしが幼いころの記憶を持っているから。そして、彼女たちもわたしを知っているから。

 皆に忘れられたソラには、まず手に入らないものだと言える。なんて考えなしなことを言ってしまったのだろうか。


「良いんじゃないか。贅沢で。贅沢が悪いって話をしていたら、旧世界での俺たちは、大悪党だ」


 ソラはそういって、わたしの頭をポンポンと叩く。


「そう……かな?」

「少なくとも、レンが博士ととんでもなく仲が悪くて、今すぐにでもグレそうだとなるよりは、俺としても安心だしな。それに、見方を変えれば、俺にはレンがいただけましだともいえる。

 むしろ、レン以外を敵に回してもいいな」

「誰もソラを敵に回したくないと思うんだけど」


 ソラ対世界で戦った場合、間違いなくソラが勝つだろうし、まかり間違えてソラが負けても、たぶん今の世界は崩壊する。

 ソラにとどめを刺した人が、次の神になるのかもしれないけれど、少なくとも今はソラにケンカを売って良い事なんて何もない。


「でも、家か部屋かはあった方が良いかもな」

「やっぱりわたしも、そう思うよ」

「家があった方が、レンとイチャつけるもんな」


 ソラが急にそんなことを言うものだから、何を返していいのかわからなくなり、ポコポコと声にならない感情をソラの胸にぶつける。

 ソラが続けて「レン的には、見せつける方が良いのか?」と冗談めかすので、わたしの両腕はさらに激しさを増した。

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