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彼と同じ名前

 皆には内緒なのだけれど、最近は認識阻害を自分にかけて外を歩くのが楽しい。

 いろいろな人をまじまじと見ても、怒られることもないし、人間観察がはかどるから。

 かつての世界では、皆死なないことに必死で、一致団結して天使を倒そうとしていたけれど、今の世界はそれぞれにやりたい事、やっていることが違って、ついつい気になってしまうのだ。


 ソラとの約束の時間になるまでに、いつものビルの周りで認識阻害を使って暇をつぶしていたら、わたしの目の前で1人の女性が盛大にこけた。

 何もないはずなのにこけるとは、なんて器用なのだろうと思っていたけれど、それ以上に彼女の姿に目を惹く。外国人のか、髪が綺麗な金色をしているし、目は澄んだ青色をしている。

 だが、「いたたた……」という発音は、いかにも日本人っぽい。


 すでに成人しているらしく、スーツに身を包んでいるけれど、大人の女性という印象は薄く、野暮ったい眼鏡と少し大きめのスーツが幼さを際立たせている。

 でも、ちゃんとした格好をさせれば、モデルとか、女優になれるようなそんな女性。

 どうやら、わたし達が屋上を借りているビルの人らしく、誰が見ているわけでもないのに――わたしを除いて――誤魔化すように笑ってから、ビルの方へと走っていった。


 上司らしい人が先にいて、「イムラまたこけたのか」と言われていて、ふと「イムラ」の事を思い出した。



      *



「人が増えて、同じ名前の人が沢山になったよね」

「名字だけ、名前だけ同じっていうレベルだと、数えたくもないな。

 だが旧世界だと、名前被りもなかったが、あれは全日本人の名前が、簡単に分かったからっていう事情もあるだろう」

「今でも、名前だけなら憶えているんだけどね。同じ名前きくだけで、本人かなとか思っちゃうこと多いよ」

「学校に行くと、余計多くの人の名前と接するだろうからな」


 ビル前でのことがあったので、話のタネにでもと、ソラに名前の話題を振ってみたら、意外と話が盛り上がってきた。

 とはいえ、以前は名前を聞いていちいち反応していたけれど、今となっては、そんなこともない。

 旧世界の知り合いだった場合、ユイやサユと同じく、全く同じ顔をしているだろうから。


「何より多いのが、『イムラ』って名前なんだよね。毎年クラスに1人はいた気がする。

 今年はいなかったけど、確か隣のクラスにはいたかな」

「もしかしたら、その中に師匠いたんじゃないか?」

「いなかったと思うよ。さすがに師匠なら、若くなってもわかりそうだし」


 師匠とは旧世界にいたあの「イムラ」の事。あんまりイムライムラ言ってると、話が進まないので、呼び方を変えたのだろう。ソラにしてみたら、戦いの師匠だし、わたしにしてみたらサポーターとしての師匠だから、違和感は特にない。

 で、師匠が居なかったと言えるのは、単純に出会ったイムラのほとんどが、女の子だったから。

 もしかしたら、彼女たちの父親という線もなくはないが、当時記憶が戻っていなかった――というか、おそらく生まれていなかった――わたしには確かめるという考えすらなかった。


「それはそれとして、ソラって師匠の名前って知ってる?」

「イムラに続く名前って意味なら知らないな。というか、イムラが苗字なのか名前なのかすらわからない」

「確かに明言はしてないんだよね。なんとなく苗字かなとは思っているけど」

「たぶん、何も考えてなかったんじゃないか。ま、師匠の名前は良いとして、イムラが多いって言うのは、変な感じもするが、おかしくもないんじゃないか」

「んー、わたしは師匠が結局どうなったか知らないから。死んだのは分かるんだけど。

 でも、わたしのイメージ通りの存在って言うなら、ありえそうだね」


 なんか、「そっか、イムラの仕業か」で片が付きそうな感じがするし、旧世界ではたびたびその言葉が、諦めと希望に満ちたよくわからない感情を示していた。

 かく言うお父さんも、口癖とまではいかないまでも、よく言っていたことを思い出した。

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