第五話:修と陽子
「ええ~っ!! 陽子ちゃんと修君は付き合ってたの!?」
バスタークラスはまたまた騒ぎ始めた。しかし、相変わらず快は冷静に答えた。
「ああ。とはいっても、三年間音信不通だったから今の状態がどうかは知らんが」
弁当箱を包みながら快は答えた。陽子のことは詳しく知らないが、少なくともこの三年間、修は一度も彼女を作らなかったことだけが事実である。
「だけど陽子はどうなんだろうな。あのルックスで男が言い寄ってこないことはまずないだろうし」
龍二も人の倍の昼食を完食して話に加わる。そして、一番答えを知っていそうな翡翠に全員の視線が注がれた。
「大丈夫! 陽子ちゃんはずっと修ちゃんのことが好きだよ! だって三年前より美人になったんだもん!」
笑顔で翡翠がそう言えばそうだと思う。出来ることなら、二人が三年前のままであってほしいと願うのだった。
そして、屋上で昼食をとっていた噂の二人は、他愛ない会話を続けていた。
「この三年間、どうだった?」
「別に何も変わってないな。快の家で居候になったこと以外」
弁当箱の中身はなかなか減らない。特にしゃべってるわけでもないが、背中合わせのまま修は陽子の質問に答える。
「あら、聞いた話では修のファンクラブの会員数が増えたみたいだけど」
「興味ないな」
あっさりと修は返した。その点に関しては、自分のことより陽子の話の方が気になっていたからだ。
「相変わらずね。その分だと彼女がいないって話も本当みたいね」
「お前が彼女だろ。それともこの三年間で俺は消えたのか?」
少しだけ修は苛立っている。それが空気で伝わって来た。
「まさか、私はずっと修が好きだったもの」
陽子は少し悲しそうに笑った。それは言葉通り、変えられなかった気持ちだ。
「だったらどうして手紙も寄越さなかった?」
「それは……」
それ以上、陽子は何も言わなかった。




